今季バレンシアに加入した佐藤龍之介は開幕戦でラ・リーガデビューを果たし、第4節までの全試合に出場している。
現地ではどういう評価なのか? 今回は、過去にスペインで最も有名なサッカー番組『エル・チリンギート・デ・フゴネス』やスポーツ番組『ラ・セクスタ・ノティシアス』でバレンシアの情報を提供し、現在はバレンシア州の公共放送局『ア・プント』でクラブの番記者を務め、クラブの地元メディア『スーペルデポルテ』にも記事を寄稿しているヘルマン・ムニョス・レオン記者に、バレンシアが佐藤を獲得した理由やここまでのパフォーマンスなどについて分析してもらった。
【短期間でサポーターを魅了】
9月6日に王者バルセロナをホームに迎えたラ・リーガ第4節で、バレンシアデビュー後初のベンチスタートを経験した佐藤龍之介は、0-3で苦戦する後半17分に投入されてチームを救うべく奮闘したが、健闘虚しくチームは0-5の大敗を喫した。
4試合で1分け3敗とバレンシアは非常に厳しい状況に陥っているが、サポーターは佐藤がチームに希望をもたらす可能性を見出している。加入直後のプレシーズンでは、デビュー戦となったエルデンセ戦のゴラッソで才能の片鱗を示して観衆を驚嘆させ、エルクレス戦でもすばらしいゴールを記録し、短期間でサポーターを魅了する存在となった。2026年7月7日、バレンシアはFC東京から佐藤を獲得したことを正式発表した。移籍金として約400万ユーロ(約7億2000万円)を支払い、2031年6月30日までの5年契約を締結した。これにより佐藤は、100年以上の歴史があるバレンシアのトップチームでプレーする初の日本人選手となったのだ(※過去に指宿洋史がBチームに所属)。
これはクラブにとっての大きな賭けのひとつだと捉えられ、現地で知る者がほとんどいない弱冠19歳の日本人選手の加入は、多くのサポーターや地元メディアを驚かせる出来事だった。
この移籍の背景には、世界各国のリーグから将来性豊かな若手選手を発掘するというバレンシアの考えがある。この新たな戦略は、フットボールCEOを務めるロン・グーレイ氏とスカウティングディレクターのリサンドロ・イセイ氏が率いるスポーツ運営方針の重要な柱のひとつだ。要するに、若手有望株の発掘と、欧州以外の市場への進出を組み合わせたバレンシアの新たな戦略なのである。
当初、ビザ問題で開幕に間に合わない可能性があったが、最終的にクラブが時間内に全問題を解決。これにより、ラ・リーガ開幕からの4試合(セルタ、ベティス、デポルティーボ、バルセロナ)すべてに出場し、出場時間はチーム内で上位の計235分。最初の3試合は先発で、フル出場1回、シュート2本、ファウル2回、イエローカード1枚という成績を残している。
【今後もレギュラーの可能性は高い】
極めて苦しいスタートを切った状況だが、バレンシアには際立ったパフォーマンスでチームを牽引してくれる選手は存在しない。そんななか、佐藤は誰よりもチームに貢献しようと尽力している数少ない選手のひとりだ。実際、セルタとの開幕戦(0-0)で先発した佐藤をベンチに下げたカルロス・コルベラン監督の決断に対し、メスタージャのサポーターから非難のブーイングが飛んでいたことからもそれがわかる。
ケガ人続出で、起用できるウイングが不足している現状を考慮すると、今後も佐藤がレギュラーの座を維持する可能性は非常に高い。また、チームに佐藤のような特徴を持つウイングがいないことも、先発起用される上で重要な要素となっている。
佐藤と同じポジションには、他にもコルベラン監督の気に入っている選手がいるが、佐藤とはタイプが違う。さらにその質の高さにより、佐藤はサイドだけでなく、トップ下としても起用可能だ。このポリバレントな能力はチームの他の選手には見られないストロングポイントである。
彼は加入直後からサポーターやチームメイトにインパクトを与えた。最初の練習に参加した際、複数の選手がその高いプレーレベルに驚きを隠せなかったようだ。なかでも、狭いスペースでの卓越したスキル、相手を抜き去るスピードや能力が称賛されていた。
加えて、様々なことに積極的に取り組む姿勢、新しい国や街に適応しようとする意欲も好印象を与えている。語学力を向上させるべくスペイン語のレッスンを受け、監督やコーチングスタッフ、そしてチームメイトとのコミュニケーションを円滑にしようとピッチ外でも努力している。
一方で佐藤は、バレンシアが筆頭株主のピーター・リム氏による放漫経営で長年にわたり組織面とスポーツ面の両方で深刻な危機に陥っているクラブであることを理解し、これに順応しなければならない。
リム氏の投資が最低限にとどまっていることで、チームは毎シーズン残留争いを強いられている。バレンシアは過去、欧州カップ戦出場やタイトル争いに慣れたクラブだったため、今の極めて難しい状況を受けて、クラブとサポーターとの間に大きな緊張を生み出している。
【持ち味をもっと発揮してほしい】
チーム状態は厳しいものの、佐藤がバレンシアでのキャリアを順調にスタートさせたことは事実であり、プレシーズン中にはチームメイトが思い描いていたイメージ通りのプレーを見せてくれた。それはドリブル、スピード、シュート力、連係に優れた、巧みで度胸と突破力のある選手の姿だ。
ラ・リーガ開幕からの4試合でも好プレーをいくつも披露してきたが、サポーターはプレシーズン以上のパフォーマンス、すなわち、先に述べたような持ち味をもっと発揮してほしいと期待しているのも事実である。
佐藤がチーム屈指のクオリティーを備えた選手のひとりであることは明らかなので、より重要な選手になるため、勇猛果敢にプレーし、チーム内での存在感を高めていく必要がある。
まだ19歳と非常に若く、新しい国や街に順応している最中のため、辛抱強く見守らなければならないのも確かだが、サポーターにとってはすでに大きな期待の星のひとりなのだ。そのため、今以上に自信をつけ、さらなる進化を遂げ、主力選手へと成長していかなければならない。
髙橋智行●翻訳(translation by Tomoyuki Takahashi)
ヘルマン・ムニョス・レオン●取材・文 text by German Muñoz León

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