RIZINガール・あきぴ インタビュー後編(全2回)

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【体育が大嫌いなおとなしい女の子】

 元「RIZIN(ライジン)ガール」で、ライバーとして活動するあきぴさんは現在、4人の子どもを育てながら、総合格闘技(MMA)の試合デビューに向けて日々トレーニングを積んでいる。11月23日にはグラップリング(※打撃なしで寝技主体の組み技格闘技)ルールでの試合が決まっている。

 そんなあきぴさんは9月、柔術で青帯昇格を果たしたばかり。

インタビュー前編では「今後は寝技をベースにMMAで戦っていきたい」と話していたが、柔道、レスリング空手などの土台となる格闘技のバックボーンはあるのだろうか。

「バックボーンなんてとんでもない! 逆です。私はすごく運動音痴でした。今でも思い出すのは、小学校の体育の時間。マット運動で、でんぐり返しができなくてとても恥ずかしい思いをしたんです。

 クラスのみんなが次々にクルッと回転していくのに、私はみんなが簡単にやっていることができないんだ、と。
それがコンプレックスで体育が大嫌いになって、よく休んでいましたね」

 RIZINガールでの華やかな印象とはかけ離れたおとなしい子どもだったと振り返る。

「私が生まれ育ったのは山梨の田舎ですが、友達とみんなで野山を駆け回るような活発なタイプではなかったですね。お兄ちゃんが遊びに行くところへついて行ったり、家ではひとりで漫画を描いたり。中学では、弓道部に入りました。運動部のなかでは運動量が少なめですが、それでも練習はよくサボってました(笑)」

介護職時のいじめ、キャバクラ勤め、流産、DV、離婚...激動の20代を経てRIZINガールから格闘家へ あきぴが振り返る「不思議な人生」
4人の子育てをしながら、日々ジムへ通ってトレーニング
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【ハデでヤンチャな女子高生に激変】

 高校生となったあきぴさんは運動とは無縁の青春時代を送る。しかも、内気だった性格は激変する。

「部活でお琴をやってみたんですが、半年でやめました。

机に座って授業を受けるより、友達と一緒につるんでいるほうが楽しくなってきて、だんだん見た目も派手に(笑)。登校すると『化粧を落としてこい!』『髪を黒くしてこい!』と怒られ、友達の家に引き返し、スプレーで髪を染め直したり、かつらをかぶったり。

 勉強も運動も嫌い。親にも先生にもずいぶん心配、迷惑をかけてしまいましたね。子育てをするようになって、親の気持ちも理解できるようになり、なんであんなだったんだろうと、今は反省しています」

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インタビューで半生を振り返った
 ヤンチャでハデな女子高生。かなりモテたのでは?

「男子には、んー......たいしたことはないですが、でもたしかに、人生にモテ期があったとしたなら高校時代かもしれませんね(笑)」

【流産、DV、産後うつ...つらかった20代】

 その後、地元の短期大学に進学する。華やかな学生生活が続くかと思われたが......。



「短大は1年で中退しました。ちょうどこの頃、親が病気で倒れてしまって。資格をとって介護の仕事をしたり、キャバクラで働いたり。目まぐるしく日々が過ぎていきました。

 とくに介護の職場では陰湿ないじめにあって、ずっとつらかった。誰かの役に立てるので、仕事自体は好きでしたが、思い出したくないことばかりです」

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ジムでインタビューに応じたあきぴさん
 その後、20代半ばで結婚、妊娠、出産。
ここでもさまざまな困難があきぴさんを待ち受ける。

「流産でつらい思いをして、次の妊娠中にDVを受けて離婚をしました。子どもをなんとかひとりで育て上げないといけない。母親になるとともに不安やプレッシャーに押しつぶされそうになり、産後うつも重なりました。その日、その日を生きるだけで精一杯。そんなふうにして私の20代が過ぎていきました」

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夢の総合格闘技デビューへ向け練習を積む

【ライバーからRIZINガールへ】

 再婚し、30代前半までは4人の子どもを育てる専業主婦だった。転機となったのは、コロナ禍ではじめたライブ配信だ。

知人が配信サイト「17LIVE」をやっていた。いわゆる投げ銭方式で、配信中にリスナーから金銭をもらうことができる。少しでも稼げればと興味を持ち、あきぴさんは自分でもやってみようと思い立った。

「いったい何を話したらいいのかわからず、ノープランで配信を始めました。どうなることかと思っていたけど、新人の配信をチェックしているリスナーさんたちが、コメントをくれ、助けられましたね。話題に困らないよう、その時々のニュースを調べてメモをとっていたこともあります」

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 ライバーとして、あきぴさんは順調にファンを増やしていった。
人気となった秘訣は?

「コロナ禍で、世の中の多くの人が自宅で過ごしていたことが追い風になったんじゃないかな。遠慮せず、はっきりとものを言うキャラクターが受けたのかもしれません。

 できるだけ明るくにぎやかにやってますが、リスナーの方から深刻な悩み相談を受けたりもします。なかには流産したという方がいらっしゃって、私も自分の経験と重ねてどうしたらラクになれるかを考えたりしています」

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【つらかったことが楽しいことで上書きされていく】

 あきぴさんがRIZINガールとして表舞台に登場したのも、このライブ配信がきっかけ。「17LIVE×RIZIN RIZINガールオーディション 2021」で多数のファンのあと押しもあり、晴れて選出された。

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オーディションで選出され2年間RIZINガールを務めた ©RIZIN FF
「振り返ってみると、あれだけ体育が嫌いだった私が、ラウンドガールをやって今はMMAに向けて頑張っているなんて不思議ですね。

 そういえば、この前、子どもたちと公園に行って、鉄棒をしたんです。私、逆上がりが人生で一度もできなかったんですよ。でも今ならうまくやれそうな気がして。子どもたちに、『見てろー』って言ってやってみたら、人生初の逆上がり成功! 『ママできるじゃん!』とみんなで笑い合いました。

 柔術を続けたことで、体の使い方がわかってきたし、腹筋もついてきたからですかね。昔はできなかったことが、大人になって克服できて、好きになっていく。つらかったことが、楽しいことで上書きされていっています」

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RIZINガール時代から7キロ以上増量し肉体強化に取り組んでいる
 世知辛いこの時代、さまざまな困難を抱えている人がたくさんいるが、人生がラクになるヒントとは?

「私の場合、ライブ配信がきっかけで生活がガラッと変わりました。それまで私の世界は家のなかだけ。そこからネットを通じていろんな出会いがありました。RIZINガールに選ばれてからはジムに通い、格闘技をはじめ、仲間もでき、どんどん世界が広がっていきました。

 家にこもっていると視野がどんどん狭くなるし、息苦しくなる。だから、ネット上でも家の近くでもなんでもいいから、今の生活がもっと風通しがよくなるような場所を探してみてほしいです」

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ライブ配信を初めて人生が変わっていったという
終わり

前編<「私、めちゃくちゃ強くなりたい」元RIZINガールで4児の母・あきぴが1カ月で7キロ増!「割れた腹筋はかくれちゃった」>を読む

撮影協力/ABLAZE八王子

【プロフィール】
あきぴ 
1988年、山梨県生まれ。2020年からライブ配信サービス「17LIVE」のライバーとなり人気を集める。2021年に「RIZINガール」のオーディションに合格し、約2年間、総合格闘技イベント「RIZIN」のラウンドガールを務める。現在は自身が格闘家になるべく、トレーニングを続けている。4児の母。