最小限の開発費で大きなリターンを目指す

公式な自動車用語ではないが「兄弟車」、「姉妹車」といった表現は古くから使われている。振り返れば、かつては兄弟車という表記を見かけることが多く、近年は姉妹車という言葉が使われることが増えているように感じるが、もしかするとフランス語では自動車は女性名詞であったり、英語圏ではクルマのことを“She”と呼んだりすることの影響を受けて、こうした変化が生まれてきたのかもしれない。



それはさておき、兄弟車・姉妹車というのは主にメカニズムが共通しているクルマを指している。

そのなかにもいくつかのパターンがある。



もっともわかりやすいのはトヨタのミニバン「アルファード/ヴェルファイア」、「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」のような同じメーカーが販売しているパターンだ。この場合、メカニズムは基本的に同じで、ヘッドライトやグリル、バンパーといった部分で差をつけている。逆にいうと、ボディは完全に共通となっている。これは、ひとつのモデルの開発リソースでバリエーションを増やそうというのが狙いだ。



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もう一つトヨタの例でいうと、トヨタGRスープラとBMW Z4、トヨタGR86とスバルBRZのように異なるメーカーで基本メカニズムを共有するパターンもある。このケースでもボディ形状から異なる(スープラはクーペ、Z4はオープン)場合もあれば、GR86/BRZのように外観ではフロントバンパーとヘッドライトが異なる程度の差別化にとどめ、走りを左右するシャシーセッティングを別物としている場合もある。異なるメーカーで開発費を負担し合うことで、そもそもスケールの期待できないスポーツカーというジャンルで利益を出そうというのが、この手の兄弟車・姉妹車の生まれる理由だ。



かつては多かったが最近は「少子化」傾向! 「兄弟車」って何?



そのほか、複数のブランドを持つアライアンスやグループでも開発リソースの最適化という点からプラットフォームやパワートレインを共通化することで生まれる兄弟車・姉妹車は多く存在している。わかりやすいのは欧州系ブランドで、フォルクスワーゲン・ゴルフとアウディA3はプラットフォームが共通の兄弟関係にあることはよく知られているだろう。ほかにもプジョー/シトロエンにも同様の関係にあるモデルが存在している。国産でいえば、アライアンスを組む日産三菱自動車の軽自動車については共同開発で基本メカニズムを共通化しながら内外装の仕立てで差別化することでリソースの最適化を狙っている。



いずれにしても、利益を最大化することが兄弟車・姉妹車が生まれる根本的な理由だ。



同ブランド内の兄弟車・姉妹車は減っている

とはいえ、兄弟車・姉妹車にもトレンドがある。現時点で増えているのは、トヨタとスバルが共同でGR86/BRZを開発したパターンや、フォルクスワーゲンがグループ内で開発リソースを最適配分するようなパターンだ。これは自動車業界100年に一度の大変革期と呼ばれるなかで、各ブランドが生き残るための策でもある。



逆に減っているのが、アルファード/ヴェルファイアのような同一ブランド内における兄弟車・姉妹車だ。この場合、リソースの効率化とは逆の意味合いがあるからだ。



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そもそも、こうした車種が必要だったのはトヨタの販売チャネルが複数あり、それぞれで異なるモデルを扱うというビジネスモデルだったゆえだ。しかし、すでにトヨタの各販売店では全モデルを取り扱うようになっている。販売チャネルに合わせて異なるモデルを生み出す必要はないのだ。コンパクトなスライドドアモデルはルーミーとタンクという兄弟車・姉妹車についてはルーミーに統合された。現在は複数モデルが用意されているミニバン系についても遠からず一つのモデルに統合されるだろう。



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さて、ここまで「OEM車」については兄弟車・姉妹車の中には含まずに話を進めてきた。

一般にOEM供給というのはダイハツの軽自動車をトヨタのピクシス・ブランドで展開しているケースや、スズキの軽自動車をマツダ・ブランドで販売しているケースを指す。



OEM車の場合、どこが兄弟車・姉妹車と違うのかといえば、そもそもの企画段階でパートナーとなる企業が関わっていないことが多い点が異なる。GR86/BRZの場合は、主な開発と生産はスバルの担当だが、トヨタのデザイナーなどがスバルに常駐して開発を進めたという。OEMの場合は、そうしたエンジニアやデザイナーレベルでの交流はほとんどない場合が大半だ。なかには商品開発の段階ではOEM供給する予定がないこともあるほどだ。そうした事情が兄弟車・姉妹車とOEM車を区別するポイントとなるが、外野からはわかりづらいのも、また事実だ。

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