この記事をまとめると
■トレッドを貼り替えるリトレッドタイヤは経済的にも環境的にも効果が高い■リトレッドタイヤにはプレキュア製法とリモールド製法のふたつの製法がある
■乗用車のタイヤはサイズバリエーションが多く、リトレッドタイヤを採用すると逆にコストがかかってしまう
再利用を可能にしたエコなタイヤ
トラックなどで採用されているリトレッドタイヤ。摩耗したトレッドを張り替えて再利用するというタイヤだ。何度か再使用することでコスト削減や環境負荷の低減が可能となる。
どんなタイヤも再利用可能という訳ではない
トレッドを張り替えることで、再利用を可能とするトラック用や航空機用を中心としたリトレッドタイヤ。資源使用料を50%、CO2排出量を48%削減することが可能で、トラック用で考えた場合、価格も3分の2ほどに抑えることができる。そのため、環境と経済に優しいタイヤと言える。
しかし、どんなタイヤでも再利用可能という訳ではない。たとえばブリヂストンの場合、目視と触った感触によって、内面と外面を徹底的に人がチェックする受入れ検査のあとに、高電圧による非破壊検査を行って目には見えない貫通キズを検査、そして最後にシアログラフィ検査機器によって外見からは判断できないタイヤ内部の損傷を検査する。この3つの検査をパスしたタイヤがリトレッドタイヤとして再利用される。
なお、リトレッドは基本的に1回とされている。しかし、最近は2回以上のリトレッドを可能にしたタイヤも存在している。また、前輪では使用しないようにとタイヤメーカーはアナウンスしている。後輪であっても使用条件が過酷な位置(シングルの遊輪など)での使用は避けるようにアナウンスされている。
乗用車にリトレッドタイヤが採用されないワケ
製法は2種類
リトレッドタイヤにはふたつの製法がある。プレキュア製法とリモールド製法だ。このふたつは加硫と呼ばれるゴムに硫黄などを入れて熱と圧力を加えて弾性や強度を確保する工程のタイミングが異なる。

プレキュア製法は使用されたタイヤ表面のトレッドゴムを削り取って接着面を形成、この古いトレッドゴムが削り取られたタイヤは、リトレッドタイヤの土台となるため「台タイヤ」とも言われる。その接着面に接着ゴムを付けて、あらかじめトレッドパターンが刻まれたトレッドゴムを貼り付ける。そして加硫缶と呼ばれる装置の中で加硫させて台タイヤとトレッドゴムを接着させる。メリットとしてはリモールド製法よりも製造設備に必要なコストが抑えられるところだ。
リモールド製法は台タイヤの上に加硫していないトレッドゴムを巻き付ける、次にモールドと呼ばれる金型に入れて、加硫をする。このモールドに入れて加硫をするときにトレッドパターンが付けられる。メリットとしてはプレキュア製法よりもトレッドの継ぎ目が目立たず、新品タイヤのようなトレッド部の外観となる。
その後は基本的にはプレキュア製法もリモールド製法も同じだ。製品検査や耐圧検査などが行われる。
乗用車用ではコストがかかる
経済性と環境面、両方でエコなリトレッドタイヤだがトラック用や航空機用がメインで我々が普段運転するような乗用車では採用されていない。
ではトラック用では経済性が高いリトレッドタイヤが乗用車用ではコスト高となるのか? それはサイズ展開の問題である。乗用車用では12インチから上は22インチを超えるようなサイズまで用意されている。そのサイズは200を優に超える。それに対して、トラックバス用は小型も含めると16~22.5インチとなっていて、そのサイズは30を超える程度。乗用車用のリトレッドタイヤを用意するには設備投資が膨大となり、通常の新品タイヤと比べて価格のメリットを出すことが困難なのだ。

じつは過去には乗用車用にもリトレッドタイヤが製造されていたことがあった。再生タイヤとも呼ばれていたが、コスト的メリットがなくビジネスとして成立が難しかったため、姿を消してしまったのだろう。
リトレッドタイヤはサイズ展開が限られているトラックだからこそ可能なエコなアイテムなのだ。