G-SHOCKの「カシオ計算機」M&A方針を転換 売りから買いへ 時計・教育で成長投資

耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」などを展開するカシオ計算機<6952>がM&A方針を転換した。

2026年5月14日に公表した新中期経営計画(2027年3月期~2029年3月期)で、時計事業や関数電卓を中心とする教育事業で、M&Aを含む戦略投資を進める方針を明記した。

前中期経営計画ではM&Aは明示しておらず、実行面でも買収は行われず、事業売却や不採算事業の整理が先行した。

収益基盤の立て直しに一定のめどを付け、時計事業や教育事業で外部資源を取り込み、成長軌道への復帰につなげる計画だ。

前中期経営計画は買収を明示せず

カシオ計算機の前中期経営計画は、収益基盤の強化を優先した期間だった。

同社は前中期経営計画で250億円の戦略投資枠を設け、アライアンス(連携)などへの資金配分を掲げていたが、M&Aという言葉は使っていなかった。

新中期経営計画では、前中期経営計画を「収益基盤強化期」と位置付け、不採算事業の構造改革、全社固定費削減、ガバナンス・執行体制の強化を進めた期間と整理している。

成果としては、時計事業の拡大を中心に収益力が回復した。

一方で、課題としてサウンド事業の黒字転換、G-SHOCKブランドの再成長、インドやブラジルなど成長エリアの拡大加速、新規事業の事業貢献などを挙げている。

前中期経営計画は、外部資源を使って事業を広げる段階というより、不採算事業を整理し、主力事業の収益力を回復させる局面だったといえる。

300億円枠にM&A/アライアンスを明記

新中期経営計画では、M&Aの位置付けを明確にした。

カシオ計算機は2027年3月期から2029年3月期までの3年間で、戦略投資に300億円を配分する。

使途には、M&A/アライアンス、ブランド投資、生産・営業拠点戦略などを掲げており、M&Aを含む戦略投資の対象として、時計事業と関数電卓を中心とする教育事業を示している。

時計事業では、G-SHOCKで若年層の再獲得を進め、CASIO WATCHでは高付加価値化により女性ユーザーなどの取り込みを強化する。

インドやブラジルなど成長エリアの拡大にも重点を置き、両ブランドの成長に向けた事業投資に加え、周辺成長領域の拡大やM&Aを含む戦略投資を進める。

教育事業では、関数電卓を中心に新興国での需要獲得と収益性の向上を進める。

関数電卓の普及率やシェアを高めるほか、教育アプリやデジタル教材関連サービスの拡大も掲げ、同事業をM&Aを含む戦略投資の対象に位置付ける。

2029年3月期に売上高3150億円に

新中期経営計画の最終年度となる2029年3月期は、売上高3150億円、営業利益350億円を計画している。

2026年3月期実績は売上高2762億6700万円、営業利益230億7100万円だったため、3年間で売上高を約387億円、営業利益を約119億円積み増す計画となる。

部門別では、時計事業(2026年3月期の売上高構成比は67.0%)が成長をけん引する。

同事業では2026年3月期の売上高約1850億円、営業利益約271億円から、2029年3月期は売上高2070億円、営業利益325億円を計画する。

コンシューマ事業(同29.7%)は、EdTech(教育)とサウンド(楽器)で構成し、2026年3月期の売上高約821億円、営業利益約34億円から、2029年3月期には売上高920億円、営業利益90億円に引き上げる。

このうちEdTech(養育)は2026年3月期の売上高約610億円、営業利益約68億円から、2029年3月期には売上高680億円、営業利益85億円に伸ばす。

サウンド(楽器)は2026年3月期に約34億円の営業赤字だったが、2029年3月期には営業利益5億円の黒字化を見込む。

G-SHOCKの「カシオ計算機」M&A方針を転換 売りから買いへ 時計・教育で成長投資
カシオ計算機の売上高構成比

同社の2010年以降の適時開示M&Aは4件ある。2010年のTFT液晶ディスプレイ事業の凸版印刷との共同出資会社への移管から、2025年の人事管理システム子会社であるカシオヒューマンシステムズの売却まで、4件全て譲渡案件だった。

新中期経営計画でM&A/アライアンスを戦略投資の使途に明記したことで、今後は買収も選択肢に入れ、時計事業の周辺領域拡大や教育事業の収益性向上につなげる方針だ。

M&Aは、2029年3月期に計画する売上高3150億円、営業利益350億円の達成に向け、成長投資の選択肢の一つとなり得る。


G-SHOCKの「カシオ計算機」M&A方針を転換 売りから買いへ 時計・教育で成長投資
カシオ計算機の2010年以降の適時開示M&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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