暮れのグランプリ、GI有馬記念(中山・芝2500m)は"荒れる"が定番だが、ここ2年はファン投票1位の馬が制覇。過去10年を振り返ってみても、未出走だった2012年のオルフェーヴルを除いて、大きく負けたのは2015年のゴールドシップ(8着)と2019年のアーモンドアイ(9着)だけで、トータル4勝、2着2回、3着1回と安定した成績を残している。

 有馬記念は能力だけでなく、激戦を繰り返してきた一年間の、最後の"余力"を問われるレースでもある。それゆえ、ひと筋縄とはいかない一戦となっているが、そんななかでもファン投票1位の馬は、大いに健闘していると言っていい。

 そして今年、36万票あまりを獲得してファン投票1位となったのは、タイトルホルダー(牡4歳)。今年は、国内では3戦して負けなし。そのうち、天皇賞・春(5月1日/阪神・芝3200m)、宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)とGI2勝を挙げている。

 昨年の菊花賞馬で、天皇賞・春では7馬身差の圧勝劇を披露。

長距離戦では抜きん出た強さを誇り、その圧倒的なレースぶりが多くのファンから支持を得る要因となったのだろう。

 迎える有馬記念(12月25日)は、2500m戦。その距離を考えれば、ファン投票1位の馬が3年連続で勝利する可能性はかなり高そうだ。

有馬記念でタイトルホルダーの大逃げは見られるのか。凱旋門賞惨...の画像はこちら >>

凱旋門賞後、有馬記念に向けて調整されてきたタイトルホルダー

 とはいえ、まったく心配がないわけではない。

 気になるのは、前走の海外GI凱旋門賞(10月2日/フランス・芝2400m)で11着と大敗し、今回が帰国初戦になること。とりわけ敗戦のダメージは残っていないのか、懸念材料となる。

そうした点について、競馬専門紙記者はこう語る。

「今年の凱旋門賞は、ぬかるんだ特殊の馬場で行なわれました。そのため、日本から参戦した4頭はすべて、ふた桁着順に沈んでしまいました。まったく経験のない極悪馬場で、ちゃんと走れと言っても無理な話ですよ。だから、凱旋門賞の敗戦自体はノーカウントでいいと思います。

 レースにおけるダメージについても、そこまで心配しなくていいでしょう。

帰国後、しばらく静養して、11月半ばには帰厩していましたからね。もし大きなダメージが残っていたとすれば、あんなに早くは帰厩できません。まったくダメージがなかったとは言いませんが、タイトルホルダーのパフォーマンスに深刻な影響を与えるほどのものはなかった、と言っていいと思います」

 凱旋門賞から有馬記念へ直行というローテーションについても、2013年のオルフェーヴルが同様のローテで快勝。昨年も、凱旋門賞帰りのディープボンドとクロノジェネシスが、2着、3着と好走していることを考えれば、大きなマイナスにはならないのではないか。

 また、今年はタイトルホルダーにとって、展開の利がありそうだ。

 というのも、パンサラッサやジャックドールといった快速馬が先日の香港国際競走に出走。

今年の出走馬にはこれといった逃げ馬がおらず、いわゆる同型不在の状況ゆえ、タイトルホルダーの"一人旅"が見込めるのだ。

 仮に捨て身で競りかけてくる馬がいたとしても、宝塚記念がそうだったように、タイトルホルダーは2番手でも折り合える。そうした状況を踏まえて、先述の専門紙記者もタイトルホルダーの勝ち負けに太鼓判を押す。

「緩いペースで逃げると、相手もラクですから、最後はキレる馬にやられる可能性はあります。そうならないためにも、相手が終(しま)いの脚を使えなくなるような、ある程度のペースで逃げることが大事。そういったレースをすれば、この馬が勝つ確率はかなり高いと見ています」

 昨年の有馬記念は、5着に敗れたタイトルホルダー。

しかしそれは、いくつかの不利な条件が重なったことが原因だ。

 ひとつは、その前の菊花賞を圧勝した疲れがとりきれていなかったこと。しかも、逃げ・先行タイプには不利とされる大外枠からのスタートだった。

 さらに、馬自身がまだ成長途上にあって、引き出しが少なかった。そのため、後続に追いつかれた時、まったく対応できずにズルズルと後退してしまった。

 それでも5着なら、よく奮闘したと言える。

 巧拙が問われる中山コースの戦績は、7戦3勝、2着1回。決して悪くない。そもそも中山・芝2500mは、基本的には先行有利。強じんな先行力を武器とするタイトルホルダーには向く舞台だ。

「あとは、当日の体調面。これさえ問題なければ、今年の有馬記念は、おそらく、この馬が勝つでしょう」(専門紙記者)

 いたって視界は良好だ。

 有馬記念を勝てば、今年は3つ目のGIタイトル獲得となる。そうなると、年度代表馬の座も見えてくる。

 今年の有馬記念。最も勝ちに近く、最も勝ちたいのは、この馬に違いない。