この記事をまとめると
■クルマの世界にもディープでマニアックな世界が存在する■クルマ好きでも特定の分野に熱狂的なファンがいるカテゴリーを5つ紹介
■ぬけだすことが難しいクルマの底なし沼だがひとつの対象に心酔できるのは幸せだ
細分化して数えられないほど存在するクルマ関連のディープな世界
ロードバイク、機械式腕時計、カメラ、ギター、オーディオ、鉄道、などなど。趣味性の高いジャンルにはそれぞれの推しメーカーやカテゴリーといった棲み分けがあります。自他ともに認めるクルマ好きの人のなかにも、例えばじつはロードバイクもかなり凝っている……、といった具合に、複数の趣味を楽しんでいるというケースも少なくないのでは?
当然ながらクルマの世界にもディープかつマニアックな世界が数多く存在します。
ロータリー沼
一般的なレシプロエンジンではなく、マツダが歴代RXシリーズに搭載していたロータリーエンジンにシンパシーを抱く人たちもまたディープ率が高めです。ロータリーエンジンに魅せられたら最後、代わりになるクルマが存在しないのですから。RX-8が生産を終了してから早いもので10年以上、RX-7にいたっては20年以上経過しているものの、マツダでは現在もロータリーエンジンの部品を製造しています。
また、各地にロータリーエンジンを得意とするスペシャルショップも点在しています。「俺(私)はロータリーエンジン搭載車に乗っている、これからも乗りつづける」という強い意志とプライドは、湾岸ミッドナイト系の作品に登場人物がそのまま実体化したかのような本気度を感じます。
スバリスト沼
いわゆるスバリスト、他のメーカーのクルマには目もくれず、六連星のエンブレムと水平対向エンジンが搭載されたスバル車を愛してやまない人たちです。スバリストにおける仲間意識の強さは、ほかのモデルでもなかなか見られないものがあります。多くのクルマ好きが敬遠する「トナラー」も、スバリスト同士なら面識がなくても安心。なぜか同じ匂い(?)を治直観的にかぎわけられるのです。

さらに、「型式で会話」もスバリスト同士ならではの日常。BG、BH、BP、GF8、GC8、GVB、などなど。クルマに詳しくない人はもちろんのこと、クルマ好きでもスバル車に疎い人にとっては「日本語の会話なのか!?」と思うくらい専門的な用語やキーワードが飛び交います。
劇用車沼
西部警察のマシンX、スーパーZ、マシンRS、あぶない刑事の日産レパード、ゴリラ、警視庁捜査第8班の三菱スタリオン、ウルトラセブンのポインター号、帰ってきたウルトラマンのマットビハイクル、頭文字Dのハチロク、RX-7、ナイトライダーのナイト2000、バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアン、マッドマックスのインターセプター……、などなど。挙げればキリがありません。

そう、「劇用車」の世界です。幼少期に憧れた劇用車を大人になってベース車両を手に入れ、忠実に再現して愛でる人たちも相当にディープです。可能な限りオリジナルの劇用車に近づけるべく、ナンバーも再現。なかには完コピを目指して劇用車と同じ管轄のナンバーを手に入れるべく引っ越しまでしてしまうマニアも実在します。クルマ関連のイベントに参加することもあり、運が良ければ実車を観ることもできるので、そのすさまじいまでのこだわりっぷりをこの眼で確かめてみてください。
側から見た底なし沼もハマってみたら幸せかも
ポルシェ沼
ポルシェの世界も一歩間違える(?)と強烈な「沼」にハマリがち。当然「底なし沼」です。なかでも特にディープな世界といえば、タイプ993型の911まで搭載されていた空冷エンジンこそが至高と信じてやまない人たち。性能的には現代のポルシェのほうがあきらかに優れているのは百も承知でも、独得のフィーリングに強いシンパシーをいだいている人も少なくありません。

そして、さらに厄介なのが、ポルシェにとって象徴ともいえる911のモデル名。車名は911でも型式は930だったり964だったり、997の次が991で現行は992? オーナーやポルシェ好き同士はあたりまえのように使いますが、数字がいったりきたりでややこしいことこの上ないのです。
911に限らず、頭のなかで「型式=ポルシェのモデル」がきちんと紐付いていれば、すでにかなりのポルシェマニアといえるでしょう。

フェラリスタ沼
カタログモデルでは飽き足らず、いわゆる「スペチアーレモデル」と呼ばれる限定車、スペシャルモデル狙いのフェラーリオーナーも少なからず存在します。しかし、ご存じのようにスペチアーレモデルは限定生産。

急にお金持ちになった一見客が入り込む余地など一切ありません。では、どうすれば「スペチアーレモデル」が手に入るのか? 欲しい・欲しくないにかかわらず、かたっぱしからニューモデルを購入し、並み居るライバルを蹴落として地道に優先順位をあげていく方法がひとつ。あとはプレミア価格であることを承知で並行車、あるいは中古車市場に流れてくるスペチアーレモデルを手に入れるという荒技もあります。
いずれにせよ、庶民にとってはめまいがするような大金を迷うことなくポンと支払える経済力は必須です。

まとめ:「底なし沼」に足を突っ込んでしまった愛すべき人たち
「沼」。それはまさに1度ハマるとなかなか抜け出せないディープな世界。終わりが見えない底なし沼であることも少なくありません。
ある人は欠品・製造廃止になった純正部品を入手するべく、ネットオークションで日夜「札束の殴り合い」を繰り広げ、そしてある人は争奪戦必至な限定モデルの存在に一喜一憂し、またさらにある人は雨天未使用を固く誓っていたのに出先でゲリラ豪雨に遭遇し、避難場所で身動きが取れなくなって半日立ち往生(路面が乾くまで待ったので)といった具合に、家族や友人はもちろんのこと、クルマ好きにも理解されないこともしばしば。
しかしポジティブ(?)に解釈すると、「底なし沼」というヤバイ世界に足を突っ込んでしまった愛すべき人たちは、それほどひとつの対象に心酔できるのは至極幸せだと皮肉を抜きにして思えるのです。