コロナ禍であってもSUV市場は販売が好調

最近は「SUVが売れている」といわれる。まず考えるべきは、SUVの定義が曖昧なことだ。たとえばスバルXVは、一般的にはSUVと認識されるが、基本部分はインプレッサスポーツと共通だ。

自販連(日本自動車販売連合会)が集計する登録台数も、XVはインプレッサに含まれている。



最近ではフィットやフリードも、クロスターと呼ばれるSUV風のグレードを用意している。フィットクロスターは、最低地上高(路面とボディのもっとも低い部分との間隔)を少し持ち上げて、フェンダーやボディの下まわりにブラックの樹脂パーツを装着した。そうなるとフィットクロスターも、基本的な商品特徴はXVに近い。XVはSUVで、フィットクロスターはフィットのグレードとはいい難い面がある。



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それでも自販連や各メーカーは、それぞれの基準や考え方に基づいて、SUVの売れ行きや販売構成比を算出している。



自販連によると、2019年には51万3996台のSUVが登録されたという。同年の小型/普通乗用車が282万1886台だから、SUV比率は約18%だ。ちなみに2016年におけるSUVの登録台数は37万4593台だから、自販連によると3年間で1.4倍に増えた。



2020年はコロナ禍の影響で国内販売は縮小したが、SUVはさらに伸びている。そうなると2020年のSUV比率は、約20%まで増えそうだ。



別のメーカーが集計したところでは、2000年代の中盤ごろ、小型/普通乗用車に占めるSUV比率は約7%だった。

それが今では自販連と同様に20%としているから、SUVが過去15年ほどの間で2倍以上に増えたことは間違いない。



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ちなみに小型/普通乗用車におけるほかのカテゴリーの販売比率は、ミニバンが20%少々で、コンパクトカーはもっとも多く40%近くを占める。つまり概算ではあるが「SUV+ミニバン+コンパクトカー=小型/普通乗用車の80%」と考えれば良いだろう。セダン、ワゴン、クーペは、残りの20%に含まれてしまう。



そして市場全体で見れば、約37%が軽自動車だから、セダンやクーペは極めて少ない。



これらのカテゴリーで、軽自動車とミニバンは基本的に日本国内の専売車種だ。海外では売らないため、メーカーも力を入れにくい。コンパクトカーは海外でも売られるが価格は安い。そうなるとSUVは、日本と海外の両方で売れ行きを伸ばせて、なおかつ高価格車も含まれる「美味しいカテゴリー」というわけだ。



SUVブームの次は何が来るのか

さらにいえば、セダン、ワゴン、クーペなどは、海外市場を含めてブームを一度経験している。今後復活するとは考えにくい。その意味でもSUVは、クルマのカテゴリーではブームを経験したことのない「最後の楽園」だから、ロールスロイスのような場違いのブランドまで群がっている。



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SUVが廃れたら、もはや「美味しいカテゴリー」はない。実用的なコンパクトカーが地味に売れるだけだ。いかに長い間、美味しい蜜を吸い続けられるかが重要課題になっている。



そこでフィット クロスターのようなライト感覚のSUVから、悪路向けのヘビーなジープ・ラングラーやランドローバー・ディフェンダー、豪華絢爛なロールスロイス・カリナンなど、多種多様のSUVが開発されている。今後も市場を開拓できる唯一のカテゴリーだから、車種が増えて売れ行きも伸びている。



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問題はSUVが廃れたあとの展開だ。もはや「美味しいカテゴリー」はなく、電気自動車が増えて自動運転も進み、小さな公共交通機関がネズミのように街なかを走り回る構図も考えられるが、ちょっと寂しい。SUVの次の一手を考えてみたい。自宅で過ごすお正月、クルマの将来に想いを馳せるのも楽しいでしょう。

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