この記事をまとめると
■日本では初年度登録から3年、以後2年ごとに車検が義務づけられている■車検制度自体はあるが義務化されていない欧米には車検がないと誤解されている
■クルマの変革期には車検制度の在り方も見直すことが求められるかもしれない
日本では義務化されている車検
車検で一般によく話題になるのは、継続検査だ。初年度登録から3年目が初回で、以後2年ごとに実施する義務がある。
そのほか、そもそも新車登録をする際に、道路運送車両法の保安基準に適合しているかどうか検査することで、はじめて公道を走ることができ、顧客に納車が叶う。
さらに、クルマを改造した場合も、道路運送車両法の保安基準に適合しているかどうかの確認が必要で、構造等変更検査を受ける必要がある。たとえば、エンジン車を電気自動車(EV)に改造したような場合も検査を受けなければならない。そして、新たな車検証が発行される。
とはいえ、クルマの所有者が普段から気にかけるのは、継続検査だ。
海外には車検がないとの話もある。調べると、欧州各国には車検制度自体はある。ただし、日本のように義務化されているわけではないようだ。米国では、州によって規則が変わるが、基本的には車検に該当する制度を設けている。ただし、やはり義務化されてはいない。したがって、海外には車検はないと認識されがちだ。

ではなぜ、日本は車検が義務化されているのだろう。

別の視点では、日本の暮らしの一般的な感覚に、いまなお「お上に任せておけば」という、行政依存の体質があるのではないか。
対する欧米は、自己責任の意識が浸透している。製造者責任の不具合以外、故障に対し、普段からクルマの調子に気を付けていなかった所有者や利用者の責任と考えられるだろう。しかも、それが原因で事故となり、ほかの人々に被害を及ぼすことになれば、社会的制裁が施される。
EV時代もこれまで同様の車検は必要か?
もちろん、日本においても、被害者対応として損害保険制度があり、なおかつ車検の際に更新すべき要素として、自動車損害賠償責任保険(通称、自賠責保険)の加入が義務付けられている。これは、被害者保護の観点で定められている。

日常的に、クルマの所有者や利用者自身でクルマの調子に気を配っている人はどれほどいるだろう。タイヤの空気圧はもちろん、タイヤの溝の深ささえ気にかけていないと思われるクルマが走っているのを見かける。そうした多くのクルマを対象に考えれば、車検という期限をきっかけに、クルマが安全に走行できるか確認することも悪くはない。

一方で、クルマが走行に適した状態であるかどうかは、歳月だけでなく、走行距離によって大きな差があるはずだ。
ただし、走行距離が少なくても、経年変化によって整備や交換が必要な箇所もクルマにはある。

そのうえで、電気自動車(EV)が普及すると、整備項目が減るといわれ、それに従えば、EVについては車検時期をもっと伸ばしても差し支えないかもしれない。
クルマの変革期には、単に新車の機構や性能、あるいは充電器といった社会基盤の整備にとどまらず、車検の在り方も見直すことが求められることになるかもしれない。