勤め上げた会社を65歳で退職後、業務委託で施設管理の仕事についていたAさん。丁寧な仕事ぶりと誠実な人柄で、厚い信頼を獲得していた。
もちろん、勤務先はAさんを引き留めた。Aさんの家族や友人は「いまのままで何の問題もないだろう」と反対した。
だがAさんは、「もっとやりがいのある仕事がしたい」と周囲の声を振り切るように面接に臨み、採用を勝ち取り、転職を実現した。自分の意志を貫き、70歳以降の人生を悔いなく歩む道を選択したのだ。
Aさんの事例は特別なのか…。確かに70歳を超えてなお気力と体力を若いころのように保つのは簡単でない。それでも、理由はともかく、働き続けるなら、年齢に関係なく、能力と成果で処遇してほしいと多くのシニアが願うだろう。
“生涯現役”も叫ばれる高齢社会。法的にも、高年齢者雇用安定法で、〈少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図る〉とされ、定年廃止や70歳までの就業機会確保が努力義務とされている。
50歳前後を対象とした黒字リストラが横行する一方で、定年ラインは事実上消滅し、企業もシニアを受け入れる環境へとシフトしつつある。
日立製作所が示した「新しい現実」
たとえば、日立製作所は今年4月、定年後の再雇用者に対し、職務内容に基づく「ジョブ型」処遇を適用する新制度を導入した。対象は日立単体で約2300人。
この見直しにより、たとえば部長クラスであれば1450万~2000万円(理論年収、賞与や諸手当除く)、課長クラスであれば約1150万~1500万円(同)という定年前の水準を、再雇用後も維持することが可能になるという。
三菱UFJ銀行は2027年度から、55歳を機に給与を一斉引き下げする制度を廃止し、定年を60歳から65歳に延長することを決定。55歳以降も昇給が可能になり、銀行に残って活躍し続けることができる仕組みに変わる。
70歳で働くのも当たり前の時代へ
団塊世代の大量退職が懸念された「2007問題」からもうすぐ20年。この間のベテラン人材の流出は、技術や経験の喪失となり、じわじわと企業を弱体化させた。ベテランが減り続け、若手はそもそも人口が少ない。こうした構造的苦境を経て、シニア人材に対する処遇の見直しが検討され、徐々に労働力の高齢化を受け入れる環境が整いつつあるのが現在地だ。
では、この変化に、シニア人材はどう向き合えばいいのか。追い風ではあるものの、単純に「雇ってもらえる間は働き続ける」というスタンスでは、すぐに息切れ・メンタル切れを起こすだろう。
長く働き続ける、それも活躍し続けるためには、発想の転換が不可欠だ。具体的には、「役職=価値」という発想から「役割=価値」への切り替えだ。
人事コンサルタントの新井健一氏が解説する。
「育成、橋渡し、専門的支援。自らの貢献領域を再定義することで、肩書ではなく『組織にどのような機能を提供できるか』という視点に立てるようになります。
その視点に立てたとき、プライドは失われるのではなく、形を変えて維持されます。
ただし、この切り替えは自然には起きません。意図的に視点を変えなければ、過去の延長上に留まり続けることになるでしょう」
企業が本当に求めている「シニアの役割」の正体
企業にとって、シニア人材は技術と経験を持つ、貴重な戦力だ。一方で、気力・体力が衰え、扱いにくい存在でもある。だからこそ、定年というラインを引いて、ドライに会社を去ってもらっていたのだ。きわめて合理的で都合のいい仕組みをあえて翻してまで、企業がシニアを厚遇する本音はシンプルだ。
「かつての定年以降のシニア人材に企業が求めているのは『前に出るリーダー』ではなく、『後ろから支える機能』としての役割です。
若手育成、暗黙知の言語化、部門間の調整、社内外をつなぐハブとしての役割…。これらは、経験を持つシニアにしか担えない領域です。
単なる労働力ではなく、『組織の機能を補完する存在』へ。
リスキリングの処方箋。技術より「価値の再編集」を
定年を過ぎてもなお、働き続けるケースとして、「転職」も選択肢にはあるだろう。ただし、そうなると、ある程度のスキルがあったほうが有利になる。シニア世代は、どんなスキルを磨けばいいのだろうか。新井氏が助言する。
「リスキリングは政府も後押ししており、求められていますが、単なるITリテラシーの向上ではないと認識しておく必要があります。そうではなく、『価値を持続的に創出するための再設計』と捉えるべきです。
確かにAIやデジタル技術の基礎理解は不可欠です。日立がジョブ型への転換を加速している背景にも、グローバルな事業環境の変化や人工知能(AI)を含むデジタル技術の進展があります。
しかし、シニアが若手と同じ土俵で技術競争をする必要はありません」
そのうえで新井氏は、以下の3つを重視すべきと説いた。
- 業務構造を言語化する力
- 人と組織を動かす力
- 経験を再利用可能な知見に変換する力
「学ぶべきは、技術そのものより、それをどう使い、価値に変えるかという設計力や編集力です。
「勤続50年」を完走するための、賢い出力調整
技術・知力・気力。この3つを水準以上にキープしながら、立ち位置を再編集し、会社の発展をバックアップする側に回る。それが、シニア人材が長く活躍し続ける肝といえるだろう。ただし、シニア人材にとって、最も大きな壁を忘れてはならない。体力だ。新井氏は「『全力か引退か』の二択を捨てることが、長く働き続けるための現実解です」と明言する。
週3勤務、業務委託、副業の組み合わせなど、出力を段階的に調整する複線型のキャリア設計が、現実的な選択肢として広がっている。
本業の負荷を徐々に下げながら、外部活動や社会貢献へ軸足を移していく。こうしたグラデーション設計こそが、長く健やかに働き続けるための道筋となる。
「重要なのは、このような複線化を早い段階から試行しておくことです。急激な環境変化が来たときにも耐えられる構造を、事前に作っておくことができます」(新井氏)
マネープランと「ひきどころ」をどう考えるか
そうやって、70歳を超えてもなお、企業に求められ、活躍し続けられれば、“生涯現役”も軽やかに乗り切れるだろう。それでも、引き際はある。いつがその時なのか…。「『いつ辞めるか』は、年齢ではなく資金と目的で決まります。
人生100年時代において、年金開始年齢の引き上げや長寿化を踏まえれば、一定の資産がなければ働き続ける必要があるのが現実です。
一方で、資金が確保されている場合は、無理に働き続ける合理性は薄れます。注意すべきは、仕事は単なる収入手段ではなく『生きがい』に直結するという点です。
引きどころを『収入が不要になった時』ではなく、『自分の時間の使い方を再設計できる時』と捉えること。仕事を減らすか、形を変えるか。その選択が後半人生の質を決めます」。
「理想の最終ロード」は、自分で描き、実現するしかない。
70歳で転職した冒頭のAさんは、その後どうなったのか…。「いまは子どもたちと接点のある仕事で、『先生!』なんて呼ばれてこそばゆいよ」
うらやましくなるほど、うれしそうにAさんは報告してくれた。
<新井健一(あらい・けんいち)>
経営コンサルタント、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役。1972年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大手重機械メーカー人事部、アーサーアンダーセン(現KPMG)、ビジネススクールの責任者・専任講師を経て独立。

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