この記事をまとめると
■中国ではEV普及が大きく進んでいて電力逼迫への対策が急務となっている■中国は火力発電が多く安定した電力供給が今後さらに難しくなる可能性がある
■電力受給を踏まえた社会とEVとのバランスをどう取っていくのかが大きな課題
政策でEVを推進したものの安定した電力供給が最大の課題
ふと気がつけば、中国では日本を圧倒してEV(電気自動車)の普及が大きく進んでいる。果たして、電力の供給は足りるのだろうか?
話をいったん日本に振ると、日本では日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」が売れ筋。鳴り物入りで登場したトヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、そして「リーフ」での実績を踏まえて満を持して投入された日産「アリア」、さらには欧州メーカー各社のEVが日本にはあるものの、販売台数で見ればEV市場の主力という位置付けにはなっていない状況だ。
一方で、テスラについては、環境意識が高い、またはファッション感覚といった観点で新規需要が徐々に伸びている状況だ。
そうしたなか、日本でEV普及がさらに進んだ場合、電力供給は足りるのか、という課題がある。今年は7月から猛暑続きで、早くも電力逼迫が懸念されている。

そんなときに、多くの人がEVを充電したら、電力供給のバランスが崩れるのではないか? そうした課題に対して国は一昨年度から、分散型電源や電力系統との連携など、電力供給とEVをどうバランスさせるのかという観点での議論を本格化させているところだ。
今後は電力受給を踏まえた社会とEVのバランスを探る必要がある
では、話を中国に戻す。中国でも電力逼迫への対策が急務となっている。
日本貿易振興会(ジェトロ)が2023年4月に公開した中国現地情報によれば、2023年の中国の最大電力負荷は13億6000万kWを超える見通し。これは2022年と比べて、8000万kWの超過となる。
中国の場合、石炭発電が多く、最近では石炭そのものの受給バランスも課題となっているなど、地域によっては安定した電力供給が今後さらに難しくなる可能性があるようだ。

一方で、中国政府はこれまで国内でのEV普及に向けてさまざまな施策を打ち、一部ではEVの過剰供給が社会課題となっているものの、すでに多くのEVが市中に出まわっている状況だ。
中国政府のEV政策を振り返れば、2000年代後半から、バスやタクシーなど公共交通での需要拡大を中国全土の大都市および中都市で一気に進めた。

だが、同政策は道半ばで終了してしまい、その後は乗用EVに対する購入補助金(インセンティブ)や、乗用EVメーカーの製造拠点の建設等に伴う補助金などを拡充してきた。

また、2000年代から、EVを地域社会に組み込んだ、いわゆるスマートシティ構想が中国各地で検討されてきたが、こちらも道半ばで計画が頓挫したケースも少なくない。
中国はいま、不動産領域を含めた経済成長の鈍化が課題となっているなか、電力受給を踏まえた社会とEVとのバランスをどうとっていくのかが大きな課題となりそうだ。