この記事をまとめると
■フェラーリにはカタログモデルとは一線を画した「スペチアーレ」が存在する



■288GTOからはじまりどのモデルも卓越したパフォーマンスと希少価値を誇る



■2024年登場の最新スペチアーレ「F80」に至るまで常に頂点に君臨しつづけている



超高性能なクルマが揃うフェラーリのなかでも特別なモデル

フェラーリの究極のパフォーマンスを誇るモデル、通常のカタログモデルとは異なるシリーズとして、開発そして生産されるのが、一般的にはスペチアーレと呼ばれるモデルたちだ。



その系譜は、1984年に発表された「GTO」(288GTO)に始まり、1987年の「F40」、1995年の「F50」、さらに2002年には「エンツォ・フェラーリ」、2013年には「ラ・フェラーリ」が、そして2024年、最新のスペチアーレとして「F80」が誕生するに至っている。



スペチアーレの起源ともいえる288GTOは、当時のグループBの競技車両規定に従って開発されたモデルであると解説されるが、筆者はそのチーフエンジニアであったニコラ・マテラッツィ氏に、生前その開発の経緯を尋ねたことがある。



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それによれば、氏がエンツォ・フェラーリから指示されたのは、フェラーリの原点にあったようなモデル、すなわちレースカー(コンペティツィオーネ)とロードカー(ストラダーレ)の両方の性格をもつモデルを開発せよということだけであり、そのためにグループBという車両規定に注目したにすぎないという。



彼はまたこうも話を続けている。288GTOはフェラーリが初めてマーケティングを意識して開発したモデルであるのだとも。



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フェラーリ250GTOのインテリア



1987年に登場したF40は、その名前から想像できるとおり、フェラーリの創立40周年を祝したスペチアーレである。ミッドに搭載される2936ccのV型8気筒ツインターボエンジンは478馬力という高出力を発揮し、最高速の公称値は324km/hを記録。



生産期間中にエンツォ・フェラーリが没したことで、その人気はさらに高まり、一連のスペチアーレのなかでは最大の生産台数を記録した。



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フェラーリF40のフロントスタイリング



F40が1987年のデビューならば、それに続くF50はもちろん1997年に発表されているのだろうと思うと、それは違う。F50のデビューが意味するものはもちろんフェラーリの創立50周年記念モデルなのだが、それが発表されたのは1995年。



1995年に生産を開始し、最後の1台となる349台目を50周年の1997年に工場から出荷するというのがフェラーリの狙いだった。



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フェラーリF50のフロントスタイリング



これは当時、年々厳しさを増す排出ガス規制に、1997年時点でF50が適合することが難しいと判断されたため。その新規制以前にすべてのF50を売り切る必要があったのだ。



スペチアーレの系譜は現在に至るまで脈々と受け継がれている

続いて発表されたエンツォ・フェラーリは、フェラーリ設立55周年の2002年に誕生している。

生産台数はF50と同様に349台と当初は発表されていたが、後に50台を追加し、合計で399台が生産された(さらにオークション用に1台が追加生産されている)。



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エンツォ・フェラーリのフロントスタイリング



55周年という節目は歴史的にそれなりの節目ではあるものの、世界中のファンを驚かせたのはそのネーミング。創始者の名前をそのまま用いたことで、次期モデルにはどのようなネーミングが採用されるのか。それは2013年までさまざまな憶測を呼ぶことになったのである。



それまで「F150プロジェクト」、あるいは「ニュー・エンツォ」などと呼ばれていたそのニューモデルに正式な名前が掲げられたのは、2013年のジュネーブショーでのことだった。



「ラ・フェラーリ」。Laとは英語のTheに相当する定冠詞であり、これもまたエンツォと同様の説得力を持つ名前だ。2016年にはオープン仕様のアペルタも発表されるが、初めてF1マシンからの技術導入である運動エネルギー回生システム(HY-KERS)を搭載するなど、メカニズム面でもその進化は大きな話題となった。



こちらも499台の限定生産に、オークション用の1台が特別に生産されている。また車名に歴史的な意味合いはない。



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サーキットを走行するラ・フェラーリ



そして2024年に発表されたのがF80だ。車名のコンセプトはF50のそれと同じ、最後の1台は華々しくフェラーリが創立80周年を迎える2027年に、そのファクトリーから出荷されることになるだろう。



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フェラーリF80のフロントスタイリング



フェラーリのスペチアーレ。それはこれからも多くのカスタマーやファンの心を刺激して止まない存在であり続けるはずだ。

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