山田哲人×周東佑京 クロスインタビュー
いよいよ開幕が迫ってきた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。2017年の前回大会では2次ラウンドのキューバ戦で先頭打者アーチを含む2本塁打を放って勝利に導いたのが山田哲人(ヤクルト)だった。
自身2回目のWBC出場となる山田哲人
【絶対にプレッシャーはかかる】
── 山田選手は2回目、周東選手には初めてのWBCです。お二人のキャリアにおいて、今大会をどう位置づけていますか。
山田 WBCに限らず、どの大会でも目標としているのは世界一なので、それに向けて頑張るだけですね。本当に真剣勝負ですし、たくさんの人が注目すると思うので、そこでやっぱり期待に応えたい。前回負けたからとか勝ったからとかではなく、本当に今大会に全力を出すことを考えています。
周東 前回、前々回と優勝を逃しているというのもありますし、栗山(英樹)監督を優勝監督にできるように。しっかり世界一になって「日本が一番強い」と世界にもう一度思ってもらえるように頑張りたいです。
── ダルビッシュ有投手(パドレス)が日本代表選手の談話を見て、「気負いすぎ。戦争に行くわけじゃないんだから」と話していました。WBCでは気負わずに戦うことができると思いますか。
山田 気負うというか、自分自身はたぶんプレッシャーがかかりながらやると思います。
周東 僕もプレッシャーがかかるのはしょうがないと思います。「気負うな」と言われても、気負ってしまうでしょうし......(笑)。
── お二人はプレッシャーを力にできるタイプですか。山田選手は、東京五輪準決勝の韓国戦で決勝タイムリー2塁打を放ちましたが......。
山田 いやぁ、それは時と場合ですね。国際大会ではないけど、去年の日本シリーズではすごく緊張して、結果として全然ダメで、ヒットがあまり出ませんでした。いい時もあれば、悪い時もあるという感じですね。
周東 僕もプレッシャーは感じますね、やっぱり。僕が代走に出て失敗したら、それで試合が終わる可能性がすごく高いので......。まあプレッシャーをどうにかしようと思っても、やっぱりどうにもならないので。そこはしっかり受け入れて、そのなかで自分のベストを出せればと思っています。
【代表は情報交換の場】
── ともに2019年のプレミア12で侍ジャパンに選ばれ、周東選手が山田選手に二塁盗塁のリードの取り方について聞きにいったという話を聞きました。
周東 哲人さんは盗塁をたくさん決めていますし、いろんな映像を見てもスタートの反応がすごくいい。僕自身はああいうスタートをなかなか切れないので、すごく気になっていたので聞きにいきました。
山田 正直、その時のことは覚えていないなぁ......(笑)。でも、聞かれたことに対しては素直に答えますし、逆に僕も気になったことがあれば先輩でも後輩でも聞きにいって、コミュニケーションをとっています。そういうのは僕と佑京だけの関係だけではなく、国際大会で集まった時にはたくさんの選手とコミュニケーションをとっていますね。
話す内容については、練習法とかですね。それで、たとえば調子が悪くなった時にその練習法を試してみるとか。僕はいろんな種類のティーを打っているんですけど、そのほかの種類のティーをしている人がいたら、それについて聞く。打ち方については自分の感覚が一番大事だと思っているので、ほかの選手のやり方を試してみることはないですけど、練習法や体調管理法、どういうサプリメントを飲んでいるかを聞いて参考にしてきました。
── 侍ジャパンでチームメイトとして戦うなか、お互いについてどう見てきましたか。
周東 哲人さんのことは単純に、すごいなと思いながら見ています。本当に打ってほしい場面で打ってくれますし。哲人さんが打席に入ってくるだけで、何かやってくれるんじゃないかとすごく思います。
山田 佑京の(足のスペシャリストという)役割は、たぶんスタメンで出るよりしんどいのかなと思いますね。やっぱり1点を争う場面で送り込まれるので。野球はバッティングや守備だけではなく、走塁で勝つこともあります。相当プレッシャーもかかるだろうし、周りの想像以上にたぶん苦しいんじゃないかなと(笑)。
周東 プレッシャーかかってます、めちゃくちゃ(苦笑)。だって失敗したら、だいたい負けますもん......。
── 過去のWBCでは鳥谷敬さんや内川聖一さんの走塁が語り継がれていますが、周東選手はああいう映像を見た時に「俺がこうなったら......」と思うものですか。
周東 思います。成功したら「当たり前だよね」と見られるところもすごくあるので。逆に失敗したら「地獄が待っている......」と思って、いつもいろんな映像を見ています。
【争うという感覚はない】
── 今回の侍ジャパンで世界一を目指すために、自分はどんな貢献が必要と考えていますか。
山田 まだスタメンで出るのか、ベンチで控えとして待機するかもわかっていないですけど、僕自身は任されたところを全力でやる。スタメンだったらしっかり準備をしてやりますし、控えならいつ呼ばれてもいいように準備をする。便利屋でもなんでも、本当にチームの勝利に貢献したいという気持ちがめちゃくちゃ強いです。
── 今回のメンバーを見るとセカンドには山田選手と牧秀悟選手(DeNA)がいて、ファーストで出ることを想定しても山川穂高選手(西武)、岡本和真選手(巨人)がいます。ハイレベルな争いに見えますが、山田選手としては競争という捉え方ではなく、与えられたところでどう貢献するかという考え方なのですか。
山田 争うという感覚はまったくないですね。もちろん、スワローズだったらそういう感情が出てくると思うんですけど。そこがジャパンでは違うところかなと思いますね。
周東 僕は基本的にあと(代走)からいくと思っています。本当に1点がほしい時に、しっかりとれることが一番ですね。そのために呼ばれたと思っているので、そこの仕事をしっかりしていきたいと思っています。
── 今回のWBCは注目度がかなり高く、普段は野球を見ないライト層や子どもたちにアピールする役割も期待されます。
山田 野球というスポーツは勇気や元気、感動などいろんなパワーをすごく伝えられると思っています。子どもたちだけではなく、たくさんの人に野球が生み出すパワーを通じて何か感じてもらえればいいですね。
周東 大人たちが1球1球すごく必死になって、熱い戦いをして、感情をむき出しにしながらやっている姿を見て、「自分もこういう舞台で野球をやりたい」という子どもたちがひとりでも増えてくれればいいですね。本当に野球ってすばらしいということを、日本中にしっかり見せていきたいと思います。