この記事をまとめると
■いま新車の納期遅延が目立つ



トヨタ車はとくに深刻だが、それでも多くのユーザーから選ばれている



■いまトヨタディーラーは管理ユーザーの乗り換えをメインにすすめている



納期遅延に見舞われても依然トヨタが強さを見せる

世界的なサプライチェーンの混乱に加え、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響も出始めており、新車の深刻な納期遅延は収束する気配すら見せない。日本メーカーではとくに、トヨタ車の人気モデルの多くが深刻な納期遅延となっているケースが目立つ。



販売現場で話を聞くと、「ハイブリッド車はどのモデルでも納期遅延がより深刻」とのこと。

あくまで販売現場で聞いた話だが、その理由は半導体の供給の滞りが大きな原因ではないかとのこと。ハイブリッドユニット向けの半導体供給の滞りが目立ち、ハイブリッド車が圧倒的人気モデルとなるトヨタが割を食ってしまっているようである。こればかりはメーカーに一方的な責任がある話ではない。犯人捜しをするよりは、できるだけ納期を短縮できるよう、メーカーには部品調達のために奔走してもらうしかない。



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トヨタのように納期遅延が目立つメーカーもあれば、それほど極端な納期遅延となっていないメーカーもある。仮に半年以上も納車を待たなければならないのなら、納期の早い他メーカーのモデルへお客が流れてもいいのだが、トヨタ車の納期遅延が目立つからといっても、他メーカー系ディーラーでは、「それでもお客様の多くはトヨタ車を購入する」という話をよく耳にする。



それではと、当のトヨタ系ディーラーのセールスマンに話を聞くと、「世界情勢を見ても、いまの状況が短期的に改善されることはないでしょう。人気車の多くは納期遅延というか、いつ納車になるのかもはっきりしないなか販売促進活動を進めております。そのため他メーカー車にお乗りになっているような、“フリー”のお客様や、『車検が直近にくる』といったお客様へのご対応は非常に厳しくなっております」とのこと。本音の部分では自らトラブルを抱え込むようなものなので、積極的な売り込みは控えたい様子であった。



目星をつけたお客様に“買ってもらう”

それではどのように新車を売っているのか聞くと、すでに新車を販売して納車している“既納客”への販売促進活動をメインにしていると、あるセールスマンは話してくれた。「車検有効期限まで1年ほど残っており、新車への乗り換えを直近で検討していないような管理ユーザーのお客様へ新車へのお乗り換えをご案内しております。

つまり、欲しいお客様へ“売る”のではなく、目星をつけたお客様に“買ってもらう”という活動をメインにしております」。



2022年1月に正式発売となった、新型ノア&ヴォクシーは部品供給遅延などのほかに、新型車となったばかりで集中的に受注が入ったこともあり、ハイブリッド車ではすでに2023年になってからの納車を覚悟しなければならない状況となっている。しかし、そのような状況でも受注が入り続けている。ライバルの日産セレナははるかに短い期間で納車可能なので、セレナの販売台数が急伸してもいいのだが、目立ってそのような傾向は見られない。これも、「ノアあるいはヴォクシーが欲しい」と店頭を訪れるお客もいるのだろうが、自分たちが過去にノアやヴォクシーを販売したお客に“買ってもらう”といった売り方をベースに販売促進活動を展開していることが大きく影響しているようだ。



いつになったら乗れるんだよ……他メーカーより納期遅延が酷くても皆「トヨタ」を選ぶワケ



「ノア&ヴォクシークラスでは、先代、つまりひとつ前の世代にお乗りになっているお客様がより多く新型へ乗り換えられる傾向が目立ちます。二つ前より以前のモデルにお乗りになっているお客様は10年ぐらい長期保有されるケースが多いので、アプローチしても反応はいまひとつですね。ひとつ前のモデルなら、残存価値も十分残っておりますので短期間で乗り換えるというお客様も結構いらっしゃいます」。



メインのハイブリッドの納期遅延が目立つとはいえ、毎月の車名(通称名)別販売ランキングでは上位にトヨタ車が多く入っていると、一瞬不思議な気持ちになってもおかしくない。しかし、このような結果はトヨタ系ディーラーが得意とする“買ってもらう”という営業スタイルが下支えしているといっていいだろう。

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