次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線 
第14回 関西大・米沢友翔

 野球界のドラフト戦線では、毎年「こんな選手がいたのか」と驚くような新星が出現する。今年なら関西大の左腕・米沢友翔(ゆうと)が筆頭格だ。

 金沢高(石川)から進学して3年間は、関西学生リーグで未勝利。肩・ヒジを痛めた影響で投げられない期間が長く、最上級生になった今春に台頭。リーグ戦8試合に登板し、4勝1敗、防御率1.31。55イニングを投げ、67三振を奪っている。リーグ優勝の原動力になった米沢は、MVPに輝いた。

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【2学年先輩の金丸夢斗から影響】

 身長180センチ、体重80キロ。力感のない投球フォームから、150キロに迫る快速球を投げ込む左投手。その意味では、関西大の2学年先輩である金丸夢斗(中日)と重なる。実際に、米沢は金丸から影響を受けたことを明かしている。

「金丸さんとキャッチボールをさせてもらった時、力感なく投げているのにボールが手元できていると感じました。あとは胸らへんしかボールがこないのも驚きました」

 大学時代の金丸は、独特の感性を持ち合わせていた。持ち味である加速感のあるストレートをどうやって投げているのか聞くと、金丸は「手のひらの中心から指先が始まっているイメージ」と、こちらが驚くような表現をしてみせた。

「最後に指先だけで投げようとすると、シュートしたり、抜けたりする感覚があって。

なので、自分は手のひらの真ん中から指先にグッと押さえることを意識しています」

 一方、米沢もまたストレートを武器にする左腕である。最高球速は149キロだが、スピードガンの数字以上に圧力を感じる。米沢にもストレートの投げ方について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「とくに投げ方にこだわりはないんですけど、脱力することですかね。力感なく投げて、速いストレートに見せたい。リリースに100パーセントの力を出せるようにすることは意識しています」

 金丸も米沢も、力感がない投球フォームは共通している。ただし、ボールの質はやや異なるようだ。米沢と同期の正捕手・笠井康生はこう証言する。

「感覚的な表現になってしまうんですけど、金丸さんのストレートは横の角度から『ズドーン!』とくる感じ。米沢のストレートは、上からホップして『ビヨーン!』と伸び上がってくる感じです」

 金丸が右打者のインコースへのクロスファイアーを武器にしたのに対し、米沢はホップ成分の豊富なストレートで打者のバットをかいくぐる。笠井はこうも語っている。

「米沢のストレートは自分が捕れると思ったところよりボールひとつ上にくるんです。

キャッチャーが捕りづらいんですから、バッターも打ちづらいはずですよ。僕は紅白戦で米沢をまったく打てないですから」

【プロ注目の強打者を翻弄】

 6月8日から開幕した全日本大学野球選手権でも、米沢は実力をいかんなく発揮した。初戦となった北海学園大との1回戦では、立ち上がりから5者連続奪三振の派手な全国デビュー。8回を投げ、被安打3、奪三振10、失点0の快投で1対0の勝利に貢献。試合後、関西大の小田洋一監督は感服したように言った。

「いつもどおりのピッチングをしてくれました。彼にとって初めての全国大会でしたけど、本当にいつもどおりでしたね」

 登板後に20人ほどの報道陣に囲まれても、米沢は涼しげな風情で受け答えをした。マウンド同様に、ほどよく肩の力が抜けている印象だった。

 2回目の登板となった準々決勝の金沢学院大戦では、立ち上がりに1失点。それでも、「真っすぐが(相手に)張られていると思った」と、初戦ではあまり使わなかったカーブやフォークを多投して対応。7回1失点にまとめ、チームは6対1で快勝した。

 対戦した打者は、米沢に対してどんな印象を抱いたのだろうか。北海学園大の主砲である井樫太希(いがし・たいき)は、昨年の大会で特大本塁打を放ったプロ注目のパワーヒッター。

そんな井樫も、米沢の前に3打席3三振に倒れている。

「実力の差を感じました。米沢くんのストレートは、球が放たれてから一瞬できて、ホームベース板の最後のひと伸びがあると感じました。コントロールもいいし、こんなピッチャーは北海道ではまず見たことがないですね」

 金沢学院大の川合錬磨(かわい・れんま)は、2年生だった昨年12月に大学日本代表候補合宿に招集された実力者。中村紀洋(元近鉄ほか)のように、バットをしなやかに扱える右の強打者だ。その川合も米沢の前に3打数0安打、2三振に抑えられている。

「150キロ級の球を投げる左投手と初めて対戦させてもらって、真っすぐ以上に変化球が初めての見え方で打ちづらかったです。とくにスプリットのように落ちるボールが対応するのが難しかったです」

 ストレートも変化球も、相手打者に強烈に印象づけたことがうかがえた。落ちる変化球はチェンジアップも得意にしており、投球の幅は広い。

【54年ぶり大学選手権制覇の立役者に】

 そして、もうひとつ。じつは米沢にはシュートという武器がある。

 金沢学院大戦の立ち上がり、米沢は1番打者の川合から外角高めの146キロのボールで空振り三振を奪っている。

捕手の笠井にこの1球について聞くと、「シュートです」と教えてくれた。

「右バッターの外に浮き上がりながらシュートしていく軌道です。このシュートがいい感じで決まるようになってから、スライダー、カーブと併せて(ホームベースの)横幅が使えるようになりました」

 その後、米沢は擁する関西大は準決勝で國學院大、決勝で慶應義塾大を下し54年ぶりの大学選手権制覇。米沢は4試合に登板して3勝、防御率0.72という圧巻の成績を挙げ、最高殊勲選手賞に選ばれた。

 大舞台でアピールに成功した米沢は、押しも押されもせぬドラフト1位候補になったと言っていい。

 一方で、米沢のコンディション面も心配になる。肩・ヒジの不調で戦線を離れていた投手が、リーグ戦で55イニング、大学選手権でも25イニングを投げているのだ。

 金沢学院大戦の試合後、米沢に疲労について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「疲労はとくになくて、チームを勝利に導くことだけを考えています。投球が終わってからは、次の日に疲労を持ち越さないようにストレッチを重点的にやっています。この春は肩・ヒジは問題なかったので、自信になりました」

 とはいえ、今後は7月に台湾で開催されるワールドカレッジベースボールチャンピオンシップへの日本代表招集が予想される。シーズン通して体調を維持できるかも、今後の米沢の課題になりそうだ。

 今年は米沢だけでなく、有馬伽久(立命館大)、渡辺和大(慶應義塾大)ら大学生左腕に逸材が多い。秋にかけて、誰がトップランナーになるのか。ドラフト戦線からますます目が離せなくなった。

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