この記事をまとめると
■中国電力が太陽光発電による電力のみを使ったEVカーシェアリングの実証実験を行う■日産リーフとマツダCX-30のEVを使用する
■稼働率が高くなると充電する時間に制約を受けるなど課題は多い
グリーン電力で充電したEVなら理論上はカーボンニュートラル
中国電力は、太陽光発電による電気のみを使った電気自動車(EV)カーシェアリングの実証実験を行うと発表した。
これは、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自律型EVステーションを設け、そこに配備されたEVをカーシェアリングで利用するという内容だ。太陽光発電の電気は、一旦蓄電池に充電され、その電気でカーシェアリング用のEVに充電する。
この方式は、法人向けEVカーポートとしても活用の道を探ることになるようだ。間もなく軽自動車のEVが、日産と三菱自動車から発売され、より安価にEVを手に入れられるようになれば、事業用として活用の道が広がるだろう。
太陽光発電は日中しか発電できないが、蓄電池と組み合わせることにより、日中稼働していたEVが駐車場へ戻ったあと、蓄電池に充電された電気で充電すれば、太陽光発電による電気でのEV利用につながる。
実証実験では、まず広島県の県立広島産業会館に施設が設置される。期間は5年間で、敷地は広島県が用意し、太陽光発電を備えたカーポートはパナソニックが担う。

中国電力では、脱炭素ソリューション推進室を立ち上げることで、ほかにも脱二酸化炭素への取り組みを進めるという。
運用が軌道に乗ったときに充電時間をどう確保するかが鍵だ
この事業に限らず、太陽光発電や風力発電を利用した再生可能エネルギーの普及が、国内外を問わず大きな期待を持たれている。それらを積極活用することに異議を唱えるつもりはない。だが、依存しすぎることへの懸念もある。
すでに気候変動は現実の問題として起きており、各地で予測不能な災害が頻発している。

また、一般的にカーシェアリングは昼夜を問わず需要があるので、稼働率が高くなり、運用が軌道に乗れば乗るほど、充電する時間に制約を受ける可能性も出てくる。その対応には、近隣に別のカーシェアリング拠点があるなどの助けが必要で、たとえばパーク24では、拠点数の多さによる利便性の確保を試行錯誤している。
机上の想定では、理想的なEVカーシェアリングの構想だが、実証実験するのであれば、カーシェアリングの知見が豊富な企業などとの連携が欠かせないのではないか。
物を設置すれば課題が解決する時代ではない。物は不可欠だが、それをいかに運用するかという手段が問われる時代である。
また、実証実験の段階から実際に課金する段階になったら、いくらくらいで運用できるのか、充電時間をいかに確保するのか、そうした現場や現実の視野をもって取り組まないと、単に「試しました」というだけで終わってしまいかねない懸念が残る。