この記事をまとめると
■ここ最近で大きく進化したクルマの装備にデジタルミラーがある■デジタルインナーミラーはそこそこ見かけるが使用には慣れが必要
■デジタルアウターミラーはまったく見かけずコストパフォーマンスも悪い
登場当初は画期的装備ともてはやされたデジタルミラー
クルマの装備は日進月歩で進化していますが、ここ10年ほどの間で大きく変わった装備のひとつに、デジタルミラーがあります。2014年には、日産が世界で初めてデジタルインナーミラーとなる「インテリジェントルームミラー」を採用。2018年には、レクサスESに世界で初めてデジタルアウターミラー(サイドミラー)が登場しました。
それぞれのメリット、デメリットとしては、まずどちらも目指すところは「常にドライバーに良好な視界を提供したい」ということ。通常のルームミラーの場合は、後部座席の人や荷室の荷物に視界を遮られたり、夜間や地下駐車場などの暗い場所、雨などの悪天候時にはリアウインドウが曇ったりすると後方を確認しにくくなってしまいます。
そこで、車体後部に取り付けたカメラで後方の様子を写し、液晶モニターを搭載したミラーにその画像を表示させることで、良好な視界を提供しようとしたのがデジタルインナーミラーです。通常の光学式ミラーで見るよりも、広い範囲の様子が映し出されることや、後続車両のドライバーの表情などまで鮮明に見えることもメリットと言えるでしょう。
デメリットとしては、後席の子どもの様子などを見たい時に見られなくなることや、老眼の人などはピントが瞬時に合いにくいといったことがあります。そのため、多くの車種ではデジタルインナーミラーと通常のミラーをスイッチなどで切り替えることができるようになっており、シーンや好みに応じて使い分けができます。
そして デジタルアウターミラーのメリットは、やはり悪天候時にサイドウインドウが曇ったりすると通常のサイドミラーなら見えなくなるところを、室内に取り付けた専用モニターに左右の視界を映して見ることができ、視界が確保できること。視線移動が小さくなることや、モニターに映る周囲の車両を認識して目立たせたり、肉眼で見るよりも距離を分かりやすくする工夫もあります。

デメリットとしては、慣れるまで少し時間がかかることや、サイドミラーによって車両間隔をつかんでいた人はその指標がなくなり、運転が不安になること。常に視界の隅でモニターがチラチラと動いているため、目が疲れると感じる人もいます。
デジタルアウターミラーの普及の壁となるのはコスト
どちらも、使っているうちに慣れて便利に使っている人もいれば、どうしても馴染めず元に戻したいと後悔している人もいます。そのため、当初はあっという間に普及するかと思われましたが、期待したほどは広がっていない状況です。

アフターマーケットでは、後付けできるデジタルインナーミラーもさまざまなメーカーから販売されており、近年ではドライブレコーダーにデジタルインナーミラー機能が搭載されたものが人気のようです。

それに対して、デジタルアウターミラーの普及は遅々として進んでいません。レクサスESとHonda e、アウディのe-tronまではもてはやされましたが、それ以降進んでいない状況です。原因としては、ESで言えばオプションで装着できるグレードが限られるうえ、価格が約22万円から28万円と高額なこと。インテリアに取り付けられるモニターがカッコ悪く、室内のエレガントさを削いでしまうことなどが考えられます。

また、通常のサイドミラーでもとくに不満がなく、デジタルにする必要性を感じないというのも大きな理由となっているようです。
ただ、モーターショーなどで登場するコンセプトカーのスケッチなどを見ていると、やはり近未来のクルマはミラーレスのデザインで描かれていることが多いと感じます。コスト面なども含め、デメリットをクリアしてさらに普及していくのか、それともまったく別のものに置き換わる可能性もあるのか、今後も注目したいところです。