この記事をまとめると
■海外ではBEVの大型トラックが登場し始めている■日本でも商用車のBEV化を進めるためには充電の問題を解決しなければならない
■バッテリー交換式や走行しながらの充電などさまざまな研究が進んでいる
充電によって物流が停滞すれば本末転倒
メルセデス・ベンツ・トラックスが、一充電で500km走行できるとする大型トラックを発表した。米国では、テスラが800km走れる大型トラックを発表している。テスラ・セミも納車がはじまった。
日本では、乗用EV向けの高性能充電器の設置がはじまろうとしている段階であり、そこに大型トラックのEVが加われば、新たな充電網の構築を検討することになるだろう。ただし、すでに高速道路のサービスエリアなどでは、乗用車用の急速充電器を増やすことさえ、場所の確保に課題が出てきている。
先のジャパンモビリティショーでは、小型トラックとして、いすゞ、三菱ふそう、日野などがEVを出展し、なかには、バッテリー交換式の展示もあった。来年には、軽商用EVの発売が予定されており、乗用だけでなく商用のEVに、いかに充電し、物流を停滞させないかが喫緊の課題となっていくかもしれない。

しかし、ここで前提として考えるべきは、商用車は、乗用車に比べ一日の移動距離や行動範囲がある程度限定され、ほぼ同じような移動の仕方をする点である。したがって、既存の国道や高速道路などにまんべんなく充電拠点を設置するのではなく、物流の要となる場所や地域に重点的な基盤整備が必要になっていくだろう。
ホンダの「走行中に充電できる技術」に期待!
それに際し、乗用車と同様、商用EVも、基礎充電が最重要であることを忘れてはならない。基礎充電とは、自宅で充電することをいい、商用であれば自社の集積所や事業所の車庫を指す。出発地点であるそれらでまず満充電できる充電設備を設置することが大前提だ。商用EVの開発段階でも、それら日常的な行動範囲や距離を前提に、バッテリー容量を決めているはずだ。

また、総重量で積載量が決まる商用車の場合、余計なバッテリー容量は積載量を減らす懸念があるので、より厳密に設計されていくことになる。
物流拠点や立ち寄り先が限定的であれば、バッテリー交換という方法も視野に入るかもしれない。とはいえ、大型トラックは長距離移動が前提となるため、積載貨物の重さも含め、大容量バッテリーの見極めが欠かせない。大容量となればなるほど、充電時間が長くなることも知っておく必要がある。

そこで、本田技術研究所は、大型トレーラーのトラクターヘッドに、走行しながら充電できる機能を装備し、ガードレールの高さの給電ケーブルから充電する研究を進めている。これであれば、車両側に大容量バッテリーを積む必要がなく、充電のため長時間停車する必要もない。そして、左側の走行車線を走ることを促し、将来的な自動運転を活用した隊列走行も、適応可能になるのではないか。
世界のどのメーカーも検討していないホンダの技術が、長距離移動の物流における脱二酸化炭素を現実的に実現するかもしれない。
2040年までに新車販売をEVのみにするというホンダの姿勢は、乗用車だけでなく、商用(物流)の世界でも革命を起こすかもしれない。