部品メーカーが作ったクルマにも水平対向エンジンが搭載された
水平対向エンジンといえば、スバル、そしてポルシェのお家芸的なのは皆さん、ご存じだろう。低重心、そして左右対称といったメリットは水平対向ユニットならではのものだが、一方、メンテナンス性や燃費などのデメリットもあったりする。
それらを克服しつつ、現在の2社が看板技術としているわけだが、過去を振り返ると、スバルとポルシェ以外にもけっこうなモデルが水平対向エンジンを積んでいるのは、今の目からすると意外なところ。
1)トヨタ・スポーツ800
通称ヨタハチも水平対向エンジンを積んでいた。ベースとなったパブリカ譲りのもので790ccの水平対向2気筒は、45馬力を発生した。しかも空冷でバタバタという乾いた音が印象的だった。2U型と呼ばれるこのエンジンはトラックのミニエースにも積まれていた。
2)ジャイアントコニー、コニー360
日産系部品メーカーである愛知機械工業が1962年に発売した、独自開発の軽商用車がコニー360で、その先代となるのが1959年登場のジャイアントコニーだ。前者のほうがまずまず売れたが、結局は続かず、自動車開発自体から撤退してしまった(生産はバネットやセレナなどを受託)。

こちらに積まれていたのが360ccの水平対向2気筒で空冷。ルーツは3輪トラックとなるユニットだ。出力は18.5馬力しかなかったが、軽量なこともあってまずまずの性能だった。商用車に使用するとフロアができるだけフラットになるなどのメリットはあって、このコニーではさらにドライサンプを使用していた。

輸入車でもポルシェ以外のモデルに採用されていた
3)RA100P/900P
聞き慣れない車名だが、こちらは1960年代に登場した日野のバス。こちらに積まれていたのが、DS120型、DS140型の水平対向エンジンで、なんと12気筒だった。もちろんディーゼルである。

もともとは直6をふたつ抱き合わせにして作られているのも面白いところ。

4)アルファスッド
アルファロメオが公社だった時代、イタリアの南部で作られたモデルだ。スッドとは南の意味となる。こちらはスバルに影響を受けたとされ(実際はないようだが)、水平対向エンジンだけでなく、インボードディスクブレーキなどを採用していた。1.2リッターから1.7リッターまでの小排気量が用意され、その後、33や145にも受け継がれた。実際に乗ったことがあるが、イタ車らしい、ビンビン回る高回転型でスバルやポルシェとはまた違った味付けだった。

5)シトロエン2CV
シトロエンも水平対向に力を入れていたメーカーのひとつ。2CVから始まって、アミやGSなどに積まれていた。2CVの場合は、空冷の2気筒で、パタパタという音が印象的だった。その後のGSでは空冷のまま、4気筒となっている。こちらもスバルの影響を受けているという説があるが、2CVからの系譜を考えるとそれもないだろう。

6)フォルクスワーゲン・ビートル
こちらはポルシェのルーツとなるだけに、水平対向というのは当たり前ではある。タイプ1と呼ばれるビートル、その後継車であるタイプ3。バンやバスのタイプ2と、フォルクスワーゲンのいち時代を支えたエンジンと言っていい。

以上、見た以外にもBMWのオートバイは定番的に搭載しているし、日本でも過去には何台かのバイクに積まれていた。なかなかクセのあるエンジンだけに、今後は増える可能性は低いのが少々さびしいところだ。