この記事をまとめると
■時代とともに言葉が変わるように車名やブランド名の呼称も変わっている■外国語を日本語表記していたものが日本法人設立でその表記に統一される例が多い
■かつての呼称に懐かしさを感じることも多いが、今となっては野暮ったさも感じる
人気漫画のルビが日本独特の呼称の発祥だった例も
言葉というのは時代によって変わるもの。ブルゾンをジャンパーと呼ぶのはオジサンだし、ズボンはパンツ、チャック→ファスナー、営団(地下鉄)→東京メトロ、背広→スーツ、クーラー→エアコン……。
クルマ用語でも節目節目で呼称が変わったモノがいくつかある。
1)ベーエムベー・ベンベ・ベーンヴェー → ビーエムダブリュー
池沢さとし先生の名作「サーキットの狼」では、「BMW」に「べーエムベー」とふりがなが振ってあった。
以来スーパーカー少年達は、BMW=「べーエムベー」と呼んでいたわけだが、1981年にドイツBMW社の完全子会社としてビー・エム・ダブリュー株式会社(BMWジャパン)が設立されて以降、「ビーエムダブリュー」が広まっていった。
2)ムスタング → マスタング
フォードのマッスルカー、「ムスタング」もいつの間にか「マスタング」と呼ばれるようになった。1970年代の2代目ムスタング、「マッハ1」の頃までは、間違いなく「ムスタング」が主流だった。

潮目が変わってきたのは、1980年前後、4代目の頃から。1981年にマツダとフォードが共同で、フォード車の販売会社「株式会社オートラマ」を設立した頃からだと記憶している。
「MUSTANG」とは北アメリカ大陸で野性化した馬の名称で、第二次世界大戦後期に活躍したノースアメリカンのP-51戦闘機も「ムスタング」。この飛行機の方は、いまでも「ムスタング」と呼んでいる人のほうが多いのでは?
3)アーマーゲー → エーエムジー
ベンツのエンジン・車両をベースにした独立系チューナー、レース系ブランドで知られていたAMG。

1980年代には三菱と組んで、デボネアAMGやギャランAMGのチューニングも担当。

かつては「アーマーゲー」と呼ばれていたが、1987年にヤナセが子会社として「エーエムジー・ジャパン」を設立。正規輸入元の名称が「エーエムジー」になったため、広告その他も「エーエムジー」と表記されるようになり定着していった。
呼称の変化でスマートなイメージになることもあった
4)ベンツ? メルセデス?
故 徳大寺有恒先生は、「メルツェデス」と表記されていたが、一般的にはベンツの車は「ベンツ」と呼ばれているはず。
しかし、F1などのモータースポーツでは、「ベンツ」といわず「メルセデス」と呼ぶ例が多い。

1988年にWSPCで活躍していたザウバーと組んで、チームをワークス化したときに、「チーム・ザウバー・メルセデス」を名乗ったのが原点で、そのザウバー・メルセデスは、1989年のル・マンで見事優勝している。
5)タイレル → ティレル
今年もレッドブル ホンダと熾烈なチャンピオン争いを繰り広げ、現行のハイブリッドPUになってからは2014年から連続でタイトルを確得し続けているメルセデスAMG F1。このチームのルーツを溯っていくと、メルセデスAMG F1→ブラウンGP→ホンダF1→B・A・R、そしてティレルにたどり着く。
ティレルというと、6輪のF1マシン、P38が有名だが、このマシンは「タイレル」フォードP34と呼ばれていた。これは1976年の最終戦、「F1世界選手権イン・ジャパン」参戦した「P34」に、「たいれる」とひらがなのマーキングがあったため。

英語的には、"ティレル"の方が本来に近い発音で、1990年に中嶋悟がチームに加入する頃には、「ティレル」が定着していた。
6)その他
車名ではないが、アイルトン・セナもF3時代は「A・S・ダ・シルバ」と表記されていたし、ネルソン・ピケも、「サーキットの狼」には、「ネルソン・ピケット」と書いてあった。セバスチャン・ベッテルのことも「ヘッテル」と呼ぶ人もいるし……。

外国の名称を、日本語で表記するのは難しいが、法人などが設立されて商標登録されると、それが正式名称になり、統一されるのがこれまでの流れだ。