東アジアE-1選手権は、日本代表監督にとって縁起がいい大会とは言えない。前回(2019年12月・釜山)は、森保一監督が韓国相手に守備的サッカーで臨み、0-1で最少スコア差ながら悪い内容の敗れ方をすると、その采配の是非論が沸騰。

森保監督を懐疑的な目で見る人を大きく増やす結果となった。

 その2年前に開催された東京大会でも、日本は韓国に1-4で大差負けしている。すると。時の代表監督ヴァヒド・ハリルホジッチに批判が殺到。ご承知の通り、この場合は解任劇に繋がる騒動へと発展していった。

 2010年の大会しかり。

日本は韓国に0-3で一蹴されると、時の岡田武史代表監督の立場は大きく揺らいだ。その時、南アフリカW杯本大会まで5カ月という段だったが、そこから辞任する、しないの大騒動に発展することになった。

 この大会は欧州組を拘束する力がない。日本、韓国とも海外組が増えて最近は国内組で臨むので、自ずと大会のグレードは低下する。しかしそこで行なわれる日韓戦での敗戦が、世論をいかに刺激することになるかを森保監督は経験者として知っているはずだ。

森保一監督にE-1選手権のメンバー招集で望むのは「器の大きさ...の画像はこちら >>

ケガから復帰した大島僚太川崎フロンターレ)は代表に招集されるか

「これまでW杯に出場したことがある選手は、全員ではないですが招集しない方向でいこうと思っています」とは、この大会に臨む森保監督のコメントだが、その唐突感を覚える方針が、筆者には予防線を張る行為そのものに見えてしまう。

 長友佑都FC東京)、大迫勇也ヴィッセル神戸)、酒井宏樹浦和レッズ)、該当するのはこの3人になると思われる。サンプドリアを退団し、Jリーグでプレーするのではないかと囁かれている吉田麻也も、該当者になる可能性がある。これまでの流れに従えば、4人ともれっきとした代表候補である。故障の酒井、コンディション不良が伝えられる大迫を無理に招集しないことについては同意するが、長友さらには吉田をなぜ選外とするのか。

 筆者は、長友は限界だと考えている。ファンの半分も同意見だろう。

意見が大きく分かれるこの選手を、森保監督はこれまで使い続けてきた。言い換えれば、騒動の火種になりかねない選手である。招集しない理由はわかりやすい。もし韓国戦で長友が狙われ、敗因のひとつになれば、森保監督の立場は少なからず危うくなる。

好みは抑え気味に選んだ23人

 吉田も、0-3で敗れた先のチュニジア戦で、戦犯に挙げられた選手である。2失点に絡むプレーに、衰えを見たとする声は少なくない。事件の火種になる可能性を秘めた選手になっている。

 森保監督が、自身が考える代表の有力候補選手を、本番まで残り数試合という段でわざわざ外す理由は、日本のためではなく自分のため、もっと言えば保身のためなのではないか。そう突っ込みたくなる。日本代表強化にとってプラスになるとは思えない。

 長友と(日本復帰なら)吉田は加えるべしと言いたいが、以下に挙げる、筆者が推す23人の中からは、とりあえず名前を外しておく。

GK
権田修一清水エスパルス)、鈴木彩艶(浦和レッズ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島) 

DF
谷口彰悟(川崎フロンターレ)、西尾隆矢(セレッソ大阪)、中谷進之介(名古屋グランパス)、岩田智輝(横浜F・マリノス)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、山根視来(川崎フロンターレ)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、小池龍太(横浜F・マリノス)、角田涼太朗(横浜F・マリノス) 

MF
大島僚太(川崎フロンターレ)、藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)、樋口雄太(鹿島アントラーズ)、西村拓真(横浜F・マリノス)、藤井智也(サンフレッチェ広島)、満田誠(サンフレッチェ広島)

