2020年、鉄道では虎ノ門ヒルズ駅など新駅の開業や「N700S」など新型車両の運転開始、富山や神戸ではサービスの一体化が予定されています。そして長期間不通だった区間の運転再開や、一方で路線廃止も。

どんな一年になるでしょうか。

1月~3月、ダイヤ改正のほか、災害から復旧する路線など

 2020年、鉄道にはどんなことが予定されているでしょうか。おもな内容を見ていきます。

銀座線の渋谷駅が移設してリニューアル開業

 1月3日(金)、東京メトロ銀座線の渋谷駅が明治通り上空へ移設され、始発から供用開始されます。

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東京メトロ銀座線 渋谷駅の新駅舎イメージ(画像:東京メトロ)。

 この工事は2009(平成21)年から進められていたものです。2019年12月28日(土)から2020年1月2日(木)にかけて、最後の線路切替工事とホーム移設工事が行われます。

 新駅舎は「M」をモチーフに湾曲したホーム屋根が特徴。ホームは6mから12mに拡幅、バリアフリー設備も拡充されています。

富山の路面電車が南北一体で運行

 2月22日(土)、富山ライトレールが富山地方鉄道に吸収合併されます。あわせて、両社が富山駅の南側と北側でそれぞれ運行している路面電車の線路が接続され、一体運行が行われます。

 運賃は現行の制度が維持され全線均一。

大人が210円、子どもが110円です。

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開業時の起点、富山駅北停留場の富山ライトレール。新線は、JRなどの富山駅をくぐり富山地方鉄道と接続する(2008年12月、児山 計撮影)。

ダイヤ改正で新車デビュー、常磐線や三陸鉄道が全線復旧

 1997(平成9)年に登場し、東海道・山陽新幹線を走った700系電車が、3月8日(日)をもって東海道新幹線から引退します。最終走行列車は東京9時47分発の臨時「のぞみ315号」で、「『ありがとう東海道新幹線700系』のぞみ号」として運転されます。

 3月14日(土)は、JR・私鉄各社がダイヤ改正を行います。新型車両ではJR東日本の「サフィール踊り子」、近畿日本鉄道の「ひのとり」などの特急車両がデビューします。ほかにも輸送力が増強され、東海道新幹線の「のぞみ」が最大で片道毎時12本運転されるほか、JR西日本の関空特急「はるか」の全列車9両編成化、JR北海道の快速「エアポート」の増発など、空港利用客に対応したサービス改善も目立ちます。

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高輪ゲートウェイ駅の駅舎内イメージ(画像:JR東日本)。

 また同日には、JR東日本の高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)が開業します。東日本大震災の影響で、最後まで不通となっている常磐線の富岡~浪江間は、年度末までの全線復旧が予定されています。

 3月20日(金)は、台風19号の影響で一部運休していた三陸鉄道が全線で運行を再開します。

復旧後の3月22日(日)には、東京五輪の聖火を乗せての運行も予定されています。

4月~6月、北神急行で運賃改定 新幹線に「特大荷物スペース」設置JR四国が「ものがたり列車」を運転

 4月18日(土)から、JR四国は観光列車「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」を運転します。運転区間は高知~窪川間で、列車名は窪川行きが「立志の抄」、高知行きは「開花の抄」です。車両はキハ185系ディーゼルカーの2両編成。2両ともグリーン車で運転され、車内では高知名物の皿鉢風創作料理などが楽しめます。

札沼線の一部区間が廃止、西日本では夜行特急が運転開始

 JR北海道が維持困難線区として挙げた線区のうち、札沼線の北海道医療大学~新十津川間が5月7日(木)で廃止されます。この区間は、1日1km平均の利用者数(輸送密度)が200人未満です。運行の継続には20年間で6億円の費用が必要なことから、廃止が決定しました。

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「WEST EXPRESS 銀河」のイメージ(画像:JR西日本)。

 JR西日本は5月8日(金)から、夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」を京都・大阪~出雲市間で運行します。なお10月からは日中に、大阪~下関間で運行する予定です。「WEST EXPRESS 銀河」は、117系電車を改造した車両です。

 東海道・山陽・九州新幹線は5月中旬より、「特大荷物スペース」とセットになった座席を販売します。これは、3辺の合計が160cm超250cm以内の「特大荷物」を車内に持ち込む場合に、最後部座席の後方に設けられた「特大荷物スペース」に荷物を置けるようにするものです。

