性能によって対象車種を絞る必要がある!

エコカー減税として現在施行されているのは、重量税が対象である。重量税は、車検の際に徴収される国税だ。これに対し、自動車税は毎年5月の徴収される地方税である。

支払う側にとっては同じ税金であっても、徴収する側では国と自治体とに分かれている。



国の政策として環境性能の高いクルマの普及を促すため、重量税の徴収を電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、天然ガス車(NGV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、クリーンディーゼル車は免税とし、ハイブリッド車(HV)を含むガソリン車とLPG車は令和2年の燃費基準に比べた達成率で減税や免税となる。



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一方、自動車税は、重量税での免税対象車種についてはおおむね75%軽減となっており、HVを含むガソリン車とLPG車は令和2年の燃費基準に比べた達成率によって、おおむね50~75%の減税措置がとられている。新車購入後も、環境性能に優れるクルマを所有する人に対し、維持もしやすくするための措置だ。



そのなかで、国税である重量税のエコカー減税の延長について、政府と与党で見直しが検討されている。現状のエコカー減税は、来年4月までが期限だ。



税制改定に際して、クリーンディーゼル車への減税措置が国際的に通じなくなってきているとの見方がある。またハイブリッド車(HV)についても、性能によって対象車種を絞るべきだとの声もあるという。



一方で、軽油やガソリンの利用が減れば、原油の需要にも影響が出るとしている。また近年大柄のSUV(スポーツ多目的車)の人気が高まるなかで、燃費に優れるクリーンディーゼル車の販売が伸びていることを視野に、クリーンディーゼル車がエコカー減税対象車から外れることに懸念する声も上がっているようだ。



「エコカー減税」なのに「環境対策」になっていない! 税制改定で見直すべき「対象車種」とは



全般に税制というのは、国や自治体の財源として行政側が収支をみながら定めるものであり、本質論からすれば、必ずしも環境対応を重視した体系ではない側面がある。たとえば、EVやFCVは排出ガスを出さないのだから、免税措置が妥当だとしても、PHEVやクリーンディーゼルは排出ガスを出すクルマなので、免税というのはおかしい。

またこの2台のなかでも、PHEVは充電さえすれば排出ガスゼロのモーター走行ができる部分もあるので、PHEVとクリーンディーゼルではそこに差があってもいいはずだ。



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エコカー減税なのに環境対策になっていない!

そうしたなかで、EVやPHEVへの充電では、200Vの普通充電が基本であるにもかかわらず、国内では集合住宅にコンセントを設置しにくい状況が10年も解決されていない。この結果、ことにPHEVに関してはモーター走行の機会を減らすことにつながり、HVと同様の走りとなっている面も多々あるはずだ。それでも、PHEVとHVに税制の差があることは不公平である。



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こうした不自然な税制は、行政と自動車メーカー(あるいは自動車工業会など)との間でなんだかの話し合いがもたれ、EVやFCVを持たないメーカーに不利にならない制度が構築されてきたともいえる。それによって、輸入車も欧州で販売が落ちたクリーンディーゼル分を日本市場へ持ち込むといった状況が起こり、車格が上がりながら燃費が改善されることはあっても、大柄な車種が増えれば全体的な環境が改善されるわけではない。実際、近年再びスモッグが現われはじめている。



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税収確保と、国内自動車産業保護が第一で、次に環境対応へもある程度効果があるようにとしたのが現在の日本の自動車税制の姿であり、欧州や米国のカリフォルニア州など、あるいは中国のように、国が主導して環境保護をしようとする積極税制にはなっていない。



消費者も、いまを楽しむこともいいが、自らの子や孫の世代へ快適な環境を残す責任に目を向けた新車選びに役立てるうえでも、エコカー減税は、排ガスゼロの車種に絞って改訂されるべきだ。そのうえで、税制以外の充電設備など社会基盤整備への支援がより手厚くなっていくことが望まれる。

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