「定められた基準を満たしていない企業が相当数ある」
血行を促進し疲労回復に役立つとされる、いわゆる「リカバリーウェア」の市場が急拡大する中、14日に都内で会見を開き、その実状についてこう厳しく指摘したのは日本ホームヘルス機器協会会長の山本富造氏。
指摘の先にあるのは、効果効能をうたえる一般医療機器としてのリカバリーウェアだ。

リカバリーウェアについては、一般医療機器として「家庭用遠赤外線血行促進用衣」のカテゴリーが2022年10月に42年ぶりに新設された。同市場にはこれまでに180社を超える企業が参入しているといわれる。
山本会長の指摘は、盛り上がる機運に水を差しかねない苦言となるが、そこには「このまま放置すれば、日本の医療機器に対する信用失墜や、消費者からの苦情多発を招く可能性が極めて高い」という危機感がある。
問題の一因には、一般医療機器が「届出制」であり、行政による事前の審査プロセスが存在しないことがある。山本会長の耳にも、この隙間を突いた、以下のような不適切な事例が多数届いているという。
  • 臨床試験の不備:倫理委員会の未設置や、定められた被験者数(1品目あたり32~40名程度)の逸脱
  • データの不正利用:臨床試験データの使い回しや、安全性試験データの不足
  • 管理体制の欠如:ロット番号の不記載など、医療機器としての管理がなされていない製品の流通
昨年11月には、非会員企業による48万着の大規模な自主回収事案も発生しており、山本会長はこうした状況に歯止めをかける強い責任と必要性を感じている。

なぜリカバリー「ウェア」は「医療機器」なのか

そもそもなぜ、リカバリー「ウェア」なのに、医療「機器」カテゴリーなのか。その理由は、リカバリーウェアが「疲労が回復する」「血行が良くなる」「筋肉のコリがほぐれる」といった効果効能を広告などでうたう場合、薬機法(医薬品医療機器等法)の規制をクリアする必要があるからだ。
一定の基準をクリアしている製品であれば、国への届出の上で、安全性と一定の品質が担保された「一般医療機器(クラスI)」として販売でき、定められた効能効果をうたえる。
ところが、市場急拡大の一方で、「リカバリーウェア」として流通する製品に基準未達のものも混在し、消費者が混乱する状況も生まれている(※)。絶好の商機とあって、大小のアパレルメーカーも多数参入する状況だが、そのなかには「医療機器」を扱わないメーカーも存在する。
※「リカバリーウェア」という呼称自体には明確な使用制限がなく、非医療機器であってもそう名乗ることが許されている
日本では自社ブランドの医療機器の市場への出荷・販売は、医薬品医療機器等法で規制されており、規制当局(厚労省及び各都道府県)から製造販売業(製販)の許可・登録・承認を得る必要がある。アパレル企業で同許可(クラスIは登録)を未取得であれば、医療機器のクラスによっては自社ブランドとして製販はできない。

許可未取得のアパレルメーカーがなぜ医療機器を販売できる?

ではなぜ、医療機器の製販未取得のアパレルメーカーが、一般医療機器の基準をクリアしたリカバリーウェアを販売できているのか。
実はその多くが、届出をコンサルタント企業などの名義で行っているからである。
このこと自体は直ちに違法とはいえない。しかし、山本会長は、“医療機器”を自社ブランドとして消費者に提供する以上、相応の社会的責任を負うべきであると指摘する。
「最低限、扱っているのは雑貨品でなく医療機器と認識されなければなりません。
また、医療機器の『製造販売業許可』を未取得で自社ブランドとして販売している企業は、同許可を取得するなど、(この機会に)メーカーとしての質を高めるステップアップをしてほしい」(山本会長)

リカバリーウェアの新たな審査制度も提示

併せて、山本氏は日本ホームヘルス機器協会会長として、専門家で構成される第三者機関の「評価審査委員会」による独自の審査制度を新たに提示。委員長には、公益財団法人医療機器センター理事長の菊地眞氏を据え、公平な立場から提出資料の存在確認と整合性の確認を行なっていくことを表明した。
同制度は、 審査結果を「透明性レベル」(☆印)として公表し、消費者が根拠情報の有無を一目で判断できるようにするもので、以下のような一般医療機器の「必須項目」と「任意項目」による加点で評価される。
  • 15の必須項目:製造販売業許可の有無、臨床試験データ、安全性試験、血流量改善率(5%以上)、放射率(5%以上)など、医療機器として最低限満たすべき15項目をすべてクリアすることが認定の絶対条件
  • 任意項目の加点:さらに高い信頼性(ISO 13485の取得、個体識別番号管理、より高い血流改善率など)を備える製品には、☆印が追加される
あくまでも、一般医療機器としての評価を可視化するのが目的で、「製品の優劣をつけるものではない」という。その上で、山本会長は「消費者が自分の求めているものを的確に選択できるための透明化」と強調した。
同制度のスタートは5月から6月を予定し、6月頃にはホームページ上で専門家による解説ビデオなども公開する。山本会長は最後に、「国民が安心してセルフメディケーションに活用できる世界を一日も早く作りたい」と力強く意気込みを語った。
空前の盛り上がりをみせるリカバリーウェア市場。
この活況を一過性のブームに終わらせないためにも、参入企業には、科学的根拠と法的責任に基づいた「医療機器ビジネス」としての持続可能性を確保するための健全な姿勢が求められる。


編集部おすすめ