清水邦広が語るネーションズリーグ男子と日本代表 中編

(前編::髙橋藍の「怖さ」を清水邦広が分析 日本代表をネーションズリーグ8連勝へと導いたオフェンスの進化>>)

 清水邦広氏が語る、男子バレー日本代表のネーションズリーグ(以下、VNL)。インタビューの中編では、キャプテンの石川祐希の状態、セッター陣について聞いた。

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【キャプテン・石川祐希の調子は?】

――キャプテンの石川祐希選手について、VNLでのプレーの印象はいかがですか?

「イタリア・セリエAのリーグ中にケガをした影響もあってか、VNLの序盤はなかなか調子が上がってきませんでしたが、少しずつ実戦感覚を取り戻していると思います。予選ラウンド第2週のフランスラウンドでは強豪国を相手に力を発揮していましたし、レセプション(サーブレシーブ)の返球率も上がってきているのを見ると、コンディション、プレーのパフォーマンスも徐々に上がってきていると感じますね。

 セッターの深津英臣選手も、勝負どころや難しい状況で石川選手にトスを上げる場面が多くありますね。若い選手が台頭し、今大会で大活躍する髙橋選手も中心的な選手になりましたが、日本代表の要はキャプテンである石川選手だと思いますね」

――ケガからの復帰となると、やはりエンジンがかかるまで時間がかかるのでしょうか?

「そうですね。僕も経験がありますが、試合に出ていないと感覚が研ぎ澄まされないですし、練習だけではコンディションもなかなか上げられません。実戦で得られるものを、練習だけでは補うことは難しい。しかし、VNLで8連戦していくなかで、石川選手は感覚を取り戻しているのではないかと思います」

――イタリアで長くプレーする石川選手が牽引し、日本男子が世界と戦えるチームになったことは間違いないと思います。一方で、今大会で強豪国と渡り合えている要因として、アントワーヌ・ブリザール選手(フランス代表/大阪ブルテオン)やトリー・デファルコ選手(アメリカ代表/ジェイテクトSTINGS愛知)といった、世界トッププレーヤーがSVリーグに在籍していることも挙げられるでしょうか?

「それはすごく感じます。世界のトッププレーヤーがSVリーグに多くなっていて、そのプレーを身近で見ることで"名前負け"しないというか、強豪国への怖さを感じなくなっているように思います。僕が代表でプレーしていた時代は、アメリカやフランス、ブラジルといった世界ランキング上位国と戦う時は『怖いな』という感覚がありました。でも、今はそれがまったく見えません。フラットな精神状態で試合に臨めていると思います」

【セッターはメンバー選考から激しい争いに】

――先ほど、セッターの深津選手の名前が出ましたが、清水さんはパナソニックパンサーズ時代や、日本代表でも長く一緒にプレーしていましたね。その後、ウルフドッグス名古屋に移籍しましたが、何か変化を感じますか?

「深津選手とはすごく長い間、一緒にバレーボールをしてきましたから思い入れが強いです。

リオ五輪の最終予選のあと、代表を離れる時間があって約4年ぶりの招集となりましたが、その間も国内リーグでしっかりと地に足をつけてプレーをしてきた。そしてベテランになり、今は経験を生かした戦い方をしています。

 年齢を重ねながら成長していった選手なので、代表で再び活躍する姿を見るのはうれしいです。コート内でも精神的な支柱になっているので、キャプテンの石川選手が背負ってきた精神的な負担も少し和らいでいるのではないでしょうか」

――プレー面、トスも徐々に進化していったんでしょうか?

「僕と一緒にやっていた若手時代は、これは僕が悪かったのですが、『困った時には全部、俺に(トスを)持ってこい』と言い続けていたんです。だから、彼がミドルブロッカーやパイプなど真ん中の攻撃を使いたいと思っても、僕の圧が強すぎてライトに上げざるを得なかった場面があったんじゃないかと(笑)。それが彼の能力、プレーの幅を狭めてしまっていた部分があるかもしれません。

 ただ、次第にスパイカーの使い方の幅が広くなって、コート中央の攻撃、特にパイプ攻撃が多くなってきていると思います。サイドの選手からすれば、真ん中の攻撃が決まれば両サイドのブロックマークが薄くなるのでありがたいですし、相手からすれば的を絞りづらいですよね。

それと、以前までの深津選手は、20点以降の1点ビハインドといった場面ではエースに上げることが多かった。それが、今ではクイックを使ったり、パイプ攻撃を使ったりしています。『勝負師だな』と思いますね。強気のトス回しが、日本代表でさらに輝きを増しています」

――セッターでは、永露元稀選手も交代で出場し、活躍していますね。

「永露選手とは2024-25シーズンに大阪ブルテオンで一緒にプレーしたのですが、その時はスパイカーに気を遣いながらトスを上げている印象がありました。もともと、周囲に繊細な気配りができる性格ということもあったでしょう。

 しかし、広島サンダーズに移籍し、代表でも経験を積んでいくなかで、自信を持ってトスが上げられるようになったのではないかと思います。永露選手とは今もよく話をするのですが、その内容からも自信を感じますし、試合に入る際に不安要素がいっさいないことが伝わってきます」

――パリ五輪の主戦セッター、関田誠大選手も復帰に向けて準備しているようです。今後、日本代表の正セッター争いはどうなっていくと予想しますか?

「もし自分がセッターを選ぶ側の立場になったら、かなり悩むと思いますし、考えたくもないです(笑)。それはセッターに限ったことではなく、今の日本代表はどのポジションも選考がとても難しいですけどね。

 僕はアンダーカテゴリーの選手も見る機会があるのですが、どんどん能力の高い選手が現れていますし、身長が2mを超える選手も大勢います。『さらに化けるだろうな』と感じる選手も多く、次のオリンピックのメンバーに食い込んでくる可能性もあります。選ぶほうは大変でしょうが、日本男子バレーボール界の未来は明るいですね」

(後編:VNL日本ラウンドの「一番の山場」となる試合は? 代表復帰の西田有志は「漫画の主人公みたい」>>)

【プロフィール】

清水邦広(しみず・くにひろ)

所属:大阪ブルテオン

1986年8月11日生まれ、福井県出身。身長192cm、オポジット。福井工大福井高校時代に春高バレーに出場するなど活躍。東海大学在学中の2007年に日本代表に選出され、翌年の北京五輪に出場した。

2009年にパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)に入団後、多くの個人タイトルを獲得するなど、チームを何度も優勝に導いてきた。2021年には東京五輪に出場し、日本代表のベスト8進出に貢献した。2025-26シーズン限りで現役を引退し、大阪ブルテオンのコーチングスタッフに就任した。

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