昨春の牡馬クラシックは、ジオグリフがGI皐月賞(中山・芝2000m)を、ドウデュースがGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制覇。そして、イクイノックスがそれぞれのレースで2着となった。

いずれも、2歳時の重賞戦線で結果を出してきた馬たちだったが、はたして今年はどうか。

 昨年同様、すでに重賞勝ちを決めた面々のなかから、春の大舞台でも栄冠を手にする馬が出てくるのか。それとも、いまだ頭角を現わしていない面々のなかに、世代の頂点に立つ存在が隠れているのか。まだ年が明けたばかりではあるが、この春の牡馬クラシックにおける最有力候補を5人の識者に挙げてもらった――。

今年の皐月賞馬とダービー馬を早くも占う。現時点で識者5人が挙...の画像はこちら >>

GIホープフルSを制したドゥラエレーデ

太田尚樹記者(日刊スポーツ)

◆皐月賞=ミッキーカプチーノ(牡3歳/父エピファネイア)
◆ダービー=ダノンザタイガー(牡3歳/父ハーツクライ)

 ミッキーカプチーノは、年末のGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)ではまさかの5着に敗れましたが、あれで見限るのは早計でしょう。1コーナー手前で他馬との接触があったうえ、スローペースとなって、道中力んで走っていました。

もともと『ハミ受けが難しい』(矢作芳人調教師)という面もあり、3戦目でそういった課題が表に出てしまった形です。

 ともかく、同じ舞台で行なわれた1勝クラスの葉牡丹賞(12月3日/中山・芝2000m)の圧勝が忘れられません。最後は流して、勝ち時計1分59秒1。これは、昨年一年間の中山・芝2000mという舞台において、古馬も含めて最速の時計です。馬場状態や展開が違うとはいえ、2歳馬の身で皐月賞(ジオグリフ=1分59秒7)やGIII紫苑S(スタニングローズ=1分59秒9)の勝ち時計をはるかに上回っているのですから、ずば抜けた身体能力を秘めていることがうかがえます。

 ホープフルSで賞金加算に失敗したのは確かに痛いですが、素質からすれば、皐月賞での最上位の存在と見ています。

 ダノンザタイガーは、まだ追ってからフラフラするところがあって、走り方をわかっていない印象です。それでいて、2着だった前走のGII東京スポーツ杯2歳S(11月19日/東京・芝1800m)では脚勢が際立っていましたし、そのあとにホープフルSを勝つドゥラエレーデ(4着)にも先着しています。

 年末のGIを見送って、早々にGIII共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)へ狙いを定めたのも好感が持てます。成長次第のところはありますが、伸びしろを考えると、ダービー馬候補としての魅力を一番感じます。

坂本達洋記者(スポーツ報知)

◆皐月賞=ソールオリエンス(牡3歳/父キタサンブラック
◆ダービー=ダノンザタイガー

 ソールオリエンスは、昨秋の東京で新馬(11月13日/芝1800m)勝ちを決めて、まだキャリアは1戦1勝ですが、手塚貴久調教師がホープフルSで3着と好走した僚馬キングズレインに、勝るとも劣らない期待と評価を寄せている素質馬です。デビューへの第一関門となるゲート試験に合格した9月頃、手塚調教師から『これは走るよ』と耳打ちされて、オッと思いましたね。

 馬っぷりのいいキタサンブラック産駒で、調教の動きなども上々。ギアの上がり方や反応など、メリハリの利いた走りには惚れ惚れします。今年はGIII京成杯(1月15日/中山・芝2000m)から始動する予定ですが、陣営が『クラシックに乗せたいと思わせる馬』と語っているように、その軌道に乗ってくれることを期待しています。

 ダノンザタイガーはデビュー当初は緩さが目立ちましたが、着実に成長していて、管理する国枝栄調教師も『よくなってきている』と手応えを口にしています。試金石と見られていた前走の東スポ杯2歳Sでは、直線で大外から鋭い伸び脚を見せて、勝ち馬にクビ差まで迫る2着と奮闘。中身の濃い内容で、やはり持っているエンジンがすばらしいことを再確認できました。

