この記事をまとめると
■日産が世界に誇るスポーツモデルといえば「GT-R」■現行型となるR35は2007年に登場
■日産R35 GT-Rについて詳しく解説
日産R35 GT-Rとは?
10月28日から開催された「ジャパンモビリティショー2023」の日産ブースでひときわ注目されたのがEVコンセプトカーの日産ハイパーフォース。
最大出力1000kWを発生するパワーユニットや電動駆動4輪制御システムを搭載する新世代のEVスポーツカーとして注目されたのはもちろん、そのデザインは次期GT-Rを示唆するものではないか……として非常に注目度の高いコンセプトカーでした。
それもそのはず、R35型日産GT-R(以下、R35 GT-R)が登場したのは2007年。
R35 GT-Rは、直6ツインターボエンジンが搭載されていたスカイラインGT-Rとは違い、3.8リッターV6ツインターボエンジンを採用(デビュー時の)。最高出力480馬力とパワフルなエンジンには独立型トランスアクスル4WDやデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせました。

デビューから度重なる改良が施されてきたR35 GT-Rの最新モデルは2024年モデル。
長年、販売が続けられるスポーツカーにとって大きなハードルとなる各種規制をクリアしてきた同車ですが、その前に立ちはだかったのが2022年9月以降に販売される車両に適応される「車外騒音規制」でした。
この規制に対して、2024年モデルはジェットエンジンに採用されているブレードを参考に排気管の形状を変更。そのほか、エンジンの制御やサイレンサーの最適化を行うことで2023年モデルからパワーを落とすことなく規制をクリアしています。

日産R35 GT-Rが開発された経緯
「平成12年排出ガス規制」の影響を受け、2002年に生産中止となったR34型スカイラインGT-R。この規制によりA80型トヨタ・スープラやFD3S型マツダRX-7なども生産中止に追い込まれていますが、日産はR34型の後継モデルの開発を考えていました。
ただ、正式に開発が決定したのが2003年。R35 GT-Rの初代開発主管兼チーフプロダクトスペシャリストの水野和敏氏に開発の全権を委任し、同氏は少数精鋭のチームを組み開発を進めていきます。
従来のGT-Rといえばスカイラインをベースに開発されていましたが、R35 GT-RはV35型スカイラインのFMパッケージを用いず、同車の大きな特徴となるプレミアムミッドシップパッケージを採用。

ただ、開発にあたってはV35型スカイラインのプラットフォームをプレミアムミッドシップパッケージへと改造してテストしたこともあったようです。
日産R35 GT-Rが人気な理由
2007年のデビューから国産スポーツカーの雄として高い人気を誇るR35 GT-R。その人気は国内にとどまらず、海外でも高い支持を集めていますが、その理由はいくつか考えられます。
まず、圧倒的なパフォーマンスを備えていること。ポルシェ911ターボなど、世界的なスポーツカーに負けない走行性能を誇ることは人気の理由のひとつであることは間違いありません。
また、デビューから改良が加えられパワーユニットや足まわりなど、世界トップレベルの性能を維持し続けていることや、直6エンジンこそ搭載していないものの丸形テールランプを装備するなど、スカイラインの流れを汲んでいることも支持される理由のひとつです。

個性的なエクステリアデザインも多くのファンを抱えています。
ただ、筆者が考えるもっとも大きな理由は、つくり手の意思がはっきりと形になっていること。
車両開発主管を努めた水野和敏氏、また2013年からチーフプロダクトスペシャリストに就任した田村宏志氏ともに明確なコンセプトを元にGT-Rを開発。両氏のコンセプトは異なる箇所もありますが、いずれも究極のドライビングプレジャーを備えたスポーツカーであることは間違いありません。
デビュー以来、ずっと最強レベルのスポーツカーとして君臨しているR35 GT-R。その人気は開発リーダーの思いを具体化していることにあると筆者は考えます。
日産R35 GT-Rのスペックは?
日本が誇るスポーツカー、R35 GT-Rの各種スペックは以下の通り。先程からお伝えしているようにデビューから16年経った同車は、各所に改良が加えられていますが、スペック上の変更で目立つのは全長が拡大したことと、エンジンの最高出力が高められたことです。
全長の拡大は2016年のビッグマイナーチェンジで最新の空力手法を盛り込んだことによるもの。
また、エンジンの出力も同マイナーチェンジで570馬力(NISMOは600馬力)まで出力が向上しています。

