食品やゲーム機など同業メーカー共同開発の商品化はないに等しい
ホンダとGMがEV(電気自動車)プラットフォームで協業。メルセデスとBMWが自動運転技術を共同開発(その後、連携を破棄)。直近で、自動車メーカー同士がさまざま分野でタッグを組むとか組まないとか、ニュースがいろいろある。
一方、家電メーカーでパナソニックと東芝がとか、ゲームメーカーで任天堂とソニーが、といったライバル同士での共同開発や技術連携の話はゼロではないにしろ、あまり聞かない。ユニクロと無印良品、湖池屋とカルビー、マクドナルドとモスバーガーなど、衣料雑貨や食料品の業界でも、ライバルはライバルであり、新規開発は秘中であるのが普通であり協業は珍しい。
そう考えると、確かに自動車メーカー同士の関係は他業種の違うし、最近そうした話が一気に増えてきた印象がある。いったい、なぜか?
もっとも大きな理由は、開発から製造までのコストの高さだ。
一般的に、1車種を開発するトータルコストは数百億円レベルと言われる。また、年産生産能力が数十万台規模の製造工場の建設コストは数千億円規模に達する。大手メーカーになると、技術開発への投資は年間兆円規模に及ぶ。

こうした潜在的なコストを軽減するため、昔からOEM(相手先ブランド)製造という手法をとってきた。いわゆるバッジ替えだ。これは、家電や自転車の業界でも使われる経営手法だ。
今後も最先端技術の開発において協業が増える可能性大
だが、最近は電動パワートレインに関わる技術全般や、通信によるコネクティビティ技術をクラウドも含めてトータルで協業するといった、包括的な技術連携が増えた。
逆の見方をすれば、電動化、自動運転、コネクティビティなど、従来の自動車には無かった新たなる技術領域は、社会全体としてみると他社との連携を前提している。

例えば、自動運転向けの高精度三次元地図「ダイナミックマップ」を日系自動車メーカー各社が「協調領域」と呼び、同じテーブルで協議を進めた。自動運転では「協調と競争」という事業の区別を自動車メーカーは強く意識している。

また、自動車業界では事業を合併することなく、互いの強みを生かして協業するアライアンスという考え方もある。代表的な例は、ルノー日産三菱だ。

世界各地での、自動車業界の水面下での動きを見ていると……。今後数年以内に、ひと昔前ではまったく予想できなかったような「あっと驚く」ライバル同士が仲良く手を取り合う機会が増えそうな気がする。