この記事をまとめると
■クラシックカーやヴィンテージカーには地域によって異なる定義が存在する



■2000GTやスカイラインGT-Rは1960年代登場なのでクラシックカーとはいえない



■クラシックカーはクルマとしての価値だけでなくそのヒストリーも重要



クラシックカーとヴィンテージカーにはそれぞれ定義がある

世界的な電動化ムーブメントへの反発なのか旧車ブームが盛り上がっている。



すべて電動化になってしまえばエンジンでクルマを走らせるという時代は終わってしまう。それが、いつになるのかはわからないが、多くの自動車メーカーがカーボンニュートラル実現のためにエンジン車販売のデッドラインを掲げている現状を考えれば、そう遠い未来の話ではないことも明らかだ。



つまりエンジン車を日常的に味わうことができるという現在は、将来からすれば貴重な時間ともいえ、だからこそ最高のエンジンを味わっておきたいというユーザーも増えているのだろう。それが旧車ブームの盛り上がりを支えているという面があるのは否めない。



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ところで、そうした旧車ブームの中で「日本車には本当の意味でのクラシックカーは存在しない」という話を目にすることがある。はたして、これはどんな意味なのだろうか。旧車増税をするような社会にクラシックカー文化は根付かないということなのだろうか。



いや、ここで注目したいのはクラシックカーという言葉の定義だ。



クラシックカーというのは主にアメリカで使われている言葉だが、たとえば「クラシックカー・クラブ・オブ・アメリカ」には明確な基準があり、1915~1948年に製造された特定のモデルのみが、同クラブにおけるクラシックカーとして定義されている。



日本車は「若造」すぎて旧車はあれどクラシックカーは存在しない!? 「クラシックカー」や「ヴィンテージカー」の定義とは



一方、欧州では似たような分類として「ヴィンテージカー」という言葉が使われる。イギリスにある「ヴィンテージ・スポーツカー・クラブ」の規則によると、同会が認めるヴィンテージカーの基準は1930年以前に作られたクルマを指すという。



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一方で、アメリカ運輸省においては製造から25年を経たクルマについてはクラシックカー扱いとするというルールもあり、その見方に従えば1990年代半ばに製造されたクルマはクラシックカーということになる。



このように定義を用いるのかは立場や地域によっても異なるが、アメリカ運輸省の基準は別として、1960年以前のモデルをクラシックカーと分類するケースが多い。



国産車でクラシックカーと呼べそうなのは三菱A型くらい

翻って、国産車でヴィンテージやクラシックと呼ばれるのは、トヨタ2000GTや日産スカイラインGT-R、マツダ・コスモスポーツといったモデルだったりするが、それぞれデビュー年次でいうと2000GTとコスモスポーツが1967年、スカイラインGT-Rは1969年となる。



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グローバルなクラシックカーという定義に当てはまるかといえば微妙だ。世界的な旧車の世界でいうと、これら国産ヒストリックモデルは若輩者だったりするのだ。



その意味で、冒頭で記したように「日本車にはクラシックカーは存在しない」という主張には一理ある。トヨタが最初に量産したトヨダAA型は1936年生まれ、日産のルーツといえるダットサン12型の製造開始は1933年であるから、いずれもイギリスではヴィンテージカーとしては認められない年式なのだ。つまり多くの国産メーカーは、欧米基準のクラシックカーをそもそも製造していない。



日本車は「若造」すぎて旧車はあれどクラシックカーは存在しない!? 「クラシックカー」や「ヴィンテージカー」の定義とは



もっともゼロとういうわけではない。日本初の量産車といえば1919年に三菱造船が製造した三菱A型というのが定説となっているが、同時代に製造された日本車であれば世界的なクラシックカーの基準を満たすといえる。



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とはいえ、単に古ければクラシックカーと呼んでいいというわけではない。



いわゆるオークションなどで高値取引されるクラシックカー、ヴィンテージカーにおいて大切なのは「ヒストリー」と呼ばれる履歴だ。



車台番号から製造日などが明確になっていることはもちろん、過去のオーナー歴などが明確になっていることが重要だ。その中に設計者やテストドライバー、レーシングドライバーや著名人などが含まれているとヒストリーにストーリーがあるということで評価が高まったりする。



ただし、日本ではそういたヒストリーを裏付けて認証する機関もないため、欧米的な価値観によってクラシックカーを評価するのは難しいというのも現実だ。

日本でもクラシックカーの本格的なオークションは始まっているが、クラシックカー文化が定着するには一朝一夕というわけにはいかないだろう。

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