この記事をまとめると
トヨタが5年間販売していたMPV「ナディア」を振り返る



■イプサムのプラットフォームを採用しているほか、走りも遮音性も良好だった



■JPNタクシーやルーミーのご先祖と言うべき存在だったかもしれない



これがあったから今がある! ナディアは人気車種のご先祖だった

この前トヨタ系正規ディーラーのセールスマンと話をしていた時に、過去取り扱った車種のなかで印象に残っているクルマについての話となった。セールスマンは「世間の支持は得られなかったようですが、ナディアはなかなかいいクルマでしたね」と語ってくれた。



トヨタ ナディアは1998年から2003年の間ラインアップされていた。

一見すると初代イプサム(当時トヨタでラインアップしていたミニバンで、5ナンバーサイズの初代は1996年から2001年の間ラインアップされていた)の兄弟車、つまりミニバンのようにも見えるトールボディを採用していたが、シートは3列ではなく2列となり5名乗車のMPV(マルチパーパスビークル/多目的車)となっていた。いまどきでいえばトヨタ ルーミーのような存在といっていいだろう。



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ミニバンではないものの、イプサムのプラットフォーム流用などをしているので、兄弟車というよりは、派生車種としたほうがより“しっくり”くるかもしれない(兄弟車としてはトヨタ ガイアがラインアップされていた)。



見た目はフロントからリヤにかけた、丸みを帯びたワンモーションシルエットが特徴的であった。当時はミニバンが大ブレイクしていた時期なので、トヨタ以外の各日系メーカーでも競うようにミニバンをラインアップしていた。そのようななかでの“ポストセダン”をトヨタが狙って開発したと当時はよく言われていた。



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デビュー時のトヨタ発信のニュースリリースにも、“ユーティリティが特徴的な次世代乗用車”としている。当時取材のため撮影車を借りて運転してみると、それまでは“捉えどころのないクルマ”のようなイメージが強かったが、前出のセールスマン同様に“いいクルマ”というのが伝わってきた。



JPNタクシーのご先祖と言っても過言ではないかもしれない

当時のセダンはシートポジションが低めに感じていたのだが、ナディアは背が高くシートポジションも高めなので前方視界が良く車内も開放的であった。リヤシートは座面がスライドする機構(分割式)を採用しており、座面を最後方まで下げると“センチュリー以上”ともいわれた足もと空間が広がった。一部グレードでは前席が回転することで後席と対面にできるアレンジも用意され、後席をたためば広大なラゲッジスペースが現れるなど、ミニバン的要素も多く採用されていた。また、コラムシフトの採用により前席ウォークスルーも可能となっており、とにかく使い勝手がよかった。



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実際運転してみると、ベーシックグレード比でイプサムより50kg軽いこともあるのか、意外なほど軽快に走るだけでなく、セダン並みの静粛性の高さに驚かされたことを記憶している。とにかく運転をはじめた瞬間に“これってありだな”と第一印象で感じさせてくれた。イプサムとは異なり、デジタル式(スペースビジョンメーター)のセンターメーターを採用していたのはなかなか斬新であった。まさにセダンとミニバン(ステーションワゴンも?)の“クロスオーバーモデル”がナディアでは実現されていた(モデル途中ではSUVテイストを加えたタイプSUが追加されている)。よく考えるといま見た目は異なるし、後席ドアはスライド式となっているが、トヨタでいまラインアップしている営業車、“JPNタクシー”のご先祖様のようにも見えてきた。



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当時はナディアのような大きさと見た目では、3列シートを採用したミニバンモデルが当たり前でしかも売れまくっていたので、そのような時代背景もあって消費者からは“スルー(2列よりはシートは3列あったほうがいい?)”されてしまったが、乗ってみると「これいいな」と思わせてくれたなかなかの意欲作であった。

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