 特大荷物を事前予約なしで持ち込むと、手数料1000円を乗務員に支払い、所定の場所に荷物を置くことになります。ただし、ベビーカーなどはこれまで通り持ち込みが可能です。

日比谷線に虎ノ門ヒルズ駅が開業

 6月1日(月)、北神急行線と神戸市営地下鉄の一体的運行が始まります。北神急行線は建設費がかさんだことなどから、運賃が高額に設定されていました。一体化後は運賃も見直され、たとえば谷上~三宮間は現行の550円から約半額の280円になります。

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北神急行7000系電車(2008年6月、児山 計撮影)。

 6月6日(土)、東京メトロ日比谷線の霞ケ関~神谷町間に、新駅である虎ノ門ヒルズ駅が開業します。同時に有料着席列車「THライナー」の運行も開始。運転区間は上りが久喜~恵比寿間、下りは霞ケ関~久喜間で、専用車両の70090型電車で運行されます。

7月~8月、「N700S」運転開始 北海道で「ザ ロイヤルエクスプレス」JR東海、新型新幹線「N700S」を導入

 JR東海は、新型新幹線「N700S」の量産車を12編成導入し、7月から営業運転を開始します。

N700Sの量産車は、ATC(自動列車制御装置)とブレーキシステムを改良。非常走行用のバッテリーを装備するなど、有事の際の安全性が向上されています。さらに、営業車両のうち3編成に検測設備を設置し、「ドクターイエロー」が行う検査の一部を営業列車で行います。

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新型新幹線「N700S」(2019年7月10日、草町義和撮影)。

JR×東急、伊豆急2100系電車が北海道を走る

 JR北海道と東急電鉄は8月、観光列車「ザ ロイヤルエクスプレス(THE ROYAL EXPRESS)~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」を運行します。ツアーは3泊4日で、札幌から十勝・知床・富良野の各エリアを巡る周遊プランです。

 ツアーに使われる「ザ ロイヤルエクスプレス」は8両編成で、定員は約100名。伊豆急行2100系電車を改造した車両で、3号車に多目的用途で使えるマルチカー、4号車にキッチンカーを連結します。

「ザ ロイヤルエクスプレス」は直流電車なので、交流電化や非電化であるJR北海道の鉄道路線をそのままでは走れません。ディーゼル機関車にけん引されて運行しますが、車内の照明や冷暖房などを使うため、電気を供給する電源車も別途連結されます。

10月は東上線に新駅「みなみ寄居」開業、11月は気仙沼線など一部区間廃止東武東上線にみなみ寄居駅が開業

 東武東上線の東武竹沢~男衾間に10月31日(土)、新駅であるみなみ寄居駅が開業します。副駅名は「ホンダ寄居前」で、本田技研工業埼玉製作所、寄居完成車工場に隣接して建設されました。

駅番号は「TJ35」です。

気仙沼線と大船渡線の鉄道事業が一部区間で廃止

 現在BRT(バス高速輸送システム)で運行されている、JR気仙沼線の柳津~気仙沼間55.3kmと、JR大船渡線気仙沼~盛間7.3kmの鉄道事業が11月13日(金)に廃止されます。

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JR東日本の気仙沼線BRT。線路敷地をバスが走る(2013年9月、草町義和撮影)。

 同区間は東日本大震災で大きな被害が生じ、BRTで復旧した区間です。JR東日本は「BRTは道路運送法に基づき運行しており、鉄道事業の廃止による運行・サービス水準の変更はございません」としています。

 なお、気仙沼線BRTは柳津~気仙沼間だけでなく、鉄道が運行している前谷地~気仙沼間も、1日5往復運行して鉄道を補完しています。

JR東日本、横須賀線・総武線快速にE235系を投入

 山手線に投入が進められているE235系電車。この車両が横須賀線・総武線快速にも投入され、現行のE217系電車を順次置き換えていきます。

 横須賀線・総武線快速のE235系電車は、停電などの異常時に最寄り駅もしくは避難のしやすい場所まで走行できる非常電源を装備。各車両に防犯カメラが設置されるなど保安設備が強化されます。また、グリーン車には各座席に電源コンセントが設置されるほか、普通車の座席はE217系電車より10mm拡幅されるなど、旅客サービスも改良されます。

 なおE217系電車の普通車には、一部ボックスシートがありましたが、E235系電車では全車ロングシートとなります。

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