この記事をまとめると
■中国で「ロボタクシー」という自律型自動運転タクシーサービスの実証実験が始まる■アメリカのテスラ社も「ロボタクシー」を発表し今後市販も予定している
■日本では技術的に作れても法の壁が厚いので実現まで時間がかかることが課題だ
中国でもロボタクシーが始動!
報道によると、中国の検索エンジン大手でさまざまなデジタル系テクノロジーを手がける、「百度(バイドゥ)」系の「ロボタクシー」と呼ばれる無人の自律型自動運転タクシーサービスである、「Apollo Go(アポロ・ゴー)」が、香港にて2024年末までに空港を基点として実証実験を行うと報じている。ただし、当面は完全無人自律走行タクシーではなく、タクシー運行経験者が補助要員として乗車するようだ。
アポロ・ゴーはすでに中国国内では10都市以上で本格営業展開しており、湖北省武漢市では2024年末までには1000台のロボタクシー車両が街を走る予定になっているとのこと。
日本ではこのような「ロボタクシー」は、タクシー運転士不足解消の切り札として報道されることがある。しかし、諸外国、とくに中国とアメリカでは両国間で技術的なイニシアチブをとるために激しい開発競争を行い、さらにアメリカ国内、中国国内ではサービスを提供する企業間で主導権争いが行われている。そして、日本以外の諸外国でロボタクシーが注目されるのは、タクシーについて「安心・安全に利用できる公共交通機関」としての利便性を高めたいという目的のほうが大きいように見える。
迂回走行やメーター不正利用(そもそもメーターを入れたがらない)、女性への性犯罪などなど、とにかく諸外国におけるタクシーのイメージは、日本に比べてはるかに「物騒な乗りもの」となっている。
諸外国ではライドシェアタクシーサービスも普及しているが、その治安状況はシステム管理がより行き届いているぶんだけ、「タクシーよりマシかな」といったレベルともいわれている。「生身の人間が運転しているからトラブルになる」というロジックで開発されたかどうかは定かではないが、無人となるロボタクシーが普及すれば、いままでのタクシーに対するイメージは、諸外国において劇的な変化を見せるのは間違いない。

日本ではスーパーやコンビニではセルフレジが普及し、ファミリーレストランではセルフレジだけではなく、テーブルごとにタブレットでの注文、ネコ型配膳ロボットによる料理の配膳と「無人化」が進んでいる。店内にスタッフはいるものの、調理と食事後の後片付け程度に作業が集約されているともいえる。この勢いでタクシーもロボタクシー化が進むのかなぁ……と思えるのだが、そこには諸外国とは異なり、日本ではさまざまな規制が立ちふさがることになる。
技術的には作れても日本の法の壁は厚い
前述したように、中国やアメリカではタクシーとして、自律走行するロボタクシーのシステムを開発している企業が主導的に実証実験運行や営業運行を行っている。しかし日本では、「日本型ライドシェアサービス」を見てもそのような流れにはなっていない。

2024年10月10日にテスラは、アメリカ・カリフォルニア州にてサイバーキャブを発表した。これについてのある報道を見ていたら、有識者が「個人でこの車両を購入し、普段は自家用車として移動に活用し、使わないときはロボタクシーとして走行させることも可能」と説明していた。ちなみにサイバーキャブには、運転操作に必要なステアリングやペダル類は用意されない。

ただ、席上で既販車となるテスラのモデル3とモデルYに、カリフォルニア州とテキサス州にある車両から2025年より完全自動運転可能なシステムを搭載して販売するとも発表していた。日本では技術やオペレーション面で問題がなくとも、さまざまな規制により、このようなことまで実現可能とするには相当な時間を要することになるだろう。
運転士不足による減便や路線廃止が目立ち、タクシーより働き手不足が深刻なバス業界(一般路線バス)では、日本でも自動運転バスの実証実験はタクシーに比べると進んでいるといえよう。これは政府も公共輸送機関としてのバスの現状を憂慮し、さまざまな規制を順次緩和しているからこそのものとも考えられる。

政府の肝入りもあり、特定技能で在留資格を取得した外国人を運転士として雇用可能となり、業界としてはまず外国人運転士の積極雇用を進めることで働き手不足解消を試みようとしており、次年度からは各地で外国人が運転するバスやタクシーが街なかで目立つことになりそうだ。
ただ、「外国人だから」というつもりはないが、日本人と価値観や育った環境の違いから乗客とのトラブル発生にどのように対処していくかは課題となってくるだろう。
日本は世界に冠たる自動車生産国であるし、ロボタクシー開発についてはなんら心配する必要はないだろう。ただ、ロボタクシーはいままでにない価値観で生み出される新たなサービスでもあるので、とくにさまざまな規制がいまだに多いとされる日本では、技術開発と同時に規制緩和というものも進める必要がある点では、諸外国に遅れをとりやすいともいえる。