この記事をまとめると
■新型クラウン・クロスオーバーにトヨタの雪上テストコースで試乗



■加速性能ではRSのほうが優れる



■両グレードともに4WSの効果でスポーツカー並に振りまわすこともできる



全グレードが4WD化された新型クラウン・クロスオーバー

新型クラウン・クロスオーバーは全モデルがハイブリッドシステムと4輪駆動「e-Four」システムを備えている。その走りの良さはすでに一般道の乾燥舗装路でリポートしているが、4WDシステム搭載車としてはやはり滑りやすい路面での走行特性も気になる。



そこで、今回は北海道の旭川北方にあるトヨタ自動車「士別テストコース」において、雪道での走行性能を試す機会が与えられた。



士別テストコースはサーキット路や欧州の一般路を模したワインディング路、また高速周回路などさまざまなテスト走行が行われる国内でも屈指の走行テスト専用路だ。冬季は降雪により全面積雪状態となり、雪道性能を試すには絶好のステージとなる。



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用意されたのは新型クラウン・クロスオーバーの2.4リッターターボ+6速AT+HV搭載の「RS」グレードと2.5リッターダイナミックフォースエンジン+THS2搭載の2モデル。タイヤはRSが225/45R21サイズのブリヂストン・ブリザックVRX3スタッドレスを、2.5リッターTHSモデルには同タイヤと225/55R19サイズのブリヂストン・ブリザックDM-V3の2タイプが用意されていた。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
新型クラウン・クロスオーバーRSのタイヤ



早速サーキット路を走り出す。アップダウンと長い直線、テクニカルなセクションで構成される難易度の高いコースだ。20年ほど前にトヨタのテストドライバー達とトレーニングとして80スープラで走り込んだことがある。



初めにRSに乗り込みコースインした。RSはECOからSPORT S+まで5種類のドライブモードが設定可能だが、ここはサーキット。躊躇なくもっともスポーティなモードである「SPORT S+」を選択した。通常走行での各モードの完成度が高いのはすでに確認されているが、サーキット走行で限界域の特性を試す絶好の機会だ。貴重なクラウン・クロスオーバーの限界特性を試せるのだ。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
新型クラウン・クロスオーバーRSのリヤ走行シーン



加えてトヨタが誇るVDIM(ビークルダイナミクスインテグレーテッドマネージメント)の電子制御もオフにしておく。VDIMをオフにしておくことで、シャシー本来の走行特性を知ることができる。これもサーキットでなければ知ることができない部分といえるだろう。



ピットエンドで一旦停止し、アクセル全開でコースインした。初め前輪が半回転ほど空転したかと思うと、ただちに後輪モーターが最大駆動力を発揮し、雪上路とは思えないほどの強力な加速Gを発生しながら発進した。直進性も高く、駆動力モニターで前後モーターが最大駆動力付近で細かな制御をしながら最大加速Gをフィードバック制御させていることがわかる。



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新型クラウン・クロスオーバーRSを走らせる中谷明彦さん



この加速時の安定感とGの高さを知ることで動力性能の高さを理解することができる。その安心感を過信せず第1コーナーをまわり込む。ステアリングの操舵応答性が高く、ノーズがすっとインを向く。1コーナーの旋回速度は圧雪路ながら90km/hを超える高速だ。しかし、安定感は維持されライントレース性にも優れている。



さらに速度を上げても大丈夫なことを確認しつつ続くS字コーナーへ。

RSの車重は2トンに達し、右左と姿勢を変えるのは不得意なはずだ。しかし、ステアリングを転舵しながらアクセルオンでパワーコントロールを行うとリヤモーター寄りのトルク配分となり、プッシュアンダーを見せない。4WDの弱点といえる旋回時のプッシュアンダーを見事に克服している。さらに、コーナーのRがまわり込んだシーンでは、ステアリングの操舵切り増しにより旋回ヨーモーメントを発生する制御となって4輪スライド姿勢へと移行していく。



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新型クラウン・クロスオーバーRSのターンイン



低速のヘアピンコーナーではステアリングの転舵でノーズがインを向くが、さらに切り増すとイン側に巻き込む程の旋回ヨーレートが引き出せる。これはDRS(ダイナミックリアステアリング)システム、いわゆる後輪操舵が機能している証だ。40km/h前後では最大4度まで後輪が逆相に転舵される。これにより低速コーナーではアンダーステアを出さず、優れたライントレース性を発揮できている。



ストレートへと戻り全開で駆け抜けると最高速度は180km/hに達した。そこからのブレーキングもペダルフィール、コントロール性にも優れている。



滑りやすい雪道でクラウン・クロスオーバーがこれほどの走行性能を発揮するというのは予想以上だ。



限界特性が理解できたので2周目以降は各コーナーで高速ドリフトやカウンターステア、ゼロカウンターなどの走行適合特性を試した。



燃費指向のTHS2搭載モデルもコーナリングは自在!

あらゆる場面で自由自在に姿勢コントロールできるのは驚きだ。メカニカルな4WDならこれまでもスポーツ4WDでは可能だったが、前後独立した2モーターを制御してスポーツ4WDの走行特性として仕上げるのは大変だったことだろう。ましてや2トンもある車重を低ミュー路で自在に走らせられるようにするのは困難だったはず。一般路試乗の際にエンジニア氏が「雪道の走りも最高なんですよ」と説明してくれたことがようやく理解できたのだ。



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カウンターステアを当てる新型クラウン・クロスオーバーRS



だが、まだ完璧というわけでもない。6速ATを制御するキックダウンスイッチがアクセルペダルに機械的に設置してあり、アクセル開度が大きい領域でのコントロール性を阻害している。また、前後に加えて左右の駆動力制御も欲しくなる。ブレーキベクタリングは効果的だが、作動するのは接地荷重が抜けるイン側タイヤなので、フィードバック制御では減速感を伴う強い介入が必要になる。VDIMオフ時はブレーキベクタリングは機能しないので、DRSに頼るために大きな転舵が必要で、高速コーナーではこれも機能しない。



こうした部分も今後どんどん改良され進化していくことが期待できる。



次に2.5リッターTHS2仕様に乗る。確かに動力性能面ではRSと格差が感じられ、加速場面での勢いは弱い。

直線の最高速度は165km/hほどで、RSには大きく差を付けられる。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
新型クラウン・クロスオーバーGのリヤスタイリング



しかし、コーナーリング特性はRSとまったく遜色ない。トランスミッションの変速制御がないのでアクセルコントロールしやすく、まるで舗装路であるかのように良好なライントレース性を引き出せた。もちろんドリフトやゼロカウンター走行も可能で、THS2搭載モデルとしては前例のないほどスポーティな走りに仕上がっている。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
新型クラウン・クロスオーバーGの21インチモデルの走り



19インチタイヤも試したが、じつは圧雪路でのグリップは19インチのほうが高かった。とくにトラクション性能に優れ、コーナー立ち上がりではRSに迫ることができる。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
新型クラウン・クロスオーバーGの19インチモデルの走り



前後2モーターを個別に制御しつつ、減速時も加速時も前後アクスルが繋がっているかのように駆動力制御するのは簡単ではないはず。しかも最高速度域までそれを行っている。



雪道のテストコースを走ることで、クラウン・クロスオーバーの走りは、じつはスポーツカーを凌駕する高度な制御が実装されていることがわかったのだった。



【試乗】もはやスポーツカー並のコントロール性! 雪道全開走行で新型クラウンの「本領」を見た
クラウン・クロスオーバーの主要諸元表

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