N-WGNの人気はデイズやN-BOXをも追い上げていく!
ホンダのスーパーハイト系軽自動車のN-BOXの人気はハンパじゃない。今、日本でもっとも売れているクルマであり、販売ランキング1位を更新中。2019年8月の軽乗用車のランキングでも、1万8282台と、2位の新車効果のあるダイハツ・タントの1万6838台を大きくリード。
しかし、同3位の日産デイズやN-BOXを追い上げているのが、ホンダの新型軽のN-WGNだ。デビューしたばかりの8月の販売台数は、いきなりランキング6位の6958台。それだけ見ると、N-BOXや同ジャンルのデイズの1万3432台に差をつけられている感じだが、前年比では驚愕の2635.6%!(前年同月が264台だったこともあるが)の販売台数なのである。発売直後ゆえ、納期に時間がかかるのも約7000台の理由かも知れず、今後、デイズはもちろん、N-BOXを追い上げる勢いなのは間違いなさそうである。
そんな新型N-WGNは、第二世代Nシリーズ、つまり現行N-BOXをベースに、ハイト系ワゴンに仕立てた、ホンダ渾身の1台。
プラットフォーム、NAとターボを用意するエンジン、CVTは基本的にN-BOX譲りだが、ジェイドRSやヴェゼルRSに採用されていたCVTのブレーキングによって減速制御を行うステップダウンシフト、リニアな加速感をもたらすGデザインシフト、新制御ロジックを取り入れたパワーステアリング、より安定方向に振ったアジャイルハンドリングアシスト、走行フリクションを低減するサイドフォースキャンセリングスプリング採用のフロントサスペンション、チルト機構に加え採用されたホンダ軽初のテレスコピックステアリング、ブレーキのコントロール性を高めるリンク式ペダルなど、軽自動車としてあり得ないような贅沢な技術をフル搭載しているのである。
さらに言えば、スペックだけでなく、走ってもすごいのが新型N-WGN。NAモデルでも十二分に実用的で、平たん路ならストレスフリーの動力性能を発揮してくれるし、ターボともなれば、フル乗車、登坂、高速走行もラクラクの実力さえ備えているのだ。

しかも、最新のホンダセンシングの充実ぶりも見事で、全グレードに標準装備! 夜間の歩行者の検知性能を高め、移動自転車にも対応する先進の自動ブレーキを搭載するとともに、ACC(アダプティブクルーズコントロール)は、軽自動車初採用となったN-BOXでは約30~115km/hの作動で渋滞追従もしなかったものが、N-WGNでは何とホンダの上級車を上まわる0~135km/hの作動かつ渋滞追従型が奢られているのである。

その作動もなかなかで、ACCによる減速からの再加速レスポンスは、NA、ターボともに、なんと、ACCの再加速がもっさりしすぎている!? ステップワゴンよりいいぐらいなのである。
とくにターボモデルで高速走行の機会の多いユーザーにとって、N-BOXをしのぐ商品力、先進運転支援機能を身につけたことは間違いなしである。ちなみに同ジャンルのデイズの場合、ACC+レーンキープに相当するプロパイロットはハイウェイスターのみにプロパイロットエディションとして設定。
N-BOXの欠点をつぶしにつぶしたN-WGN!
また、あまり知られていない先進装備が、ホンダ純正の対応ナビを装着することで、スマホ接続によるオペレーターサービスが利用できるのだ。デイズは専用通信機器搭載の専用ナビ装着で、スマホなしでオペレーターサービスを10年間無料で利用できるほか、ヘルプネット=SOSコールも用意されているというアドバンテージがあるものの、N-WGNでもオペレーターサービスが使える事実を知れば(スマホ利用者に限られるが)、コネクテッドサービスの面でそれほど大きな差にはなりにくい(ホンダにもヘルプネットの導入を期待したいが)。
加えて、走行性能もN-WGNはクラストップレベル、いや、下手なコンパクトカーをしのぐレベルにあると断言できる。上記の贅沢な技術によるものだけではなく、基本的なボディ剛性、足まわり剛性、フットワーク、エンジンのスムースさ&気持ち良さ、静粛性などで、デイズを凌(しの)ぐ部分も少なくない。

ターボモデル同士で比較すれば、日常的な微低速域での走りやすさはN-WGNが圧倒。デイズのターボモデルは、スマートシンプルハイブリッドのモーターアシストがあるにもかかわらず、ギクシャクしがちなのである。
N-BOXと比較すれば、より新しい設計、かつ、「N-BOXの欠点をつぶしにつぶした」というN-WGNにより優れた部分があって当然だ。当たり前のこととして、より低重心ゆえ、カーブやレーンチェンジ時のロール、姿勢変化は絶対的に小さく、より安心・安定した走りが可能。
そのため、サスペンションを固める必要がなく、乗り心地も上質そのもの。とくに標準車の14インチタイヤ装着車は、いつもの段差を乗り越えても、それがなくなったように感じられるほどマイルドで快適な乗り心地を、安心感ととともに味わせてくれるのだからびっくりである。
どうしても両側スライドドアが必要、というのでなければ、現時点でN-BOXよりN-WGNが優れている部分は少なくないのである。一例を挙げれば、ターボモデル限定の話にはなるものの、N-BOXターボで感じられる、乗用域の2000回転前後で発生する、持病とも言えるゴロゴロとした振動が、N-WGNではCVTのマップを書き換え、その領域をなるべく使わず走らせることで、ほぼ解消(症状はゼロではない)。

さらに、使い勝手面でもライバル、N-BOXを上まわる部分がある。その代表例が、2段ラックモードを基本とするラゲッジルーム。背の高いクルマのラゲッジは、フロアに荷物を積むと、上部の空間が無駄になることが多いのだが、N-WGNでは一般的かつ、N-BOX並みにフロアの低い(地上480mm)ローフロアモードに加え、耐荷重50kgのボードをセットすることで、スーパーマーケットのカートの高さに対応する、地上730mmの高さの上段ラゲッジが出現(フリード+と同じ考え方)。

その際、下段は荷物が外から見えないトランクとして活用でき、後席格納による、ビッグラゲッジモードと呼ばれる広大なフラットスペースまでアレンジできるのだから超便利。これが、アクセサリーの装着でなく、標準仕様でできるところにも、開発陣のアイディアの冴えが見て取れる。


もちろん、王者N-BOXがこのままで黙っているわけはなく、N-WGNに投入された上級技術、渋滞追従型ACCをマイナーチェンジのタイミングで取り入れてくることは必至。つまり新型N-WGNの登場で、デイズ、ワゴンR、ムーブといったライバルとだけでなく、N-BOXはもちろん、その上質極まる仕上がりから、コンパクトカーを含むホンダの身内をも巻き込む、これまでN-BOXの陰に隠れまくっていた苦節N-WGNの逆襲!? とも言える、下克上バトルの火ぶたが切られたということだ。