この記事をまとめると
トヨタの新型センチュリーの価格は2500万円でターゲットは超富裕層となっている



■高級車の世界では価格に見合う高級感に加えて値落ちが少ないことも重要なポイント



■「センチュリー」としてのブレない販売方法は購入希望者の心をくすぐる



ライバルひしめく超高級SUVカテゴリーに参入したセンチュリー

2023年9月6日にトヨタから「新しいセンチュリー(通称センチュリーSUV)」が追加された、その価格は2500万円。ハンドメイドといってよい生産体制など、センチュリーの名に恥じないさまざまな匠の技術で作られている。とはいっても多様化する日本社会においては、価格に対する高級感など、その価値観については個々で判断がわかれることになるかもしれない。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは...の画像はこちら >>



新型センチュリーがPHEV(プラグインハイブリッド車)となるので、直接的なライバルとはいえないが、高級輸入ブランドで2500万円のSUVタイプモデルを探すと、アストンマーティンDBX、ベントレー・ベンテイガHEV(ハイブリッド車)あたりとなり、ポルシェ・カイエンEハイブリッドなら少し足すと2台買えることになる。また、マセラティ・レヴァンテもグレードによってはほぼ2500万円で2台買えることになる。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
アストンマーティンDBXのフロントスタイリング



新型センチュリーのような価格帯のターゲットカスタマーは、当然ながら超富裕層となる。ただし、価格に見合う高級感を持った仕上がりとなっていて自分の感性に合っているから「それでは」とスムースに買ってもらえるものでもないようだ。



メルセデス・ベンツBMWなど、誰でも知っているプレミアムブランドにおいても、投資という視点も重要な車種選びのポイントとなっている。つまり、そのクルマに乗っていてステイタスを感じるだけでなく、売却するときに「値落ちが少ない」というのも重要なセレクトポイントとなってくるケースも多いと聞く。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
メルセデス・マイバッハ GLS550のフロントスタイリング



新型センチュリーが価格にふさわしくないと言うつもりは毛頭ない。しかし、ニューカマーとなるので、レクサスブランドがかつて日本に初上陸したときもそうだが、ブランド力やステイタスというものは『高級ですよ』といえばすぐに高まるものではないし、作り手よりも乗り手が時間を重ねて作り出していくものと筆者は考えている(センチュリーのセダンタイプはすでに50年以上ラインアップされているが、オーナードライバーカーとしての認知はそれほど高くない)。



つまり、急に同価格帯の輸入車に興味のある人を惹きつけるには、モデルの魅力や話題性だけでは限界があることも事実と言いたいのである。



再販価値だけを考えれば、色違いでポルシェ・カイエンEハイブリッドを2台購入したほうがいいかもしれない(筆者とは縁の遠い世界のため、おそらく超富裕層のなかには維持費などにこだわらないという人もいるだろうという勝手な判断での話)。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
ポルシェ・カイエンS Eハイブリッド(3代目)の走行写真



本当の日本の高級SUV登場を待っていた人も多いはず

ただし、日本国内の販売現場でBEV(バッテリー電気自動車)の販売状況について聞くと、興味深い話を聞くことができた。



いまは日系ブランドのラインアップはかなり少なく、輸入ブランドのほうがラインアップは多くなっている。

しかし、だからといって日本車に乗っている人がBEVに乗りたいからといって、たとえばドイツ系ブランドのBEVに乗り換えるというと、そのような動きは目立っていないとのこと。かえって「日本車ユーザーの多くは日本メーカーからBEVが数多くラインアップされ、選択肢が増えるのを待っているようだ」との声も聞かれる。



つまり、『同じ2500万円なら新型センチュリーではなく、ベントレーを選ぶ』といった購買行動も、まったくないとは言わないが、あまり現実的な話ではないともいえるのだ。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
ベントレー・ベンテイガ S ハイブリッドのフロントスタイリング



新型センチュリーではなく、セダンタイプのセンチュリーの初代が登場したのは1967年。1965年に輸入自動車販売の完全自由化が行われており、アメリカ車を中心とした輸入大型セダンの本格的な国内販売を待ち構えるために、トヨタはまず2代目クラウンをベースにした「クラウン・エイト」を市場投入する。トヨタ以外の日系メーカーでも排気量2リッターオーバーの高級セダンを投入していた。そのなか、トヨタは今回の新型センチュリーのように、和のテイストをふんだんに盛り込んだ初代センチュリーをクラウン・エイトの後継モデルとして市場に送り出し、いまに至っている。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
トヨタ・センチュリー(初代)のフロントスタイリング



新型センチュリーは、そもそもアメリカや中国あたりの海外市場を強く意識しているのだろうが、日本国内では「ベンテイガみたいなクルマに乗りたいけど輸入車だからなぁ」というだけでなく、「レクサスもちょっと違う」といった日本車びいきの富裕層をターゲットにしているのかもしれない。



残念ながら日本国内でも貧富の差は拡大する一方となっており、超富裕層といっていい階層も今後ますます増えてくるだろう。そのような層を「みすみす超高級輸入ブランドにとられるよりは」という部分もあるのかもしれない。



新型センチュリーは「センチュリーマイスター」という専門スタッフのいるトヨタ系正規ディーラーでしか購入できないとはいうものの、全国津々浦々に販売窓口があるので、超高級輸入ブランドSUVではフォローできない富裕層の開拓にも適しているといえる。



輸入車も違うしレクサスもちょっと……じつは新型センチュリーは「ライバル不在」のクルマ! 「こんなクルマを待っていた」富裕層は多い
トヨタ新型センチュリーの2台並び



現場で話を聞くと、ある販売会社では、センチュリーマイスターは全社で2名しかいないとのこと。

そもそも販売台数が多くないこともあるが、大切に売っていきたいというトヨタの姿勢のようなものを感じる。



車名だけ拝借というのではなく、あくまで「センチュリー」としてのブレない販売体制は、購入を希望する人の心をくすぐるのも間違いないだろう。

編集部おすすめ