セレクトセール2025/1歳馬編
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北海道苫小牧市のノーザンホースパークで、(社)日本競走馬協会が主催する日本最大級の競走馬のセリ市「セレクトセール2025」(7月14日、15日)が開催された。
2日間を通して上場されたのは、1歳馬・当歳馬トータルで467頭。
会場には、調教師をはじめ、クラブオーナーや個人馬主など、今年も数多くの関係者が集結していたが、そのなかには来年2月で定年を迎える名伯楽・国枝栄調教師の姿もあった。
「(今回は自分が)手掛ける馬はもういないけど、お世話になった馬主さんや牧場関係者のみなさんも集まっているので、ご挨拶のために。(セレクトセールには)もちろんプレイヤーとして参加するのは楽しいし、一番ですが、プレッシャーなく、一歩引いた立場で馬を見られることなんて今までなかったから、気楽ですよね。」
そう言って、笑顔を見せた国枝調教師。前日の福島の新馬戦では、管理馬のルージュボヤージュ(牝2歳)が圧勝。今年から初年度産駒がデビューしている三冠馬コントレイル産駒による初勝利を決めている。
そんな話を振ると、国枝調教師は「これで、コントレイル(産駒)の値段も少しは上がったんじゃないの?(笑)」とおどけながらも、「(コントレイル産駒は)『勝てないね』なんて言われていたけど、いい馬はこれから出てくるだろうし、しっかりした馬ならちゃんと走ると思いますよ」と、注目のコントレイル産駒についてそう評した。
さて、先にも触れているとおり、今回のセリ市に上場された馬たちは国枝調教師が調教師として手掛ける機会はないが、「もし勇退しなかったら」という前提で、こんな質問を投げかけてみた。
――来年デビューする1歳馬セッションの馬たちのなかで、手掛けてみたい馬はいましたか?
すると、国枝調教師は「全部見たわけじゃないけど......」と前置きしたうえで、2頭の名前を挙げてくれた。
「まず『いいなぁ』と思ったのは、パンデリングの2024ですね」
同馬は1日目の1歳馬セッションの56番目に上場され、1億4500万円(税別。以下同)で落札されたモーリス産駒だ。
師にしてみれば、デビューを控えた管理馬、アーモンドアイの2番仔である同じモーリス産駒のプロメサアルムンド(牡2歳)にも通じるものも感じたようで、パンデリングの2024への今後に期待を寄せた。
国枝調教師が注目したもう1頭は、「ラビットランの2024。こちらも、いいと思いました」。
同馬は、80番目に上場されたキタサンブラック産駒。3億2000万円という高値で落札された。
母ラビットランは、GIIローズSの勝ち馬。古馬になってからは、ダートの重賞戦線で活躍している。
ラビットランの2024はそういった一族の血を引く存在であり、父は今をときめくキタサンブラック。国枝調教師もこう言って高く評価する。
「キタサンブラックの1歳馬には、他にも高額落札馬が何頭かいましたけど、そのなかでも一番走るほう(の馬)に思えます。
キタサンブラック(産駒)は、最初はどういうタイプなのか手探りでしたけど、いい馬が何頭も出てきて、だんだんと(育成への)答え合わせが出てきた感じですよね。成長力がありますし、何より扱いやすくて丈夫なのがいいです。
あとは、ディープインパクト系とはまったくタイプが違って、ビュッとキレるというより、"しっかり走りきってくれる"というよさがあります」
今年のセレクトセール1歳馬セッションで、国枝調教師の目に適った2頭。来年、それぞれどんな走りを見せてくれるのか、楽しみにしたい。