
大阪府警は6月16日、食中毒事故を起こして営業停止命令を受けていた期間中にヤミで弁当を売っていたとして、食品衛生法違反容疑で大阪府河内長野市の「日本料理 喜一」の経営者や女将ら3人を逮捕した。このヤミ販売弁当でも食中毒が起きていた。
2日間の営業停止期間にも弁当を販売
府警が逮捕したのは「喜一」の代表取締役・北野博一容疑者(69)と長男の店長、博稔容疑者(41)、博一容疑者の妻で女将の経子容疑者(68)の3人。2月15日に富田林保健所から同16日まで2日間の営業停止命令を受けたのに、この期間中にも仕出し弁当11食を販売していた疑いがもたれている。
同店の食中毒事故と処分について富田林保健所はこう説明する。
「2月8日に店で食事をとった客の便からノロウイルスが検出されたと、同月10日に医師から連絡を受けました。これに基づいて厨房の検査や食事をした人の検便などを行ない、2月15日までに33人の患者がいることを確認しました。
そのため衛生管理の徹底を指導し、同日から2日間の営業停止処分を出し公表しました。その発表を見た人からも連絡が相次ぎ、結局2月8日から15日ごろまでの患者は43人に増えました」(同保健所担当者)
ところが営業停止中の2日間にも喜一は弁当を売っていたというのだ。その事実もまた、食中毒事故の発生で発覚した。
「処分が明けた後、2月26日になって、喜一で食事をしたお客さんが直接保健所に『体調不良になった』と申告してこられました。そこでまた店に立ち入り調査をしたところ、2月22~24日の間に食事をしたり弁当を食べたりした計23人の患者を確認しました。これにより3月2日には、前回とちがい“営業禁止”処分を出しました。
営業禁止というのは、営業を認めない期間を設けずに、衛生状態が改善されたことを確認すれば解除する、という措置です。今回は施設(喜一)で調理器具の洗浄や消毒に加え従事者の衛生教育などを行なって同店の改善策に関する報告書を保健所が作成し、これに事業者(店)が対応するということで3月18日に解除しています」(同担当者)
「注文を断れなかった」営業禁止後も販売
解除後に店が営業を再開したかどうかは保健所は「確認していない」としている。ただこの営業禁止処分に絡む一連の調査の中で、営業停止期間中にも“ヤミ営業”が行なわれていたことがわかった。そしてさらに問題なのが、その時売られた弁当にもノロウイルスが入っていたことだ。
「仕出し弁当が11人に販売されていたのですが、そのうち9人から、他の事例と同じく下痢や嘔吐の症状が出ており、患者と認定しています」(同担当者)
結局店は2月8~14日の間に計43人、2月15~16日の間に9人、衛生教育を受けたあとの2月22~24日の間にも23人と、連続して食中毒を出し続けたことになる。
「営業停止期間中の“ヤミ営業”について富田林保健所は5月28日に食品衛生法違反容疑で府警に告発しており、府警は補充捜査を経て6月16日に3人を逮捕しました。調べに対し博一容疑者は『注文を断れなかった』などと供述しています」(府警担当記者)
同店はSNSで、
「大阪河内長野にて創業33年の歴史を持つ日本料理店、喜一。
季節の食材をふんだんに用いた懐石料理やイベント、法事などの仕出し料理など。
お料理に合わせて、ワイン・ソムリエが厳選したワインを。リーズナブルなものから高級ワインまで多数取り揃えております。」
とPR。上品な日本料理の写真が並んでいる。
営業停止期間中の“ヤミ営業”に対し、別の地域の保健所関係者は驚きを口にした。
「かなり図々しいですね。営業停止期間なんてふつうせいぜい数日なので“静かに”しているもんです。(人にたとえるなら)“執行猶予中”に同じことをやっていたようなものですから。
ノロウイルスは急性胃腸炎を起こすウイルスで、人の手などを介して二次感染します。そのため、手指や調理器具の洗浄や消毒が重要です。管理が悪いとすぐにこうした食中毒につながるので注意が必要です。今回、続けて起きたということは衛生状態の改善が徹底されなかったということに尽きますが、店の関係者がずっとウイルスを持ち続けていたことも考えられます。ミシュランの星がついていてもいい加減なもんだなとびっくりします」(他地域の保健所関係者)
料理界で誇れる看板を背負っていても、人の健康に直結する問題だけに、築き上げた信用も一瞬で瓦解する。高温多湿の梅雨の時期、食品の衛生管理には細心の注意が求められる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班