この記事をまとめると
■CX-5が一部改良を実施■装備の追加などで価格が変更されたほか、グレード整理も行われた
■今回の改良のタイミングでMTの設定が廃止となった
マツダで1番売れているSUV「CX-5」がパワーアップ
グローバルにみると、マツダ車のなかで最多販売を誇る基幹モデルはミドル級SUVの「CX-5」であることをご存じだろうか。マツダの新車販売におけるCX-5のシェアは、なんと33%となっている。日本国内の販売状況においても、CX-5はマツダ車の最人気モデルだ。
2022年度の国内販売実績は約2.7万台。新しくFRプラットフォームのSUVモデル「CX-60」が登場しているが、CX-5の人気は陰りをみせるどころか好調を維持している。
そんなCX-5が商品改良を実施する。10月中旬という発売を前に、その進化ポイントを紹介しよう。
まず、パワートレインやシャシー性能といったハードウェアについての具体的な進化はアナウンスされていない。今回はグレード体系の見直し、内外装デザインや標準装備の拡充による既存グレードの価値鮮明化がアピールポイントとなっている。
グレード体系でいえば、長らくマツダのプレミアム志向グレードとしておなじみだった「Lパッケージ」が廃止された。そのほか、安全装備を充実させた「Proactive」も今回の商品改良で消えている。
その理由は明確で、従来モデルにおいてスポーティ仕様の「スポーツアピアランス」や「ブラックトーンエディション」といったグレードへの支持が集まっていたからだ。この2グレードで53%のシェアとなっているという。とくにお買い得感のある「ブラックトーンエディション」は20~30代の若者層、また女性比率が高いのだという。

クロスオーバーSUVという激戦区においては、各社がさまざまな個性を示すことでブランド価値を高めているが、マツダのSUVはスポーティをキーワードに選ばれていることを、これまでの実績は示しているわけだ。
2023年9月に発表されたCX-5商品改良後のグレード体系は次のようになっている。
●最上級プレミアム志向
エグゼクティブモード●レジャー志向
フィールドジャーニー●賢い選択肢
スマートエディション●スポーツ志向
スポーツアピアランス
レトロスポーツエディション(特別仕様車)
ブラックトーンエディション
特別仕様車「レトロスポーツエディション」を追加することでスポーティグレードの選択肢を増やしたというわけだ。
レトロスポーツエディションは、CX-5だけでなくMAZDA3、CX-30にも同時に設定されるもので、ボディカラーはカーキ系の「ジルコンサンドメタリック」をイメージカラーとしながら、ドアミラーなどをブラックアウトすることで引き締めた印象に仕上げた仕様。

テラコッタとブラックのコンビネーションでまとめたインテリアが、レトロという名前にふさわしい雰囲気を生み出している。
値段が上がっても追加装備は価格以上!
もちろん、それ以外のグレードはそのままというわけではない。
スポーツアピアランスについては、CX-8で採用された縦基調ブロックメッシュパターンのフロントグリルが新採用され、ボーズサウンドシステムが標準装備となった。

フロントシートにベンチレーション機能が追加されたのも見逃せない。クリーンディーゼルを積むXDスポーツアピアランスのメーカー希望小売価格は、従来の366万9600円から390万600円(FF)と大幅に価格上昇しているが、サウンドシステムとシートベンチレーションの採用を考えれば妥当だ。

なお、エグゼクティブモードも縦基調のフロントグリルや高輝度ダーク塗装の19インチアルミホイールなどを新採用している。

フィールドジャーニーは、従来の明るいイメージのインテリアを上質感のあるものへとカラーチェンジ。フロントグリルのカラーコーディネートも大人びたものへと変更している。カジュアルなSUVから上級シフトしたといえるだろう。
スマートエディションとブラックトーンエディションについては、内外装の変更はないが、従来はオプション扱いだった地上デジタルチューナー(フルセグ)を全グレードに標準装備化。スマートエディションにはスマートキーも標準装備となった。ブラックトーンエディションでは、パワーリフトゲートや10.25インチセンターディスプレイなどが標準装備となっている。

今回の商品改良により、CX-5は平均9万2000円の値上げとなっている。しかし、追加装備された機能を計算すると、スマートエディションで8万8000円、ブラックトーンエディションで13万9000円、フィールドジャーニーでは16万1000円相当になるというから、単なる値上げではなく装備追加による価格改定という部分もありそうだ。
こうして標準装備を増やして、メーカーオプションをBOSEサウンドシステムとガラスサンルーフの2アイテムだけに絞ったのは、けっしてCX-5の価格を上げようと狙っているからではないという。さまざななコストアップ要因に対応するためにはバリエーションを絞る必要があり、そのために各グレードでユーザーが満足いくよう完成度を上げた結果といえる。

残念なのは、バリエーションを絞っていくなかで、MTを残せなかったことだろう。マツダによれば、今後は基本的にSUVモデルからはMTの設定がなくなっていくという。MTの販売台数自体は非常に少なく、MTの設定を残すことは合理的でないのは理解できるが、マツダのSUVにスポーティなイメージがあるのは、MTを選べるという点にあったことも貢献していたと思うが、ユーザーやファンはこの点についてどのように思うのだろうか。