札沼線の北海道医療大学~新十津川間が廃止されました。新十津川駅から発車する列車本数は日本で最も少ない1日1本でしたが、同駅が廃止されたのち、列車本数の少ない駅は北海道と九州、そして条件付きで大都市にも存在します。
札幌市から北東方向へ伸びるJR札沼線(学園都市線)の一部区間である、北海道医療大学~新十津川間47.6kmが、2020年5月7日付で廃止されました。そのときの時刻表を見ると、末端の新十津川駅(北海道新十津川町)を発車する列車は10時00分の1本だけ。これは日本で最も早い最終列車であり、新十津川駅は発車する列車が最も少ない駅でした。
同駅が廃止されたいま、1日あたりの発車本数が最も少ない鉄道旅客駅は、北海道と九州にあります(季節営業や臨時駅、休止駅などを除く)。いずれも発車本数は1日3本だけです。
JR日豊本線の宗太郎駅を通過する特急列車。この宗太郎駅は列車の発車が1日3本だけ(画像:photolibrary)。
そのひとつ、北海道にあるのは、旭川と網走を東西に結ぶ石北本線の生野駅(北海道遠軽町)です。下りは昼の網走行きと夕方の生田原(隣駅)行きの計2本、上りは朝の遠軽行き1本だけ。ほかの特急「オホーツク」「大雪」や特別快速「きたみ」は停車せず、普通列車も3本を除き生野駅を通過します。
JR北海道が発表した生野駅の1日あたりの乗車人員は0.6人(2014年から2018年までの5年間平均)で、石北本線のなかでは最も少ない人数です。駅は駅舎がなく、屋根なしのホームがひとつあるだけ(1面1線)の無人駅で、周囲には畑が広がっています。
一方の九州にある駅は、北九州から南下し宮崎を経由して鹿児島までを結ぶ日豊本線のうち、連続する宗太郎、市棚、北川、日向長井、北延岡の5駅です。大分と宮崎の県境をまたぐ山あいの区間にあり、カーブやトンネルが続きます。JR九州によると、宗太郎駅の2015年度の乗車人員は1日あたり0.39人でした(大分県統計年鑑2016年度版。2016年度以降は駅ごとの公表なし)。

JR日豊本線の宗太郎駅(2018年、恵 知仁撮影)。
日豊本線の時刻表を見ると、この5駅に停車する列車は、下りが朝の延岡行き1本、上りが朝と夜の佐伯行き2本だけ。特急「にちりん」「にちりんシーガイア」は上り・下りそれぞれ1時間に1本程度が設定されていますが、すべて通過します。
日豊本線を移動する際、この区間は普通列車の本数が極端に少ないことから、「青春18きっぷ」の利用者を中心に「宗太郎越え」とも呼ばれる難所として知られています。
ちなみに、大都市にも発車本数の非常に少ない駅が、条件付きながら存在します。
「発車本数の少ない駅」大都市の工業地帯にも川崎市の工業地帯に位置する鶴見線の大川駅(川崎区)は、旅客列車の発車本数が平日は9本ですが、土休日は3本だけ(いずれも鶴見行き)。駅の周辺は日清製粉や昭和電工、三菱化工機の事業所や工場が並んでいて利用客の多くが通勤やビジネスであるため、それら企業が営業や操業を停止する土休日は、列車の本数が絞られるというわけです。
しかしその土休日に、公共交通機関で同地へ来るのは困難なのかというと、そうでもありません。
ちなみに大川駅の1日あたりの乗車人員は、同駅を含む鶴見線の無人駅は正確な数値が取れないことを理由に、2009(平成21)年度以降JR東日本横浜支社から公表されていません。最後に公表された2008(平成20)年度のデータでは1009人です(川崎市統計書平成21年版)。
本数の少ない大都会の駅は西にも。山陽本線の兵庫駅からのびる支線、通称「和田岬線」の和田岬駅(神戸市兵庫区)における1日あたりの発車本数は、平日17本、土曜12本ですが、日曜や休日は2本だけ。こちらも大川駅と同様、通勤客数に合わせた本数設定です。JR西日本よると2018年の1日あたりの乗車人員は4800人で、そのうち94%が定期券を利用しています(兵庫県統計書平成30年)。
この和田岬駅も、神戸市営地下鉄海岸線が通っており、さらに路線バスも発着しているため、三宮などからのアクセスは容易です。