9月24日、宮城。森保一監督率いるサッカー日本代表は9年目を迎えていた。

その初戦、結果から言えば、ワールドカップ優勝経験のあるウルグアイを3-1と下し、申し分なかった。先制し、一度は追いつかれながら、アディショナルタイムの連続得点で逆転した劇的な結末だ。

「日本は、長期間にわたってチームを作り上げてきた年月を反映させていた。彼らが終盤のチャンスを生かした得点は、自分たちには残念な失点だったが......」

 この試合が代表監督デビューとなったディエゴ・フォルランは口惜しげに、そう振り返った。ウルグアイは北中米ワールドカップでグループステージ敗退後、マルセロ・ビエルサ監督が去って手探りの状況だけに、明瞭な差が出たと言える。

 では、来年1月のアジアカップまでの限定となった森保ジャパンは、本当に順風満帆な船出だったのか?

サッカー日本代表の構造的欠陥を覆い隠した攻撃陣 塩貝健人「こ...の画像はこちら >>
 前半、日本は攻守がうまく機能していなかった。リズムが悪く、急ぎすぎてしまったり、動きがチグハグだったり、ペースを作れなかった。敵陣までボールを運ぶのにひと苦労し、ようやく迫っても連係で崩すまでには至らなかった。

 11分、右ウイングバックで代表デビューした松木玖生が、カットインから得意の左足のミドルを沈めた。交差するように走った堂安律がうまく相手を引っ張って、ディフェンスが不意をつかれたように遅れ、よく左足を振り抜いている。松木のパワーがうまく出た先制点だった。

 しかし、チームとしてはカオスが続いた。

新しいメンバーが入ったこともあったが、攻守のつながりがなく、どれも単発。左ウイングバックの中村敬斗の単騎での突破しか攻め手がなかった。

 そして42分、ビルドアップをはめられて、ショートカウンターでシュートを打たれた。GK早川友基が自らのミスを拭うようなセーブを見せたが、こぼれ球を蹴り込まれた。

 早川は代表5試合目。連係面の不安定さが失点に直結した一方、彼自身の不安定な守備もバックラインに影響を与えていた(後半にもバックパスのタイミングで危ない場面があり、キャッチングも安定していなかった。その危うさは今シーズンのJリーグで見せていたもので、起用した側の問題でもあるだろう)。

【鎌田大地が振り返る前半の戦いぶり】

「攻撃面はもっとうまくできるシーンはあったと思いますが、なかなか難しかったですね」

 前半をベンチから見守った鎌田大地はそう淡々と振り返っている。

「前半は悪くないシーンもありましたけど、バランスのところで、ゴールキックの立ち位置だったり、攻めているときのリスク管理だったり......チームとしてやらないといけないことが、まだできていないところが多く見られました。そこは今までいた選手と比べた戦術理解の問題だと思いますが、チームとしてやらないとズレていってしまうので、時間が必要ですね」

 実際、後半から交代で鎌田がピッチに立つと、ぽつぽつとリズムが出てきた。急がずに攻め直す、ボールを保持し、時間を作る、あるいは素早く縦パスを入れ、緩急をつける。その繰り返しを丹念にやるなかで、たとえ攻撃を阻まれても、各自が「この場所で、このタイミングで動けばいいんだ」とメッセージを送られたように、間接的にテンポを取り戻していった。

 ただ、失点の危険度はむしろ増していた。

 その理由は、ウイングバックを用いたシステムの根本的な欠陥をウルグアイに突かれたことにある。前半以上にウイングバックの背後を狙われ、クロス攻撃が多くなった。北中米ワールドカップでブラジルが採ったのと同様の対策だった。

 明白な構造上の問題だが、この日は主力を投入することで覆い隠せた。

「(コーチ陣には)ボール保持の時間を増やすように言われました」

 久保建英は63分に交代出場しているが、その姿勢が逆転の呼び水になった。

「もう少し流れを持ってきてほしいと言われました。流れが悪くなりかけたところだったので、交代選手によってリズムに乗せられてよかったなと思います。プラスアルファで流れが変わって攻められるようになったし、ロングボールを入れられ(崩され)るシーン以外はよかったなと」

 鎌田、久保を筆頭に、上田綺世、伊東純也、田中碧など主力組の投入によって、攻撃は単純にパワーアップした。

【塩貝健人がみなぎらせた野心】

 森保ジャパンのシステムは、敵を押し込んで前に人数をかけられると強みが出る。ブラジル戦のように腰が引けなかったのは評価に値した。決定機を作られながらも、殴り合いで相手をノックアウトできる攻撃力を見せていた。86分、途中出場の上田が久保のスルーパスからの決定機を外すが、これが伏線になった。

「いろんな声が届いていました。ワールドカップもいろんなことがあったから、『僕の1点で黙らせる』という決意もあって......」

 北中米ワールドカップで苦い経験を味わった塩貝健人はそう明かすが、終盤に投入されると牙をむいた。アディショナルタイムに伊東、上田とつないだパスを右で受け、そのままGKを抜く一撃を決めたシーンは迷いがなかった。

「僕の(ものを言う)スタイルは、結果が出ないと批判が出るのはわかっています。でもトップに行くにはこれが必要で、変えるつもりもありません。結果が出ない時でも目標は常に高く。(決勝点になった)この1点は大きいですが、満足していないですし、上田選手が3点目を決めて涼しい表情だったんで、僕もこれで喜んでいる場合じゃないなと」

 塩貝は、ストライカー特有の野心をみなぎらせていた。人材がいないわけではない。主力組はあらためて力を見せた。若い塩貝も殊勲者になった。

 反面、チームの構造的欠陥は変わっていない。

 攻撃は手数をかけられれば有効だが、その律動を強豪相手に90分間は維持できない。

この日、日本が巻き返せたのは、ウルグアイに長旅やアウェーの疲れが出て動きが鈍くなり、引き分け狙いになったのが多分にあった(前田大然を完封していたロナルド・アラウホが交代したことも影響した)。親善試合では帳尻を合わせても、もっと強い相手との激しい真剣勝負になると、ほぼ必ず守備で欠陥が顔を出す。

 これは構造の問題で、この試合をもって今後に希望を託せるかという話ではない。同じことの繰り返しだ。

 9月28日、森保ジャパンはベネズエラと戦う。 
 

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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