日産R35 GT-Rの特徴・魅力は? 何がすごいの?
プレミアムミッドシップパッケージ
R35 GT-Rの象徴ともいえるのがプレミアムミッドシップパッケージ。エンジンを通常より後ろに配置。重心点を前軸より後ろにし、デフと一体化したトランスミッションを後軸より前へ配置。それらをトランスファーで繋いだレイアウトとなります。

このレイアウトにより四輪の設置荷重が安定。最高時速が300km/hを超えるR35 GT-Rにふさわしい最適な前後重量配分を備えました。
また、トランスアクスルユニットは通常の車両と比べて低い位置(リヤホイールセンターより低い位置)に搭載。後軸上の重心位置を下げています。
3.8リッターV6ツインターボエンジン
エンジンはR35 GT-Rのために新設計されたVR38DETT型3.8リッターV6ツインターボエンジン。開発時は大排気量V8エンジンなども検討されたようですが、先ほどお伝えした重量配分を実現するため、V6エンジンをふたつのターボで過給することに決まったようです。
このエンジンには吸入空気を効率よくシリンダーへ送るためのツイン吸気システムや、ふたつのターボチャージャーのバランスを調整しながら過給するクロス過給システムなどを採用。

デビュー時の最高出力は480馬力。
また、エンジンは職人の手により1基をひとりが組み立てるのが特徴。基本設計に優れたエンジンだったことでデビューから同エンジンを現在まで改良しながら搭載し続けています。
完全独立型トランクアクスル4WD
R35 GT-Rの特徴のひとつがフロントにエンジンを搭載、リヤにクラッチとトランスミッション、独立型トランスファーを配置した完全独立型トランクアクスル4WD。
トルク変動による振動を受けやすいトランスアクスル方式ではなく、カーボン製プロペラシャフトを採用したことでトルクチューブを廃しトランスミッションを分離。完全独立型としたことでパワーユニットの振動を排除することができました。
前後サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式、リヤはマルチリンク式を搭載。V36型スカイライン用をベースに強化し、強度・剛性ともに高められています。
どのモデルにも似ていないデザイン
R34型スカイラインGT-Rの後を受けて登場したR35 GT-R。R34型まではスカイラインをベースにエアロパーツなどで武装していたことに対して、同車は新規車種。“GT-Rらしさ”を課題にデザインが決定ました。
国内外のデザインセンターを巻き込むグローバルスケッチコンペを開催するなどでデザインを模索。最終的に世界中で販売されるどのスポーツカーにも似ていないオリジナルデザインが完成しています。

フロントフェンダーの張り出しや特徴的なCピラーの折れ線など、個性的なエクステリアデザインはスカラインGT-RのDNAを備えつつもオリジナリティ満載。
2017年モデルから外観が変更されたR35 GT-Rですが、そのテーマとなったのは2014年に発表された2020ビジョン グランツーリスモでした。
同車はレースゲームソフト『グランツーリスモ』用にデザインされたコンセプトカー。マイナーチェンジで変更されたVモーショングリルなどのフロントマスクなどにコンセプトカーの影響を見て取れます。
日産R35 GT-Rの価格はいくら?
現在、販売されているR35 GT-Rのグレードと価格は以下の通り。デビュー時の標準モデルは777万円、もっとも高価なPremium editionでさえ834万7500円だったことを考えると、16年経った現在の価格は約2倍となりました。

まとめ
デビューから長い年月が経っているものの、いまだに世界第一級の性能を維持しているR35 GT-R。最新モデルとなる2024年モデルはグレードによっては手に入れることが難しいなど、高い人気を維持し続けています。
ぽつぽつと次期モデルの噂が出てきていますが、パワーユニットをはじめ現行モデルとは大きく異なるのは確実。GT-Rがどのように進化するのか、いまから楽しみでなりません。