今回の目的は自動運転の技術を開発するため

トヨタスズキがお互いに株式を取得、資本提携を発表した。すでに2016年10月には業務提携に向けて動き出していた上、2019年3月にはトヨタからスズキへハイブリッド技術を供給すること、逆にスズキからトヨタへはインドやアフリカ市場においてOEM供給するといった協力内容が発表されている。電気自動車の分野ではトヨタやマツダが設立した「EV C.A. Spirit」という電気自動車のコモンアーキテクチャの共同開発会社に、スズキも加わるなど協力関係が密になっていたので驚きはない。



今回の資本提携では主に『自動運転分野を含めた新たなフィールドでの協力を進めていくために、両社の長期的な提携関係の構築・推進を目指します』と発表されている。自動運転の軸となるAIであったり、空間センサーであったりという技術開発には莫大なコストがかかる。単にコスト負担軽減するだけでなく、開発費を確保することは自動運転の開発が加速するという点でもプラスになる。大変革期を迎えている自動車業界において、独立した企業が生き残りをかけるのは難しく、こうした提携は必要というのがビジネス的な見方でもある。

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とはいえ、スズキとトヨタにはそうしたビジネスライクな関係だけでなく、古くからのウエットな付き合いもあることが知られている。両社とも静岡県西部地区の「遠州」にルーツを持っている。

スズキが浜松に本社を置いているのは知られているところだが、トヨタの創業者である豊田佐吉氏の生家は、同じく遠州の湖西市にあるのだ(湖西にはスズキの工場もある)。



また、トヨタとスズキはともに自動織機のメーカーから自動車産業にシフトしたという点でも似たところがある。じつは自動織機の時代から両社の関係は深く、1950年には労働争議により資金繰りに苦しんだスズキをトヨタが援助したという過去もある。排ガス規制をクリアできないスズキの軽自動車のためにダイハツのエンジンを供給、スズキ・フロンテに搭載するといった風に助け舟を出しというのも有名なエピソードだ。スズキにとって二度の大きな危機をトヨタが救ったともいえる。

トヨタとスズキが資本提携を発表! ダイハツを子会社にもつトヨタがスズキと手を取り合う理由とは



過去に業務提携はあっても資本提携は初めて

こうして、トヨタとスズキ、豊田家と鈴木家は長年に渡って親密な関係を築いてきた。

その両社が、これまで協業に踏み切ってこなかったことのほうが不思議なくらいだが、それなりにドライな時期もあった。トヨタが軽自動車規格を廃止すべしという意思を見せた時期もあったくらいだ。同郷の創業家として親交はあっても、ビジネスは別というのが両社のスタンスと外からは見えていた。



しかし、自動運転やコネクテッドカー、シェアリングサービスに電動化など自動車業界の変革期において、ついに資本提携まで踏み込んで手を握ることになった。スズキとの協業において、トヨタの子会社であるダイハツとの軽自動車におけるすみ分けなども課題になると心配する向きもあるが、長年に渡って温めてきた仲である。じっくりと準備して提携したこともあり、そう簡単に破綻するようなことはないだろう。

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トヨタはスズキだけに限らず多くの国産メーカーと手を組んでいる。今回のメインテーマである「自動運転」については、その基本システムの開発が急がれている。自動運転システムはインフラそのものになる可能性もある。デファクトスタンダードを取ることができれば、グローバルに先行者利益を得ることも期待できる。大きな利益を得ることが期待できるからこそ資本提携が必要になったと考えることもできそうだ。



いずれにしても、トヨタを中心とした日本発の自動運転テクノロジーは、国産メーカー各社が生き残るためには必須といえる技術。

今回の資本提携は、その勢いを増すことだろう。



※記者会見の画像は2016年3月の業務提携への検討を発表したときのもの。