この記事をまとめると
■AT車の多くに装備されている「パドルシフト」■使うことでMTモデルのように好きなギヤを選ぶことができる
■使うことでのメリットとデメリットを解説
使い方は至極簡単! マスターすればより快適に走ることができる
ハンドルの左右についているレバーは、ウインカーやワイパーを操作するためのもの。では、同じくハンドルの左右についている、“耳たぶ”のようなものはなんでしょう? よく見ると「+」「ー」という表示があるものもあると思います。
これは、AT(CVTも含みます)車でシフト操作をするための「パドルシフト」というもの。
まず、パドルシフトは一般的に右手側でシフトアップ、左手側でシフトダウンができるものですが、シフトダウンのみドライバーの任意で操作でき、シフトアップはドライバーが操作しなくてもクルマが自動で行う、という設定が多くみられます。なかには2ペダルのスポーツカーなど、走りにこだわるモデルではシフトアップもドライバーの任意で行うものがあります。いずれも走行中に「今だ」と思ったらパドルシフトを指先で弾けばよいのですが、なかには走行モードの切り替えでノーマルモード(ATモード)からMTモード(スポーツモードなど)に変えてから、パドルシフトの操作が有効になるモデルもあるので、確認してみましょう。
では、どんな時にパドルシフトを使うのか。これは「自分の思い通りに減速したいとき」または「ブレーキペダルをあまり使わずに減速したいとき」が有効です。AT車のシフト制御は賢いので、ATモードにしていればパドルシフトを使わなくても、ある程度は思い通りに減速をしてくれます。ただし、右へ左へのカーブが頻繁に続くような道や、たとえばカーブの先でいきなり渋滞して前が詰まっていて、ブレーキだけでは間に合いそうにないとき。そんなときにはパドルシフトを指先でパンと弾いて、シフトダウンしつつブレーキペダルを踏んだほうが、ATに任せておくよりも思いどおりに、安全にクルマを操ることができると思います。
また、長い下り坂などでブレーキを多用したくない場合にも、パドルシフトを使うことで効果的に下ることができます。

そしてもうひとつ、パドルシフトを使うとMT車のように自分でクルマを操作している感覚が高まり、よりドライブが楽しくなることもメリットでしょう。ATに任せておくと、スポーツカーなどで体感できる「減速G」と呼ばれるものはなかなか体感できませんがカーブに進入する直前など、ここぞというところでパドルシフトを使えば、AT車でも減速Gが体感できてスポーティな気分が高まります。
たとえば、カーブの出口でいち早く加速したいときや、ETCレーン通過のために減速したあとで素早く加速したい、ATモードのままだと減速しがちな坂道をパワフルにのぼっていきたい、なんてシーンでパドルシフトが有効です。

機械任せよりも燃費を向上させることも可能だが……
さらに、タコメーターが常に見ることができるモデルなら、パドルシフトをうまく使ってエンジンの回転数を合わせることで、燃費がアップする運転も可能。ペダル操作だけで回転数を合わせるのはなかなか難しいのですが、パドルシフトを使うことで、回転数を高めに保ちながらアクセルペダルをオフにするという、燃料カット状態を頻繁に作り出すこともできますので、結果的に省燃費に貢献できるのです。ハイブリッド車や電気自動車では、パドルシフトで回生(普段は捨ててしまうエネルギーを電気として取り戻すこと)の強度が変えられるものがあり、より多くの電気エネルギーを貯めることで、電費アップや航続距離のアップにつなげることも可能です。

さて、それではデメリットとはなんでしょうか。まずパドルシフトはハンドルに手をかけたまま操作できるような設計になっていますが、手が小さい方は指が届きにくかったり、運転に慣れない方は指を1~2本離すだけでも不安になるかもしれません。無理に使えばハンドル操作がおろそかになることもありますので、あくまで運転に慣れてから徐々に使ってみるようにしましょう。

また、あまり回転数が高い時に大きくシフトダウンしてしまったり、頻繁にパドルシフトの操作を行うと、助手席や後席に乗っている人に不快な減速Gが発生し、気分が悪くなってしまうかもしれません。同乗者がいる時には、なるべくスムースな減速ができるように配慮したいものです。
さらに、道路状況に合わない使い方、無茶な使い方、不必要な場面での多用をすると、エンジンやトランスミッションへのダメージとなり、燃費悪化の原因にもなる可能性がありますので注意しましょう。

このように、うまく使えばメリットが多いパドルシフト。できそうなシーンからぜひ使ってみてくださいね。