この記事をまとめると
■2024年12月単月の車名別新車販売ランキングでトヨタ・ヤリスがトップになった■ホンダN-BOXは「新車販売台数第1位」を堅持するがパワーダウン傾向が目立っている
■2024年の新車販売では後半になるにつれて「トヨタ一強」状態に拍車がかかった
N-BOXの勢いが相変わらず弱め
12月は例年暦年締め(1月から12月)での年間新車販売台数の最終追い込み時期となっている。
とくに軽自動車は新規にナンバープレートを取得する際には、地域によっては車庫証明が必要なかったり、必要であっても事後申請となり(即日発行される)、ギリギリまで熱心な販売促進活動が続いている。
流れとしては、登録車だと「車庫証明の申請」となるが、軽自動車では「車庫証明の届け出」となるので、登録車とは登録の勝手が異なるのだ。
全般的に軽自動車に勢いがあるのが12月なのだが、自販連(日本自動車販売協会連合会/登録車)、全軽自協(全国軽自動車協会連合会/軽自動車)それぞれから発表された、2024年12月単月の車名(通称名)別新車販売ランキングを合算すると、販売トップは軽自動車ではなく、登録車のトヨタ・ヤリスとなっている。ちなみにヤリスがN-BOXを抜き去りトップとなったのは、2024年10月から3カ月連続となっている。
ヤリスが販売トップを獲ろうと無理をした(自社登録を多発)ということもなく、10月から12月の各単月締め販売台数は、前年同期比で若干プラス程度に推移している現状がある。N-BOXは2023年10月に現行モデルが正式発売となっているのだが、それ以降、節目(暦年締め年間新車販売台数など)には「新車販売台数第一位」を堅持しているのだが、とにかく先代に比べるとパワーダウン傾向が目立っているのが実情だ。
そのなか、2024事業年度(2024年4月から2025年3月)締めでの上半期末(2024年9月)にN-BOXは、軽自動車のみで2位となるスペーシアや登録車ヤリスに1万台ほど差をつける、2.4万台強を販売している。この実績も功を奏して、N-BOXは2024事業年度締め上半期新車販売台数で1位になったのだが、この「頑張り」が10月以降の販売の勢いを弱めることとなり、ヤリスに抜かれるようになってしまったものと考えている。

9月の2.4万台強がすべてエンドユーザー、つまり一般消費者の意志によりN-BOXを購入していればまだいいのだが、かなりの割合で自社届け出(販売台数上積みなどを狙い、ディーラー名義などでナンバープレートだけをつけること)が行われ、自社届け出車両が「届け出済み未使用軽中古車」として流通するようになり、本来新車で買おうと思っていた人が、未使用中古車に走り新車販売の勢いを減退させているとも筆者は考えている。
前年となる2023年12月は軽自動車のみのランキングで2位のスズキ・スペーシアに8000台ほど差をつけN-BOXがトップとなっているが、2024年12月における2位スペーシアとの差は2300台ほどに差が縮まっている。また、2023年12月比でN-BOXは75.4%なのに、スペーシアは113.1%となっている。両車ともほぼ同時期に現行型が発売となっているだけに、明暗がわかれているともいえよう。

「日本で一番売れているクルマ」という地位は年間や半期締めなどでは依然として揺るがないものとなっているが、その実状はかなりパワーダウンが目立っているのは間違いないようだ。
未使用中古車が勝負のカギか
登録車のみでの上位10車中7車がトヨタ車となっている。とくに注目すべきはアルファードが7581台で3位となっているところ。アルファード&ヴェルファイアは2024年12月20日にPHEV(プラグインハイブリッド車)の追加と、新グレード追加、さらに一部改良を行っている。11月にはアルファードは約8800台を売っているのでとくに多いというわけではないが、改良モデルが販売台数に貢献しているというわけでもなさそうだ。

改良前モデルのバックオーダー処理を引き続き進めた結果、改良月でもランキング3位になるほどの実績を残したのかもしれない。アルファードは2024年は通年で原則新規受注停止が販売現場では続いていた。基本的にはバックオーダー処理のために生産が続けられ、それが納車されることで毎月の販売台数ランキングの上位常連となるのだから、その人気の高さはまさに「信じられないレベル」といっていいだろう。
インドからの完成車輸入モデル同士の争いはホンダWR-Vが2903台でスズキ・フロンクスに勝っている。しかし、ここのところWR-Vは中古車展示場に登録済み未使用中古車をよく見かけるようになった。正月の新聞に入っていた、未使用中古車専売店の折り込みチラシにも目玉車として2台が掲載されていたほど。フロンクスは委託販売車(ナンバープレートのついていない新車)が展示されているのを見かけたことはあるが、筆者は未使用中古車を見たことはまだない。

軽自動車では、ダイハツが全般的に元気のないなか、「ムーヴ・キャンバス」が前年比131.4%でひとり元気な様子を見せている。

さらに、日産サクラの「息切れ」ともいえる目立つ失速も印象的である。前年同期比60.6%となっており、「ほしい人が買いつくした」ともいえる。2024年秋以降は中古車の流通台数も急速に増えている。購入時に補助金交付を受けていれば4年間は転売できないのが原則なのだが、未経過日数相当額の補助金相当額を還付すれば転売は可能なので、還付する額がある意味「採算分岐点」となり、サクラからほかのモデル(日産車ならばノートなどeパワー車が多いようだ)への乗り換えが目立っているように見える。
所有者の意志というものもあるだろうが、4年後では再販価値の値下がりが酷くなる危険が高いので、新車として販売したセールスマンが、短期間での乗り換えを勧めているといった動きも目立っているのかもしれない。

自販連統計における車名(通称名)別販売ランキングではヤリスが販売トップとなっているが、テレビCMなどで「ノートがコンパクトカー販売台数第1位」というキャッチを聞いて「?」と思った人もいるかもしれない。
これは販売ランキングにおけるヤリスにはヤリスクロスも含まれているため。5ナンバー車のみ、つまり標準車のハッチバックのヤリスのみだと5920台なので、2024年12月単月締めで見ても、ノート(オーラ含む)の販売台数は6476台となり、ヤリスクロスを除くとコンパクトカーではノートが販売台数第1位といえるのである。

2024年12月単月締めが発表となり、改めて2024年の単月締め新車販売ランキングの推移をみると、登録車では年後半になるにつれ、「トヨタ一強」状態に拍車がかかり、軽自動車ではN-BOXが販売トップの地位死守に終始した1年だったといえるかもしれない。