この記事をまとめると
■クルマづくりの技術はスポーツ競技に生かされることも多い



■「空のF1」と評されたエアレースを日本の高級車ブランドがサポートしている



■さらにドイツ御三家やタイヤメーカー大手のブランドもスポーツ競技に関係していた



クルマ技術はスポーツの発展にも貢献している

クルマづくりのテクノロジーはさまざまな分野からフィードバックされていることもありますが、逆に他分野に活かされることも少なくありません。たとえば、日本が造る潜水艦はその静粛性にかけて他国を圧倒的に引き離しているのですが、そのキモはトヨタがクルマづくりで培った防振・防音技術にほかなりません。



また、軍需技術のようなハイエンドだけでなく、意外なことにスポーツ分野でもクルマに関するテクノロジーが活躍しています。



レクサス&エアレース

エアレースは空のF1とも称されていますから、クルマづくりと共通するところも少なくありません。となると、日本のエアレース第一人者、室屋義秀選手をレクサスがサポートしているというエピソードにも納得かと。



飛行機に! ボブスレーに! シューズに! クルマと「他スポー...の画像はこちら >>



とはいえ、やはり空と陸では勝手が大いに違い、レクサスのエアレース専業チーム「レクサス パスファインダー エアレーシング」も当初はだいぶ苦戦をしたようです。



まずは室屋選手が乗るレース機、Zivko Edge 540 V3の外装パーツをノーマルのウェットカーボンからドライカーボンに変更。いうまでもなく軽量化と、さらなる空力性能のアップを狙ったものですが、当初は機体とパーツの整合が取れずに大苦戦。これは、当初の機体からレースを経るごとに施されたマイナーチェンジが理由だったそうです。



また、機体各部にかかるトルクを計測し、最適化するという作業も困難を極めたそう。なにしろ、エアレースでは陸上と違ってかかる重力がけた違い! ここいらの計測技術もまたレクサスが腕を振るい、エンジンの各種情報を計測する技術開発でトライ&エラーを繰り返すなど、極限状態における機体のパフォーマンスを常に最高レベルで発揮できることになったとか。



飛行機に! ボブスレーに! シューズに! クルマと「他スポーツ」の切っても切れない関係
室屋選手が乗るレース用機体「Zivko Edge 540 V3」



そのほか、ヘッドアップディスプレイや日本刀の柄(つか)からヒントを得たという操縦桿のグリップなど、エアレース向けに開発された技術は数多くあり、またそれらのフィードバックがさらにクルマづくり(LC500特別仕様車 “AVIATION” とLC500特別仕様車 “EDGE” ともに完売)へと活かされたという好循環!



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レクサスLC500の特別仕様車 「AVIATION」



室屋選手はレクサスの手が入った機体で何度も優勝を飾っており、クルマのテクノロジーが大成功を収めた好例といえるでしょう。



ボブスレーにモータースポーツ部門を総動員したBMW

BMW&ボブスレー

BMWの本拠地であるミュンヘンは冬季オリンピックも開催されたウィンタースポーツの聖地でもあります。それゆえ、BMWが氷上の高速レースたるボブスレーにテクノロジーを提供するのも当然といえば当然かもしれません。



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BMWのロゴがプリントされたボブスレーのボディ



ボブスレーはコース設定にもよりますが、平均的に100km/h、最高速はじつに150km/hに至るという高速競技。となると、空力に関する技術をはじめ、滑走中のステアリング性能や車体剛性などBMWにとっては得意分野に違いありません。



実際の開発は空洞トンネルを駆使したボディの徹底的な空力性能のアップと、ボブスレーコースで受ける強力なGの解析&対策、そして乗員2名を含めたエルゴノミクスなど多岐にわたっており、乗用車部門はもちろん、モータースポーツ部門まで総動員がなされたとのこと。



さらに、BMWはボブスレー選手のスパイクシューズまで開発しています。同競技は選手が氷上を駆けて最初の加速を得るので、この初動こそ勝負のわかれ目。そこで、通常はシューズの裏にピンが固定されていたものを、BMWは交換式スパイクシートを開発。これによって選手ごとにスパイクパターンのカスタムが容易になったばかりか、シューズごと使い捨てにもなりづらいというメリットを生み出したのです。



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BMWが開発したボブスレー選手のスパイクシューズ



ボブスレーやリュージュで苦戦が続く日本チームも、国内メーカーの協力で「氷上最速マシン」を手に入れてほしいものです。



ミシュラン&テニス

BMWがスパイクシューズを作ったなら、ミシュランはテニスシューズのアウトソールにテクノロジーを注ぎました。選ばれたシューズメーカーはフランスで1875年からラケット競技むけシューズを作っている名門「バボラ」で、路面(コート)とタイヤ(アウトソール)の摩擦というふたつの面をコントロールすることは、ミシュランのもっとも得意とするところ。



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フランスの名門テニス用品メーカー「バボラ」のテニスシューズにあるミシュランマン



タイヤは求められる性能によって決まったパターンや形状がありますが、アウトソールの場合も同様で、ミシュランはここに足の動きを取り入れることにしたそうです。シューズの内側はアウトソールがもっとも摩擦を受ける箇所であるため、パターンが密集。一方で、グリップだけを判断基準とせず、テニス特有の動き、とくに横方向の動きも考慮する必要があったとのこと。



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バボラのテニスシューズの様子



また、あるときは強力で即効性のあるグリップが必要でありつつ、あるときはスライドを可能にする程度の弱グリップも必要となるなど、まさにパフォーマンスのよし悪しはタイヤと共通していたのです。



むろん、ラバーのレシピ変更や、耐摩耗性といった面でもミシュランのテクノロジーが活用され、いまやバボラのシューズはほとんどがミシュランのアウトソールを採用しているとのこと。

こうしたコラボレーションがタイヤづくりへ再びフィードバックされていることはいうまでもなく、ミシュランはさらなる進化を遂げているというわけです。



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バボラのテニスシューズ



似たような例としては、ブリヂストンがゴルフシューズをラインアップしていますが、クルマ好きとしてはさらなる拡大を望みたいところ、ではありますね!

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