日本における実験映画とビデオアートの先駆的な作家・出光真子(いでみつ まこ)。ジェンダーや身体をめぐる国際的な議論が高まる近年、改めて注目を浴びている出光の創作活動の全貌を振り返る大規模な回顧展が、6月18日(木)から9月21日(月・祝)まで、恵比寿の東京都写真美術館で開催される。
1940年、出光興産創業者・出光佐三の四女に生まれた出光は、早稲田大学を卒業後、ニューヨークに留学。一時帰国を経て、再渡米後に抽象画家サム・フランシスと結婚、二児の母となるが、創造表現への想いやみがたく、映像作家としての道に進んだ。1960年代末に制作を始め、1970年代以降のビデオ作品では、テレビのメロドラマの語法を取り入れながら、家庭における母と子や夫婦の関係、女性の社会的役割、あるいは表現者として女性が生きる際の社会的摩擦といったテーマを独自の視点から描き出してきた。
出光真子 《おんなのさくひん》1973年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu ※ビデオ作品
同館は、2016~2017年度に出光のフィルムとビデオの全作品、および主要なインスタレーション作品を収蔵した。今回は、収蔵後初公開となる作品を含めた所蔵作品全43点を、展覧会と上映会を組み合わせて一挙に公開する。フィルム時代からビデオアートの黎明期を経て、物語性や演出の魅力に富んだ独自の映像世界に至るまで、出光の表現の変化と広がりを体系的にたどる試みとなっている。
出光真子 《Still Life》1993–2000年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu 撮影:阿久井長則 ※インスタレーション作品
同展には、出光がこれまで取り組んできた8点のインスタレーションのうち、館蔵の3点に加え、作家蔵の2点の展示も決まっている。また、館の1階ホール(定員190名)では、映像作品40点が9つのプログラムで上映され、一部の作品についてはニュープリントによる16mmフィルムの上映も予定されている。
《Inner Man》 1972年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu ※オリジナルはフィルム作品
娘、妻、母という社会的な役割とアーティストとしての自己との間で葛藤を抱えつつ、自身の経験とフェミニズムの視点をベースに制作を続けてきた出光の作品は、発表から30年以上を経た現在も、女性を取り巻く性や社会のあり方を見つめ直すきっかけを与えてくれるに違いない。
なお、同展では、映像作品の鑑賞環境への配慮として、リピート割引・上映割引が設けられている。上映スケジュールも含め、詳細は館の公式サイトで確認してほしい。
<開催情報>
『出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝』
会期:2026年6月18日(木)~ 9月21日(月・祝)
時間:10:00~18:00(※木・金は~20:00、ただし8月6日(木)~28日(金)の木・金は~21:00)、入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜(※月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
料金: 一般 700円、学生560円、高校生・65歳以上 350円
公式サイト:
https://topmuseum.jp/

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