この記事をまとめると
■納期遅延が深刻なクルマの状況について解説■受注を一時的に停止している車種も
■トヨタ車はKINTOだと納期が早くなる
受注を一時停止している車種も多数
クルマの納期遅延が縮まらない。以前は在庫のない車種でも、契約して1カ月から2カ月で納車できた。それが今は、4カ月なら短い部類に入る。
さらに受注を停止した車種も多い。以前は販売店では「ランドクルーザーが約4年」などと案内していたが、そこまで延びると、納車までにユーザーの生活環境が変わる可能性もある。たとえば海外転勤が決まったら、契約も変更せざるを得ない。
そこでトヨタの販売店によると「納期が延びたランドクルーザーやカローラクロスは、受注を一時的に停止している」という。また「フルモデルチェンジを控えたアルファードやランドクルーザープラドも受注していない」とのことだ。
トヨタは、ほかのメーカーと違って、軽自動車を限定的に扱っている。販売の中心は、装備の充実した小型/普通車で、半導体などの供給不足による影響を受けやすい。そのためにトヨタ車には、納期を遅延させたり受注を停止している車種が目立つ。
日産も販売店では「エクストレイルやフェアレディZの受注が停止している。サクラも止まっていたが、2022年12月下旬に再開した。ただし2022年12月15日で一度終了したCEV補助金が再開すると、受注が再び増えて納期も延びるから、受注が停止する可能性もある」と説明した。

KINTOは納期が早いがデメリットも
このほか納期の長い車種として、トヨタでは「ノア&ヴォクシーはノーマルエンジンが9カ月、ハイブリッドは1年を要する。ハリアーハイブリッドとヤリスクロスハイブリッドも約1年で、クラウンも9カ月と長い」という。
とくに問題なのが新型プリウスで、販売店は以下のように述べた。「販売店では2022年12月22日から、プリウスの価格を明らかにして予約受注を開始した(予約受注開始日は販売店によって異なる)。受注は絶好調で、2022年内に、メーカーから与えられた2023年の生産枠を使い切る販売会社が出てくるかも知れない。そうなると正式発表される2023年1月10日には、受注を早くも停止する可能性がある」。
納期を縮める対策として、定額制カーリースのKINTOが挙げられる。ノア&ヴォクシーの納期は、前述のとおりノーマルエンジンが9カ月、ハイブリッドは1年だが、KINTOでは「契約後、1カ月半から2カ月で車両を届けられる」というからだ。KINTOを手掛ける販売店によると「新型プリウスもKINTO専用グレードの1.8Uを契約した場合、3カ月から4カ月で車両が届くと思う」とコメントした。

なぜKINTOは納期が早いのか。トヨタに尋ねると「車両の需給方法が(販売する車両とは)異なるから」としている。
ただしKINTOはカーリースだから、契約期間の満了後に、ユーザーが車両を買い取ることはできない。
さらに盲導犬を含めて、動物の同乗もできず、ドレスアップやチューニングも認められていない。要は借りている車両だから制約が多い。

トヨタは、若年層の需要を掘り起こすことも含めて、KINTOに力を入れる。そこで納期遅延まで利用して、通常の販売よりも納期を短く抑え、KINTOのユーザーを募っているわけだ。
販売店からは「通常の販売では納期が1年に達する車種が、KINTOなら2カ月で納車できるのは不公平だ」という声も聞かれる。通常の買い方をしたいユーザーも同じ気持ちだろう。
ちなみにトヨタが日本のトップメーカーになった理由は、すべてのユーザーに、常に公平を心掛けてきたからだ。全国の大半の地域に販売網があり、故障の多かった時代に知らない場所へ出掛けても、トヨタ車なら安心だった。スターレットからクラウンまで、どこでも同じ水準のサービスを受けられた。この公平性が、KINTOを開始した最近のトヨタでは、損なわれ始めたように思える。