この記事をまとめると
■かつての三菱のエンジンは天体に関する愛称が付けられていた■天体シリーズの元祖でありもっとも印象深いのは「4G3型」のサターンエンジンだ
■4G32型サターンエンジンはDOHCヘッドを備えてクラス最強を誇った
クラス最強を誇った三菱のサターンエンジン
三菱のエンジンには、サターン(土星)、ネプチューン(海王星)、アストロン(ギリシア語で星)、オリオン(星座)、シリウス(恒星)と天体に関する愛称が付けられていた。いずれも、最初の数字が気筒数、その後ろにガソリンエンジンであればG、ディーゼルエンジンにはDのアルファベットが続き、最初の二文字だけで基本プロフィールがわかった時代のエンジンだ。
その中でも印象深く、天体シリーズ(?)の元祖といえるのがサターンエンジンだ。
サターンエンジンが最初に量産車に搭載されたのは1969年8月のこと。排出ガスのクリーン化を狙い、三菱初のOHCヘッドを採用した4気筒エンジンとして誕生した。当時、三菱自動車工業はまだ存在しておらず、三菱重工業・自動車事業本部が三菱車を生産していた時代。そうしたこともあって、戦前の航空機用エンジンで用いていた「金星」や「火星」といった名称にならい、「土星」を意味する「サターン」と命名されたのだ。
サターンエンジン・シリーズの型式は、「4G3型」となる。最初に搭載したのは、1969年12月に発売された初代コルトギャランで、1.3リッターの4G30型、1.5リッターの4G31型がラインアップされていた。

最高出力は1.3リッターが87馬力、1.5リッターが95馬力となっていたが、サターンエンジンの名を世に広めたのは、1970年に発売されたギャランGTO MRだろう。
1970年4月に三菱自動車工業が設立され、同年11月に発売されたギャランGTOは、アメリカンテイストのスポーツクーペ。当時、クライスラー社と提携していたという三菱自動車工業の背景を考えると、そのスタイリングもすんなりと理解できた。

そのギャランGTOのホットグレードとなるMRに搭載されたのがニューサターンエンジンと呼ばれた1.6リッターの4G32型で、ギャランGTO MRには専用のDOHCヘッドを持つスポーツユニットが搭載された。その最高出力は125馬力。
同じ年にデビューしたライバル、トヨタ・セリカの1.6リッター2T-G型エンジンが115馬力だったこともあり、サターンエンジンはテンロク最強のエンジンをイメージさせるものとして憧れの存在となった。これがサターンエンジンの名を自動車ファンに印象づけた。
サターンエンジンには直6もあった
ちなみに、サターンエンジンには直列6気筒のバリエーションもあった。それが三菱のフラッグシップであるデボネアに搭載された2.0リッターの6G34型で、このエンジンに限り「サターン6」という愛称で呼ばれた。

そのほか、1.4リッターの4G33型、1.7リッターの4G35型、1.8リッターの4G37型とサターンエンジンの仲間は増えていった。生産期間は1969年~1996年と長寿エンジンとなり、累計生産台数は421万台と発表されている。

なお、冒頭で記載した三菱の天体系ネームのエンジン・シリーズについて、それぞれの生産期間と累計生産台数、主な搭載車は次のようになっている。懐かしい車名とともに振り返ってほしい。そして、意外にもオリオンエンジンやシリウスエンジンの系譜は、つい数年前まで新車として存在していたのだった。
4G4型「ネプチューン」エンジン
・生産期間:1971年~1981年
・累計生産台数:52万台
・主な搭載車種:ギャランFTO、ランサー
4G5型「アストロン」エンジン
・生産期間:1972年~2013年
・累計生産台数:522万台
・主な搭載車種:ギャランΣ、デボネア、パジェロ
4G1型「オリオン」エンジン
・生産期間:1977年~2014年
・累計生産台数:968万台
・主な搭載車種:ランサー、ミラージュ、コルト
4G6型「シリウス」エンジン
・生産期間:1979年~2016年
・累計生産台数:636万台
・主な搭載車種:ギャラン、デリカ、ランサーEX、ミラージュ