この記事をまとめると
■ル・マン24時間レース100周年を記念して過去の参戦車両81台の展示が行われた■今回はその81台のなかから印象深いモデルを10車種ピックアップした
■次回の記念開催となる2032年にはもしかしたら水素燃料車が展示されているかもしれない
ル・マン参戦車両の展示81台中61台が優勝車両
ACO(フランス西部自動車クラブ)が管理するサルト自動車博物館で、今年のル・マン24時間レース開催直前の6月1日から、ル・マン・クラシック・レースが終了する7月2日まで、ル・マン24時間レースの100周年を記念した、過去100年間にル・マン24時間レースに参戦した車両81台を一堂に集める展示が行われた。
展示車両の内訳は、全81台中の61台が優勝車両という豪華な顔ぶれだったが、惜しくも戦績を残せなかった車両のなかには、まさかこの車両が現存したのかと驚くようなモデルもあり、誠に勝手ながら取材者の特権ということで、優勝車両に絡めてこれらの歴史的稀少車も紹介していくことにした。名付けてル・マン史上に輝く名車10台。
まず、今回の出展車両中の最古参となったのが1924年の優勝車、ベントレー3リッタースポーツだ。記念すべき第1回の優勝車両はフランスのシェナール&ウォルカーだったが今回は姿を見せず。代わって第2回大会優勝のベントレーが展示車両の最古参役を務めるかたちで登場。
今年のル・マンでは、フェラーリが58年ぶりに優勝を遂げることになったが、そのフェラーリの記念すべきル・マン初勝利を飾ったのが1949年大会優勝の166MMだ。ドライバーのひとりはルイジ・キネッティだった。

1950年代、ディスクブレーキの採用で自動車メカニズムに一大変革をもたらしたジャガーDタイプは1957年の優勝車両が登場。ジャガーはこの優勝で1955年からル・マン3連覇を達成。イギリス勢ここにあり、を示していた。

1960年代にル・マンで黄金時代を築いたのはフェラーリだ。1960年から1965年までル・マン6連覇を成し遂げたが、1966年以降、排気量で優るフォードに屈するかたちに。優勝こそ逃したがその流麗なフォルムでいまもファンの厚い支持を受ける伝説の名車、330P4(1967年)が展示されたのでこれを紹介することにした。

フェラーリからル・マンの主導権を奪取したのはフォードだったが、ここではあえてキャロル・シェルビー&ケン・マイルズのフォードGTではなく、ジョン・ワイアーが辣腕を振るったガルフ・オイル・カラー時代のGT40(1968年)を選択。

ペドロ・ロドリゲス/ルシアン・ビアンキ組の優勝車両が持ち込まれた。
ポルシェ・アウディ・マツダ・トヨタと1970年代以降も名車だらけ
5リッターグループ4スポーツの時代に圧倒的な強さを誇ったのがポルシェ917だったが、その917勢からなんと1971年のル・マンに参戦したガルフカラーの917LH・17号車が登場。結果はリタイアだったが、その後の消息が不明となっていた伝説の車両だけに、今回の登場はファンにとって嬉しい限りの出来事だった。

1980年代のル・マンを断然リードしたのがポルシェである。1981年の936/81に始まり1987年の962Cまで、前人未踏のル・マン7連覇を達成。ヨースト(1984/1985年優勝)の956を先頭に居並ぶポルシェグループCカー勢は、壮観な様相を呈していた。

ル・マンのレギュレーションが変更される端境の時期に、IMSA-GTP規定で臨んだ4ローターのマツダ787Bが1991年のル・マンを制覇。日本人には思い出深い車両だ。フォルカー・バイドラー/ジョニー・ハーバート/ベルトラン・ガショーのトリオがドライブ。

2000年から直噴エンジンのFSIをテーマに、続く2006年からディーゼルターボ、2012年からディーゼルHVでル・マンに参戦。またたく間に合計13勝を挙げたアウディは優勝全車を出典。

そして、トヨタ。ル・マン初参戦は1985年と古かったが、初優勝を遂げるのは33年後の2018年、TS050まで待たなければならなかった。しかし、その後は現行のGR010と合わせてル・マン5連覇を達成。優勝5モデル全車が展示された。

100年の歴史を積み重ねたル・マン、次の節目となる大会は9年後の2032年、第100回大会だ。おそらく、今回と同じような企画が行われることになると思うが、時代背景を象徴する車両、ひょっとしたら水素燃料車が顔を連ねているかもしれない。
これから10年、自動車に大きな変革期が訪れるであろう時代のル・マンは、いったいどういった内容で開催されることになるのだろうか。その成り行きが注目される。