この記事をまとめると
■COTYの10ベストにも入ったアメ車「コルベット」が話題に■「コルベット」はアメリカ国内でも特殊な位置にいるクルマだという
■日本にはコルベットのようなクルマがない理由に迫る
日本でコルベットのようなクルマが売れないワケ
日本でも、GMシボレー新型コルベットに注目が集まっている。
これまでコルベットらしさの基本であった、ロングノーズのFR(フロントエンジン・リアドライブ)から一変したスタイリング。パッと見た目は、イタリアンスーパーカーのように思えるダイナミックさが魅力的だ。
ミッドシップされたV8は総排気量が6.2リッター。日本仕様での最大出力は502馬力、最大トルクが637Nm。停止状態から時速60マイル(約97キロ)までの加速性能は2.9秒、最高巡航御速度は時速312キロというハイスペックである。

こうした走行性能とエクステリア/インテリアデザインの迫力を考えれば、新車価格2000~3000万円を想像するのが自然であろう。
それが、日本仕様では、1250万円(2LT)、1450万円(3LT)、1600万円(コンバーチブル)と、一般的な人が持つイメージのほぼ半値といったところだろうか。本国アメリカでは、コルベットの新車価格はさらに抑えられている。

コルベットはアメ車の中でも孤高の存在なのだ
もそもコルベットというクルマは、アメリカ人にとって、たんなるスポーツカーではなく、またカマロやマスタングのハイパフォーマンス系での”いわゆるマッスルカー”でもない。
アメ車なのだが、ヨーロピアンな雰囲気も醸し出し、さらに近未来感も兼ね備えた、スペシャリティカーという独特の世界観を持つ。

筆者は歴代コルベットについて、全米各地のモーターショー、GM本社主催のメディア向けイベント、また製造拠点であるケンタッキー州ボーリンググリーンでのユーザー向けインベント、そしてミシガン州デトロイト周辺のGM本社関連施設で、コルベット開発関係者やデザイナーと意見交換をしてきた。
そうしたなかで、GMがなぜコルベットにこだわるのかが少しずつわかってきたように思えた。新型コルベットの大いなる変化についても、GMがこれまでコルベットに対して貫いてきた思いが次世代に向けて具現化されたのだと解釈している。

GMにとってコルベットは特別な存在であり、GMが描かれたコルベットの世界感をアメリカン人は理解し、そして楽しんでいる。
一方で、トヨタのスープラ、日産のZやGT-R、そしてホンダのNSXなど、日系メーカー各社もスポーツカーやスーパースポーツに対する各社独自の思いがある。その結果として、車両のスペックと新車価格が決まっていく。

その上で、日系メーカー各社は、コルベットに対して正面を切った形でのライバル車を企画したことはない。
なぜならば、日系メーカー各社が、コルベット独自の世界観を尊重し、その領域に踏み込んで勝負をすることはとても難しいことを理解しているからだと思う。