 共同通信杯から始動する予定ですが、いかにも東京向きなタイプ。国枝厩舎悲願の牡馬クラシックVを叶えてくれる馬だと見込んでいます。


小田哲也記者(スポーツニッポン)

◆皐月賞=ドゥラエレーデ(牡3歳/父ドゥラメンテ
◆ダービー=フリームファクシ(牡3歳/父ルーラーシップ)

 ドゥラエレーデは、ホープフルSを制覇。その勝利については、展開とか、イン有利の馬場の恩恵などによるものだとフロック視されていますが、皐月賞向きの馬格とパワーを備えています。

 よくよく考えれば、4着に敗れた東スポ杯2歳Sのレースぶりも悪くありませんでした。そこで勝ったガストリックや3着ハーツコンチェルトとの差もそこまでなかったわけですから、ホープフルSにおける人気のなさ(14番人気)は不思議だったと思います。

 有馬記念を勝っているサトノダイヤモンドの近親ですし、現状皐月賞ではこの馬がぴったりハマると見ています。

 フリームファクシは、デビュー戦(2着)ではミッキーカプチーノ相手に負けてしまいましたが、競馬の内容は悪くなく、素質の高さを感じさせるものがありました。その証拠に、そのあとは2連勝。2勝目を挙げた新年初日の1勝クラス(1月5日/中京・芝2000m)も好メンバー相手に完勝しました。

 半姉が秋華賞馬で海外GIも勝っているディアドラですから、成長力も期待できます。ハービンジャー産駒のディアドラから、父はルーラーシップに代わっていますが、ここにきて後肢の踏ん張りも利いてきて、いい意味でルーラーシップ産駒らしくなく、今からダービーが楽しみです。

木村拓人記者(デイリー馬三郎)

◆皐月賞=ファントムシーフ(牡3歳/父ハービンジャー)
◆ダービー=キングズレイン(牡3歳/父ルーラーシップ)

 ハービンジャー産駒のパワータイプは、馬場が少し荒れやすい皐月賞でも全然問題ないゆえ、ファントムシーフを有力視したいと思います。

 ホープフルSは、ハービンジャー産駒のよさとは真逆の、小脚を使う"上手な競馬"が重視される形となってしまい、本来の持ち味が生きませんでした。それでも、4着にきた内容は"負けて強し"と思わせました。

 同3着のキングズレインにとっても、ホープフルSの展開は不向きでした。加えて、外を回らされるコース取りの不利もありました。にもかかわらず、最後の脚は際立っていましたから、その持ち味は広いコースで生かされそう。だとすれば、ダービーでこその馬。

 そのためには賞金を加算しなくてはいけないので、ダービーまでに(レースを)使いすぎてしまう懸念がありますが、皐月賞にこだわらず、ダービーに注力するなら、今年のダービーの最有力候補であることは間違いないでしょう。


土屋真光氏(フリーライター)

◆皐月賞=ドルチェモア(牡3歳/父ルーラーシップ)
◆ダービー=レヴォルタード(牡3歳/父エピファネイア)

 3戦3勝でGI朝日杯フューチュリティS(12月18日/阪神・芝1600m)を制したドルチェモア。その勝ちっぷりに派手さはないものの、どのレースでもきっちり"勝ちきる力"を発揮している点には好感が持てます。

 何よりスタートセンスが抜群。これは、コーナー4回の皐月賞では大きなアドバンテージになります。2戦目のGIIIサウジアラビアロイヤルC(10月8日/東京・芝1600m)では、さらに距離が延びてもまだまだ伸びていきそうな終(しま)いの脚を見せました。大外枠とかに入らなければ、皐月賞の有力候補です。

 レヴォルタードは、まだ未勝利戦(11月27日/東京・芝2000m)を勝ち上がったばかり。道中の走りを見ても頭が高く、直線でも集中しきれていない面が見受けられます。

 それでも、その未勝利戦の勝ち時計(1分59秒4)は、同厩舎のキングズレインが勝った1勝クラスの百日草特別(1分59秒7。11月6日/東京・芝2000m)よりも速いタイムでした。未完成な部分がカチッとハマった時、かなりのものを発揮しそうな予感があります。

 賞金的には余裕がないので、皐月賞を狙わずにダービー一本狙いでいってくれれば、さらに楽しみが増します。