この記事をまとめると
■かつてスーパーカーは視界の悪さや重い操作系により簡単に運転できる代物ではなかった■現在ではパワーステアリングはもちろん2ペダルも当たり前になり格段に快適になっている
■運転の難易度をぐっと下げたスーパーカーとしてはフェラーリF355が挙げられる
スーパーカーを乗りこなすにはウデが要る……というのは過去の話
かつて、スーパーカーといえば、それは誰もが簡単に乗りこなすことができる乗り物ではなかったような気がする。そのエクステリアデザインは流麗でかつ美しく、見る者を魅了して止まないものの、その一方でキャビンからの視界は絶望的に限られたものだ。それに、クラッチやステアリングの重さ、さらには熱との戦いまでもが加わるのだから、スーパーカーを日常的に使おうなどというユーザーは珍しい存在だった。
それがいまではどうだろう。女性でも簡単にドライブできるスーパーカーが続々と誕生し、渋滞が激しい都市部の街なかでもそれを見かけることは珍しくはなくなった。
その理由として考えられるのは、スーパーカーの扱いやすさが格段に向上したことだろう。もちろん、現在でもドライブすることを簡単に決断できないモデルもある。そもそもスーパーカーも、ほかのジャンルと同様にボディサイズは大型化する傾向にあるから、とくにそれぞれのメーカーがフラッグシップに位置づけるモデルや限定車などは、まだまだドライブ時の緊張感は大きいといえるのかもしれない。

ドライブのしやすさが際立っているのは、それらよりもコンパクトなモデルたちだ。現行モデルで例を挙げるのならば、フェラーリの296やランボルギーニのウラカン(こちらはすでに後継車のテメラリオがデビューを飾っているが)、マクラーレンにはアルトゥーラがある。

これらのモデルをドライブしてまず感じるのは、乗り心地の素晴らしさと優れた操作性。つまり、ドライブするために難しさというものを一切感じさせないのが第一の特長なのだ。
ステアリングにはいずれもパワーアシストが備わり、ミッションはデュアルクラッチの2ペダル。その利便性をスーパーカーユーザーがいつくらいから感じることができるようになったのだろうと、スーパーカーの歴史を遡ってみたら、一台のフェラーリに行きついた。

イージードライブなスーパーカーの先駆けはフェラーリだった
それは、1994年に発表されたF355である。

F355に採用された初期のF1ミッションは、シフトダウン時には点火時期調整が行われるのみのシンプルなメカニズムだったが、それでもユーザーがクラッチ操作から解放され、コーナリング時にはステアリングとブレーキの操作のみに専念できるようになったのは偉大な進化といえたのである。

そして、のちに同様のシステムは、スーパーカーの世界でスタンダードとなっていったことは誰もが知るとおりである。扱いやすいエンジン特性を与えたことや、さまざまな電子制御デバイスを与えてドライビングダイナミクスを追求してきたことも、近年のスーパーカーが運転しやすくなった理由のひとつだろう。
ランボルギーニに至っては、駆動方式の基本は4WD。これならばさらに理想的な駆動力配分を4輪で行うことができるのだから魅力は大きい。

スーパーカーはこれからますます乗りやすく、ラグジュアリーなプロダクトになっていくことだろう。そう確信させるだけのインプレッションを、現代のスーパーカーは必ずや感じさせてくれることは間違いない。