FW
鈴木唯人(清水エスパルス)、宮市亮(横浜F・マリノス)、鈴木優磨(鹿島アントラーズ)、上田綺世(鹿島アントラーズ)、細谷真大(柏レイソル

 権田、大迫、谷口、山根、上田。6月に行なわれた代表戦4試合に招集されたメンバーは、ベースになる選手として全員選ぶことにした。

谷口、山根が軸になる。CBには森保監督の中で常にボーダーラインにいるとおぼしき中谷も加えた。候補に挙がったことがある西尾も、森保監督がそれなりに評価している選手に見える。

 ここに記した23人はあくまでも独断だが、時期が時期だけに、こちらが森保監督の嗜好をある程度、反映させないと、現実的ではないというか、強化につながらないと考える。筆者の好みはやや抑え気味にしたつもりだ。

上位3チームに目立つ好選手たち

 森保監督は、U-23アジア選手権を戦ったU-21からも選手を選びたいと述べているので、そのなかからは鈴木彩、藤田、鈴木唯、細谷の4人をピックアップした。

なかでも筆者が推したいのは藤田だ。所属の横浜FMで必ずしもスタメンの座を勝ち取っているわけではないが、代表ではスタメンを張る力があると考える。

 遠藤航ひとりしか使える目処が立っていない守備的MFとして、遠藤とはまた少し違った味を演出できる選手だと確信する。父親がナイジェリア系だということだが、アフリカ色より、筆者はブラジル色を感じる。マジーニョ、マウロ・シウバ(1994年ブラジルW杯メンバー)を彷彿とさせる安定感のあるボールさばき、動き出しの滑らかさに、なにより目を奪われる。

 その他はほぼ、実力に加え、今季のJリーグで活躍が目立つ選手を選んだつもりだ。首位争いを展開している上位3チームに好選手が目立つ。

 なかでもサッカーが一番よく見える横浜FMから、先述の藤田を含む多くの選手(6人)選出してみた。岩田と小池。活躍度で言えばこの2人が双璧だ。魅力は実力に加え、複数ポジションをこなせる多機能性だ。従来の森保ジャパンに乏しい魅力、志向性であることは言うまでもない。

 新人の角田も筋がよさそうだし、アタッカーの2人、西村、宮市には底の割れていない新鮮味を感じる。西村はセンタープレーヤーとして、宮市はウイングとしてあるレベルに達した選手だとみる。

 鹿島からは先述の上田に加え、三竿、安西、樋口、鈴木優の計5人を選んだ。代表歴がある三竿、安西に対し、樋口と鈴木優は新人だ。しかし、実力が代表級であることはわかっている。プレーのスタイル的にも、中心選手になりうる要素を備えている。特に攻撃力にパワーアップを求めようとすれば、鈴木優は欠かせない人材だと思う。大迫の代わりが務まりそうなセンタープレーヤーの素養と、サイドアタッカーとしての素養を同時に兼ね備えた使い勝手のいい多機能型。上田を選ぶなら、その前に鈴木優だと筆者は見る。

 Jリーグで調子を上げているサンフレッチェ広島からは、動きが楽しげで活気に溢れる満田とスピード系の藤井を抜擢したい。パッとわかりやすいのは後者のスピードだ。チームでは右ウイングバックだが、代表では右ウイングでいける。伊東純也をはじめライバルは多いが、試してみる価値は十分ある。

 最後に触れるべきは大島だ。ある概念に照らせば、日本で一番うまい選手だ。ケガから復帰すれば招集したい選手。復帰戦となった北海道コンサドーレ札幌戦(6月18日)、続くジュビロ磐田戦(6月25日)とも、4-3-3のアンカーとしてフルタイム出場した。復調なったかに見える高級なプレーも見せている。磐田戦の後半10分に、チャナティップに送った左足パスなどは、現代表メンバーで出せそうな選手は見当たらない、切れ味満点の縦パスだった。

 森保監督とは相性がよくなさそうに見えるが、救世主になる可能性を秘めた大物であることは確かだ。大島を選ぶか否かは、森保監督の監督としての器と大きさと密接に関係している。