1月8日(日)、中京競馬場で3歳馬によるGⅢシンザン記念(芝1600m)が行なわれる。通常は京都で開催されるが、今年は京都競馬場改修工事の関係で、昨年に続き中京競馬場で行なわれる。
このレースを血統的視点から分析していきたい。近年は"出世レース"としても知られるこの1戦。過去10年では2012年ジェンティルドンナ、2014年ミッキーアイル、2018年アーモンドアイ、2021年ピクシーナイトと、勝ち馬のうち4頭がのちにGⅠを勝利。また、昨年の勝ち馬マテンロウオリオンはGⅠNHKマイルCで2着、同4着馬のビーアストニッシドはGⅡスプリングSを勝利と活躍している。
今年は7頭立てと頭数こそ寂しいが、魅力の血統馬が揃っており、将来のGⅠ馬がいる可能性も十分。中でも筆者が本命に推したいのは、ライトクオンタム(牝3歳、栗東・武幸四郎厩舎)だ。
昨年11月の新馬戦で勝利したライトクオンタム
同馬は、日本に6頭しかいないディープインパクトのラストクロップ(死亡した種牡馬の最後の子馬の世代)のうちの1頭。昨年11月の新馬戦(東京・芝1600m)では鮮やかな逃げ切りで、2着以下に2馬身半差をつけて圧勝している。
血統も素晴らしい。母イルミナントは芝9F(約1800m)の米GⅠゲイムリーSの勝ち馬。同レースでは、2番手追走から直線で先頭に立ち押し切るというスピードを見せた。母の父クオリティロードは、米GⅠペガサスワールドC招待Sのシティオブライトなどを出し、その父イルーシヴクオリティも米GⅠケンタッキーダービー馬スマーティジョーンズを出した成功種牡馬だ。
ディープインパクト産駒はジェンティルドンナとミッキーアイル、2020年のサンクテュエールと3頭がシンザン記念を勝利。その3頭とライトクオンタムの共通点は母系。ダンチヒとアリダーを持つ点はジェンティルドンナとミッキーアイル、ゴーンウエストを持つ点がサンクテュエールと共通している。いずれも京都開催時の勝ち馬とはいえ、強調していい点だろう。
もう1頭はクファシル(牡3歳、栗東・池添学厩舎)に注目したい。
父モーリスは、2021年の勝ち馬ピクシーナイト、昨年2着のソリタリオと同じ。また、父モーリス、母の父ディープインパクトの組み合わせは、GⅠエリザベス女王杯のジェラルディーナやGⅢファルコンS(中京・芝1400m)のルークズネストと共通で、ルークズネストは2年前のシンザン記念2着馬だ。
他のモーリス産駒も、ジャックドールがGⅡ金鯱賞(芝2000m)を勝つなど、中京芝コースとの相性は抜群。
クファシルは昨年11月、阪神・芝1600m戦で新馬勝ち。マイペースの逃げで、2着に3/4馬身差、勝ち時計は1分35秒3と、すぐに重賞を意識させるような強いレースではなかった。しかし良血馬は、急激に力をつけることも。ひと叩きしてじっくり再調整され、満を持しての重賞挑戦だけに期待できそうだ。
以上、今年のシンザン記念はディープインパクト産駒ライトクオンタム、モーリス産駒クファシルの良血2頭に期待する。
【著者プロフィール】
平出 貴昭(ひらいで たかあき)
主に血統分野を得意とする競馬ライター、編集者。(株)サラブレッド血統センター在籍。著書に『覚えておきたい日本の牝系100』『一から始める! サラブレッド血統入門』など。「週刊競馬ブック」で『血統見聞録』を連載するほか、「競馬四季報」などの編集業務にも携わる。そのほか、『優駿』などにも寄稿。